ヒガシ東京神社めぐり Vol.3 ―牛嶋神社

隅田川にかかる言問橋のすぐそばに、立派な神社があるのをご存知ですか？

その名は牛嶋神社（うしじまじんじゃ）。古くは墨田区向島・長命寺の近くにありましたが、関東大震災後に隅田公園の設計の都合上、昭和の初めになって現在の場所に再建されました。

牛嶋神社の昔話

建立されたのは860年（貞観２年）。僧侶の慈覚大師（じかくたいし）が須佐之男命（すさのおのみこと）の権現である老翁に会った際、「我がために一宇（いちう）の社を建立せよ。若し国土に騒乱あらば、首に牛頭を戴き、悪魔降伏の形相を現わし天下安全の守護たらん」とのお告げをうけ、建立されたと伝わります。そのため、かつては牛御前社（うしごぜんしゃ）と呼ばれたのだとか。

その後、天之穂日命（あめのほひのみこと）。そして、清和天皇の第七皇子の貞辰親王命（さだときしんのうのみこと）を合わせてお祀りしています。

境内のあちこちにある貴重な見どころ

立派な社殿は東京大空襲を免れた、ヒガシ東京屈指の総桧権現造り（そうひのきごんげんづくり）。細かな造作は一見の価値あり！

（写真：桧（ひのき）の美しさをそのままに活かした社殿）

江戸時代初期には境内に“撫牛（なでうし）”の石像が祀られ、信仰を集めるようになります。撫牛は自分の身体の痛いところと同じところをさすれば治るといわれています。また、よだれ掛けを奉納し、それを生まれた子供に掛けると健康に育つそう。

（写真：赤い前掛けをした撫牛。多くの人にさすられ続け、つやつやしています）

牛といえば、神社では珍しい左右一対の牛の石像もあります。つまり、狛犬ならぬ“狛牛”というわけ！こちらは安政6年（1859年）に奉納されたと石に刻まれています。

（写真：石工の名前は“角次郎”さん。どこまでも牛に縁のある神社です）

もちろん狛牛だけではありません。境内にはたくさんの狛犬（こまいぬ）も置かれているのですが、中には墨田区で最も古いものも。1729年（享保14年）に奉納されたもので、大人の女性ほどの背丈です。

（写真：社殿両脇にある、墨田区で最も古い狛犬）

さらに12年に1度の丑の年には、焼き物の牛のお守りが作られ多くの参拝客が買い求めます。これらは12年ごとに形を変え、その時代ごとに親しまれています。
（写真：社務所で授けられる〈干支みくじ（300円）〉の丑年は、12年に1度作られる牛のお守りを模したもの）

9月の例祭

牛嶋神社のお祭りは、毎年9月の敬老の日の近くの土日に行われます。2012年は5年に一度の例大祭の年で、鳳凰（ほうおう）を飾った神輿の鳳輦（ほうれん）を牛が曳き、盛大に行われました。例大祭では氏子（うじこ）五十余町の町会を安泰祈願巡行する神幸祭が行われ、各町会から総勢50基もの神輿が３カ所に分かれて集まり、牛嶋神社へ向かって渡御（とぎょう）します。町旗、お囃子、手古舞、御神輿と町会ごとに趣向も異なり、三ツ目通りや浅草通りが御神輿で埋め尽くされる連合渡御はとても華やかです。締めくくりは牛嶋神社への宮入（みやいり）。社殿の前で差し上げを行うなど最高潮を迎えます。

次回の例大祭は2017年ですが、今年も各町会ごとに例祭が開催されます。日程は、9月の14日（土）15日（日）。50町会もの氏子が参加する賑やかな2日間。ぜひ訪れてみてください！

■例祭予定
9月14日(土)～15日(日)　祭礼神賑
9月15日(日)　敬老祭　10:00から
　　　　　　式典　　14:00から
　　　　　　若宮近隣町　大神輿連合宮入り　16:00から（場所：本所2丁目摂社）
※そのほか、期間中各町で神輿の渡御・祭礼おどりが予定されています。