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2013.11.18 (Mon)

ピーンとはりつめた緊迫感!早送りを見るようなスピード感!職人の現場がそこにありました。 - 抜き型のプロフェッショナル集団「東京刃型」

私達の日常生活にはきれいな切り口で全く同じ形のものがたくさんあります。
例えば、お財布、ベルト、革靴の底、鞄についてる革のロゴ、ジグソーパズル、おかしの箱、自動車ゴムパッキン部品など。
何がこれを可能にしているか知っていますか? それは”抜き型(または刃型)”の存在です。

抜き型(または刃型)とは、鋭利な刃がついたテープ状の鋼材(はがね)を切りたい形通りに巧みに曲げて成形されたものです。そして、
1.一瞬できれいに切り抜ける
2.同じ物が短時間に大量生産できる
ことを目的としています。

下の写真のように材料の上に抜き型をおいて、裁断用プレス機で圧力をかけて切り抜きます。

東京刃型 代表取締役 関根正臣さんが抜き型のデモンストレーション。左から;抜き型を革に置く→その上にプレス機で圧力をかける→抜き型から革を抜き取る
東京刃型 代表取締役 関根正臣さんが抜き型のデモンストレーション。左から:抜き型を革に置く→その上にプレス機で圧力をかける→抜き型から革を抜き取る。

抜き型で革が抜かれた結果
抜き型で革が抜かれた結果。

刃型製作現場の緊迫感とスピード感

浅草 吉野通りの「東京刃型」の前を通ると”ギューンギューン ピシピシピシ キーーーン”という金属音がビルの2階から聞こえてきます。
この2階の工場で職人さん達が、まるで動画を早送りしているようなものすごいスピードで抜き型を製作しています。

写真左:各種スエーデン鋼のロールが並ぶ。 写真右:この機械は刃型の型紙を乗せると自動的にその周りの長さを割り出し(ピンクの型紙が乗っている)、その長さに刃を切ってくれる。
写真左:各種スエーデン鋼(元から刃が付いている鋼材)のロールが並ぶ。
写真右:この機械は刃型の型紙(写真では計算機の下のピンクの型紙)を乗せると自動的にその周りの長さを割り出し、その長さにスエーデン鋼を切ってくれる。

代表取締役 関根正臣さんと一緒にカメラを持って工場に入っても、誰も脇目もふらずにその機敏な作業を続けます。一瞬でその緊迫感が伝わってきました。

機敏な作業で鋭い刃の付いた鋼材を火で温めながら素早く型紙に合わせて正確に曲げていく職人さん。 ものすごい集中力。 難しいのは鋼材の性質上、一筆書きで曲げられないこと。どこをいつ曲げるかは熟練職人さんでないとわからないそう。
機敏な作業で鋭い刃の付いた鋼材を火で熱しながら素早く型紙に合わせて正確に曲げていく職人さん。ものすごい集中力。難しいのは鋼材の性質上、一筆書きで曲げられないこと。どこをいつ曲げるかは熟練職人さんでないとわからないそう。

どの職人さん(30-60才代)も手元の作業・足の移動がものすごく早いので、写真も連写で撮って、もう何がどう撮れてるか気にしてる時間が全くありません。

写真左:型紙通りに曲げられた鋼材をささえる金属を切って正確な長さに切って溶接できるように準備。 写真左:溶接作業
写真左:型紙通りに曲げられた鋼材を支える金属バーを正確な長さに切って、溶接できるように準備。
写真右:溶接作業。

工場を出てから関根さんに”皆さんとても忙しそうですが、納期が迫ってるんですか?”と聞くと、”いえ、集中しないと危ないんです。”とのこと。
なるほど、刃物を扱っているのですから、当たり前ですね。

浅草靴産業と共に歩んできた東京刃型

「東京刃型」は昭和30年から靴底材製作を中心に浅草の靴産業と共に歩んできました。

初期は鋼材(はがね)を加熱しながら鍛え上げ、日本刀を造るがごとく完成させる「火造り抜き型」という手法だったので、刃型の制作費はとても高額でした。
その後昭和40年頃、スウェーデンのサンドビック社により開発・製品化された「スウェーデン鋼(こう)抜き型」という、あらかじめ刃が付いている鋼材を使用しはじめ、製作時間・制作費が圧倒的に節約され、現在に至ります。
”刃”は切る材料によって変わってくるので、「東京刃型」ではオーストリア産の高品質スウェーデン鋼を50種類位扱っています。

写真左:左から「東京刃型」初代社長であり現在会長の関根和夫さん・二代目関根正臣さん 写真右:浅草 吉野通りの看板
写真左:左から「東京刃型」初代社長・現在会長 関根和夫さん、親切に案内して頂いた二代目社長 関根正臣さん。
写真右:浅草 吉野通りの看板。

厚く硬い靴底材を”ピタッと型紙通りに、しかも2足一度に抜ける特級品質刃型”を製作できるのは、実は日本、いや世界で「東京刃型」を含め、6箇所のみ。
海外では靴底材は大きめに切った後に削って型に合わせる方法をとっていて、日本のピタッと型紙通りに抜ける刃型というのはとても高い技術なのです。
もともとは海外から入ってきた製靴技術を、さらに効率化・高品質化させてしまうのは日本ならでは。

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刃型はいろいろなデザインが可能。

もし”クリスマス用にデザインした紙製の箱を抜き型でたくさん作ってみようか”とか”革のロゴを抜き型で作りたい!”などのアイデアが浮かんだ方、「東京刃型」では1つの注文でも大丈夫です。
料金は刃の種類と型紙の周りの長さ(1cm何円の計算)で決まります。納期は早いと1日です。また、テスト・サンプル裁断も同社でできます。

時代と共に靴材の他、様々な材質(革・紙・布・ゴムなど)の刃型を製作してきた「東京刃型」には、きっと貴方が作りたいものに合った刃があります。

この記事を書いた人/提供メディア

Kumiko

独自性研究員。 独自のアイデアで、”考える”機会を与えてくれるものに惹かれます。 また、時間の動きに興味があり、今流行っているものよりも、その先: 時間を先に引っぱっている事や人、または、それ以前: 時間が刻まれた物をいつも探しています。東東京にはこれらの要素がいっぱいで飽きることがありません。

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