2013.11.21 (Thu)
奥浅草の“怪しさ”と“美味さ”が癖になるタイ料理店 ー「ソンポーン」@浅草
浅草寺から通称・奥浅草と言われる地域を歩いて約10分、吉原にほど近い場所にある、ネオンがまぶしい小さなお店が、タイ料理店の「ソンポーン」です。
(写真:飲食店には向いていなさそうな住宅街にたたずむ、タイ料理店「ソンポーン」)
浅草屈指の人気店は連日満席!
静かな住宅街の片隅にあるお店ですが、なんと連日満席の状態! カウンター5席の小さな店内はたちまち人で溢れてしまい、カウンター脇での立ち呑みはあたりまえの光景です。
お客さんも日本人とタイ人が半々くらいと、「ここはタイの屋台?」と錯覚してしまいそう。“一見さんお断り”ではないけれど、独特の雰囲気だけに初めての人は躊躇してしまうかも。でも一度慣れてしまえば、このディープさが癖になってしまう人が続出しているのです。
わずか4畳半ほどの小さな店を切り盛りするのは、タイ東北部・コラート出身のソンポーンさん。日本に来日したのは十数年前のこと。浅草のクラブで働いていたときに、いまのご主人と出会い結婚。お店を辞めて、2008年に現在のタイ居酒屋「ソンポーン」を開店したのだそうです。
「日本でイサーンの本格家庭料理が食べられる、料理中心のお店を作りたかったの」とソンポーン・ママ。実は東京の中でも浅草、上野はタイ人が多く住んでいるエリア。そのため、ソンポーンにはたくさんのタイ人が、故郷の懐かしい味を求めて訪れるのです。
(写真:タイらしいにぎやかなインテリア。タイ語のカラオケも歌えます)
東京でタイ料理店を開くなら“ソンポーン”に習え
タイで母親が営む惣菜屋台を、小さい頃から手伝っていたというママの料理の腕前は、東京に住むタイ通の間でも評判に。それを裏付けるように、これから東京でタイ料理を開店したいというタイ人が、ママに料理を習いに来ることもしばしば。
「北のチェンマイ料理も東北のイサーン料理も、味付けや材料が違うの。私はどちらにも近いコラート出身だから、どっちの料理も作れる。だからみんな私に聞きに来るの」
(写真:グラドゥムーヤーン/豚スペアリブのあぶり焼き。甘辛いソースを付けても〇)
タイ料理と一言で言っても、地方によって使う食材も辛さは異なります。例えばおなじみの「トムヤムクン」は、海に面して魚介類が豊富なバンコクの定番料理。海に面していないイサーン、チェンマイなどでは、保存がきく食材や川魚、肉類を使った料理が中心になります。チェンマイはマイルドな味で、イサーンはタイ料理の中でも激辛なのが特徴です。
(写真: ヤムネーム/タイ風ソーセージのサラダ。酸味が効いていて、豚肉の皮のコリっとした独特の触感が楽しい)
やめられないとまらない辛さにゾッコン!
ソンポーンでは現地の辛さを基準にしているので、辛さは覚悟しておきましょう。でも、ただ辛いだけでなく、力強さと旨み、繊細さが調和した、ハイレベルの味に納得するはずです。
ただし、ママが深夜になって、お酒を飲みながら料理をはじめると、その辛さは倍増! すかさずタイのもち米・カウニャウと交互に食べ進めていくのがオススメですよ。
(写真: カオクラパオカイダオ/鶏ひき肉のガパオ。メニューにはないけれど海鮮に変更してくれることも)
(写真:トムカーガイ/鶏肉とココナツミルクのスープ。ボリュームタップなので2人以上でシェアするのがオススメ)
でも、ソンポーンに訪れる人たちのお目当ては、タイ料理だけじゃありません。ママは小柄で笑顔のかわいらしい、でも怒るときはビシッと叱ってくれる、(私をはじめ)常連さんにとっては“お姉ちゃん”みたいな存在。ママの人柄に魅かれてこの店に来るうちに、国籍に関係なくお客さん同士が仲良くなって、席を譲りあったり、ときにはみんなで出かけたりすることも。こうした人付き合いのよさもヒガシ東京ならではなんですよね、きっと。
(写真:ママのソンポーン佐久間さん。日本語が上手なので「辛いのが苦手」など相談できちゃいます)
日本流にアレンジすることなく、あくまで現地スタイルを徹底している潔さも、ソンポーンの魅力なんですね。でも、奥浅草に来ればママの料理がずっと食べられる・・・わけではありません。ママにはタイに残した18歳になるお子さんがいて、2年後にはご主人と一緒にタイに戻り、家族で暮らすことを決めているんだそうです。
「だから帰るまでにたくさんの人に本場のイサーン料理を食べて欲しいんです」とママ。小さなキッチンスペースで次から次へと作られる、ガツンと記憶に残る魅惑的な料理を、ぜひ一度味わってみてください。