2013.12.19 (Thu)
【台東スタディーズ2・ファイナル 取材レポートVol.1】谷中ベビマム安心ネット・矢嶋桃子さん
2013年11月30日(土)、入谷のシェアアトリエ「reboot(リブート)」で開催されたイベント「台東スタディーズ2・ファイナル」。
当日は、台東区でユニークな活動を行っている6名の方によるトークショーと「表現(Hyogen)」による音楽ライブが行われ、ディナータイムには週末限定カレーユニット「東京マサラボーイズ」のカレーがふるまわれるなど、日常にピリッと刺激を与えてくれるようなイベントになりました。
LwP magazineでは、イベント当日に取材したトークショーの内容を、順次レポートしていきます!
谷中で活躍する2児の「お母さん」
昭和の町並みや建造物が残る、谷中・千駄木・根津。通称「谷根千」と呼ばれるこのエリアで、今、若いアーティストやクリエイターが次々とユニークな活動を始めています。
今回ご紹介するのは、そんな“アツい”エリア・台東区谷中で、乳幼児を持つファミリーのための地域密着型、子育て・生活情報サイト「谷中ベビマム安心ネット」を運営する、矢嶋桃子さん。ショートカットの黒髪と、その下でゆれる大ぶりのイヤリングがとてもお洒落で、エネルギッシュな印象を受けました。矢嶋さんは、3歳の男の子と10ヶ月の女の子のお母さん。今回のイベントには、ご家族4人で参加されていました。
新しい人もすんなり参加できる環境づくり
「谷中ベビマム安心ネット」では、病気・医療や防災・防犯など、子育て支援に関する情報を発信しているほか、さまざまなイベントを開催しています。トークショーでは、各イベントの内容を具体的にお話ししていただきました。
開催イベントの1つ、築57年の木造アパートをリノベーションした施設「HAGISO」にて毎月開催している「やなかこども文庫」は、子どものための図書室。矢嶋さんが知り合いの方に声をかけて本を寄附してもらった結果、現在では300冊以上の本が揃い、貸し出しも行っているそうです。
「単に図書室を開設しただけでは来てくれる人が限られてしまうため、読み聞かせの会や、パフォーマンスと一緒に絵本を読む会などイベント性を高める工夫もしています。」
また、プロのカメラマンに写真を撮ってもらう「家族写真撮影会」なども開催しています。撮影会場は、“地域のすてきな場所”を選ぶようにしているのだとか。過去には、明治初期のレンガ造建築である東京藝術大学の赤レンガ1号館など、普段入れないような場所で撮影したこともあるそうです。
ほかにも、小さな子どもがいる家庭ならではの「安全・防災イベント」や、“大人が楽しめる”をコンセプトにした「ライブイベント」、子どもとふれあう時間の質を高めるための「わらべうた・絵本うた」を知るイベントなど、多様なイベントを企画・実施しています。
イベントを開催するにあたって、矢嶋さんは、「初めての人でも参加しやすいこと、パパも参加しやすいこと、テーマを設けることによって参加しやすい状況を作ること」を大切にしているそうです。また、「ママサークルや仲良しグループ」にならないように気をつけているとも仰っていました。地域の活動には、新しい人でも気軽に参加できる雰囲気が必要なんですね。
ベビマム立ち上げのきっかけは、東日本大震災
矢嶋さんが「谷中ベビマム安心ネット」を立ち上げたのは、東日本大震災での経験がきっかけでした。
「震災時にいちばん驚いたのは、買い占め騒動でした。小さな子どもを抱える母親にとって、水やおむつがないというのは厳しい状態です。放射能の危険性などが頻繁報じられていた時は、外出を控えるお母さんも多かったんですが、小さなこどもと密室に2人きりで居ると、とてつもないストレスがかかるんですね。そんな経験から、自分たちで助け合いのできる安心・安全のためのネットワークがあればと思ったんです。」
「谷中ベビマム安心ネット」の目的は、安心・安全な自助・共助のネットワークづくり。
1)災害時のセーフネット
2)子育てで孤立させないこと
を2大柱に活動を展開しています。
メーリングリストには、子どものいない方も登録をしているそう。“子育て世代”と特別に括るのではなく、地域ごとゆるやかにつながることができるのが理想かもしれません。
矢嶋さんのトーク中、会場を見ると、これから子育て世代となる若い女性たちの真剣な表情が目に入りました。
「今の子育て世代は、他人に頼るのが下手と言われています。子育てを通して、差し伸べられる手をつかむ勇気を持ってほしいですね。」
トークの終わりに矢嶋さんが発した言葉を、若い女性の方たちはどのように受け止めたでしょうか。