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2014.01.30 (Thu)

「音楽の箱舟」に乗って旅をしよう。ー東京藝大出身の4ピースバンド・表現(Hyogen)インタビュー

2013年11月末、「台東区でユニークな活動をしている様々な分野の人を集めて横につながること」をテーマに開催された、「台東スタディーズ2・ファイナル」。イベント主催者の今村さんのお話によると、トークの合間に演奏をしてくれるバンドやアーティストを探していたところ、谷中・HAGISO代表の宮崎晃吉さんから、「ヒガシ東京で活動しているバンドなら表現(Hyogen)がいいですよ!」と強力な推薦があったそうです。

「表現(Hyogen)」は、日暮里のギャラリー「HIGURE 17-15 cas」で展示イベントを行ったり、千駄木の光源寺で音楽教室「音のてらこや」を開いたりするなど、ヒガシ東京で精力的に活動しているオルタナティブ・フォークバンド。イベント当日、初めて聴いた演奏と歌声に一目ボレならぬ一耳ボレし、演奏後に半ば興奮状態で取材のお願いをしたところ、快く受けてくださいました。

エキゾチックな響きが誘う未知の国

「表現(Hyogen)」のバンド編成は、ちょっとユニーク。アコーディオン+ヴァイオリン+ギター+コントラバスの音の重なりは、エキゾチックで、どこか知らない国を旅しているような気分になります。

2005年に東京藝術大学で結成された当初は、ドラムス+エレキベース+エレキギター+ヴォーカルというシンプルな編成でしたが、ドラムスのメンバーが抜けて、アコーディオンの権頭真由さんが加入してから、アコースティックなアレンジを取り入れるようになったそうです。

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ハレの日のような、非日常感あふれる彼らの音楽の秘密を知りたい!
ここから先は、メンバー4人のインタビューをたっぷりお届けします。

表現(Hyogen)バンド紹介&メンバー紹介

表現(Hyogen)
2005年東京藝術大学に発足。即興演奏を下敷きとした作曲を特色とし、「未知の故郷が見える」と賞される音楽性でライヴハウス、ホールはもとより美術館、ギャラリー、寺社、教会、古民家、古書店、野外など多彩なスペースで演奏を行う。 人や空間と共鳴しながら音を紡ぐ力に定評があり、ダンス、建築、詩、写真、映像、花、演劇等とのコラボレーションも多い。 現在音楽の土壌、歌われる物語の舞台として架空/実在の島を描く『琥珀の島』を、美術、舞台芸術などの領域を含めたプロジェクトとして推進。(公式WEBサイトより転載)

権頭真由(アコーディオン/声)
佐藤公哉(ヴァイオリン/声)
古川麦(ギター/声)
園田空也(コントラバス/声)

谷中にあるカフェの屋根裏部屋での練習風景。いまにも物語が生まれそう。
谷中にあるカフェの屋根裏部屋での練習風景。いまにも物語が生まれそう。

メンバー全員インタビュー

ーーーバンド名の由来をお聞かせください。

園田空也(以下、園田):由来は特にありません。バンド名を考えていた頃、(古川)麦の実家にいた時にふと思いつきました。

佐藤公哉(以下、佐藤):「表現(Hyogen)」のほかに案がなかったので、すんなり決まった覚えがあります。

ーーー曲作りはどのように行われるのでしょうか。

権頭真由(以下、権頭):イベントで使用する音楽を依頼されるなど、必要に迫られて曲作りをすることもありますが、普段は、4人それぞれがその日にあったことを抱えて集まって、楽器を弾いて、音を楽しみながら作るというのが基本ですね。セッションをしながら曲を組み立てていくことが多いです。何気なく弾いたフレーズがきっかけとなり曲ができることもあります。

佐藤:以前、「結婚披露パーティーで演奏してほしい」という依頼をいただいたことがありまして、それをきっかけに1曲完成したこともありました。

権頭:台東デザイナーズビレッジが入っている旧小島小学校で、私が2週間ほど企画イベントの枠をいただいた時に、円形舞台を作りました。毎日色々な人を呼んでイベントを開催しまして、「表現(Hyogen)」にも2〜3回出演してもらったんです。その時のイメージから、『螺旋舞曲』という曲が生まれました。

acc&voの権頭真由さん。メンバーからの印象は、「人あたりがいいのか悪いのかわからない。初対面の人にも親しく接するので、すごいなと思います。」(園田さん)
acc&voの権頭真由さん。
メンバーからの印象は、「人あたりがいいのか悪いのかわからない(笑)。初対面の人への接し方が親密で、すごいなと思います。」(園田さん)

ーーー新しいアルバム『琥珀の島』についてお聞かせください。

権頭:『琥珀の島』というアルバムは、すべてが琥珀の島に集約されるというか……。そのつもりで1曲1曲を作っていたわけではないのですが、「琥珀の島」というコンセプトで括った時に、全景が見えた気がしました。

佐藤:コンセプトは後付けですが、いい形でまとまりました。

ーーー『琥珀の島』は、美術や舞台芸術などの領域を含めたプロジェクトということですが。

佐藤:2013年の2月末、日暮里のギャラリー「HIGURE 17-15 cas」で展示を開きました。園田くんが陶芸作品を作ったり、僕が花を生けたり絵を描いたり、真由ちゃんが小物を作ったり、麦が鉛筆画を描いたり、焼けたギターを吊るしたり (笑)。ギャラリーの1階では、僕らとずっと旅をしてきた写真家の鈴木竜一朗さんの作品展示を行いました。それから、瀬戸内の島(粟島)に行って撮影や録音をしたり、瀬戸内芸術祭に合わせて島々を巡ったりもしましたね。ツアー自体も『琥珀の島』のプロジェクトのひとつという感じでしょうか。

vn&voの佐藤公哉さん。メンバーからの印象は、「魔法を使える人。最終的な判断は彼のステッキのひとふりで決まるんです。」(権頭さん)
vn&voの佐藤公哉さん。
メンバーからの印象は、「魔法を使える人。最終的な判断は彼のステッキのひとふりで決まるんです。」(権頭さん)

ーーー他分野とのコラボレーションも積極的に行われていますね。

佐藤:ダンスや写真、建築など、どのコラボレーションも面白かったです。舞台芸術集団「地下空港」の音楽劇、『巨人たちの国々』に参加した時は、徹夜することもあったので大変でしたね。

権頭:『巨人たちの国々』では、脚本家の方が書いたセリフを歌わないといけないなど、いつもの演奏とは異なる制約がありました。「表現(Hyogen)」にとって新たな試みが多かったので苦労しましたね。また、詩人の白石かずこさんとも2回共演しています。白石さんは、舞台がまるで生活の場であるかのように、舞台に上がる気負いを感じさせない方です。ご自身の詩を朗読されるんですが、存在感に圧倒されることがありますね。

園田:白石さんと共演すると、「表現(Hyogen)」だけでは作り出せないエネルギーを感じます。

権頭:コラボレーションでも、普通のライブ演奏でも、「表現(Hyogen)」の音楽を聴いた方が、想像を働かせてくれたり、物語をつむいでくれたりするのが面白いです。それらの物語を聞くと、「ああ、そうかもしれない」と思うことがありますね。色々な想いが反映されて、曲が育っていくように感じます。

cb&voの園田空也さん。メンバーからの印象は、「メンバーの中で一番、世界はなんて素晴らしいんだろう!と思っている人(笑)」(権頭さん)
cb&voの園田空也さん。
メンバーからの印象は、「メンバーの中で一番、世界はなんて素晴らしいんだろう!と思っている人(笑)」(権頭さん)

ーーー他には、どのような活動をされていますか。

佐藤:最近は、「今まであったものが失くなること」に関わるイベントに参加することが多いですね。2013年は、隅田川沿いに点在する、現代美術家の川俣正さんの作品(注:2010年にスタートしたプロジェクト「東京インプログレス」において、東京の水辺を定点観測する拠点として、隅田川沿いに3つの物見台が作られた)を巡るプロジェクトに参加しました。解体前にたくさんの人に作品を見てもらうためのバスツアーに同行して野外で演奏し、クロージングイベントでも演奏をしました。2014年は、北九州の小倉にある商店街のアーケードの撤去前に開催されるアートイベントに参加が決まっています(注:1981年に設置された小倉・魚町の「サンロード商店街」にて、1月25日・26日の2日間、市民参加型アートイベント「ファンタスティック・アーケード・プロジェクト」が開催された)。僕らは、「音楽の箱舟」という言葉を謳い文句にしていますが、何かが失くなる前に行われるプロジェクトというのは、「象が流されてしまう前につがいを方舟に積む」ようなものなのかもしれません。小倉の商店街のアーケードも、撤去に反対している人たちがいたり、リノベーションしたいという人がいたりします。様々な人の想いを、音楽で抽象的に昇華させることが求められているのかもしれませんね。

gt&voの古川麦さん。メンバーからの印象は、「お茶目で優しい人!」(権頭さん)「親類に文化人が多く、話が面白いです」(佐藤さん)
gt&voの古川麦さん。
メンバーからの印象は、「お茶目で優しい人!」(権頭さん)「親類に文化人が多く、話が面白いです」(佐藤さん)

ーーー今後、活動していく上での希望や展望をお聞かせください。

園田:ヨーロッパでの演奏を勧められることが多いです。ロンドンで演奏したことがありますが、機会があれば他の国でも演奏してみたいですね。

古川麦(以下、古川):以前、アラブ系の国のモスクの中で演奏する夢を見たことがあります。(モスクの中での演奏は)、すごく美しいだろうなと思いますね。それから、移動遊園地のようなお祭りやイベントで演奏したら面白いと思います。

権頭:「音楽の箱舟」という謳い文句で、『琥珀の島』というアルバムを出したので、船を一艘いただいて、世界中を周ったらいいと思います(笑)。私たちの円周上に素晴らしい人たちがたくさんいますし、機会を求めている人もたくさんいると思うので、その人たちの気持ちをすべてハレに持っていくような活動ができればいいですね。「じゃあ、来年やろう!」と言って、すぐにできることではないので、円周を広げていくにはまだまだ時間がかかりますけれども。

古川:制作費などの現実的な問題をクリアするには、プロジェクトの全景をきちんと描くことが大事ですね。

ーーーどうもありがとうございました。

谷中のカフェ「ペチコートレーン」にてインタビュー
谷中のカフェ「ペチコートレーン」にてインタビュー

(写真撮影:hal)

この記事を書いた人/提供メディア

Yui Sato

東東京のニュースタイルカルチャー研究員。下町の伝統と今風の文化をミックスした作品・商品や、それらを作り出す人々に強く惹かれます。
初めての1人暮らしの地・森下に住み始めて4年。東東京は、深く関わるほど味わい深く、愛着を感じるエリアだと実感する日々を送っています。ふだん書いているのは、ミニシアター系映画の紹介など。夢は、ミニシアターのない東東京で、定期的に映画の上映会を開催すること!

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