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2014.05.06 (Tue)

相手の仕事を重んじて協働する形。かざり工房しおざわ|ヒガシ東京で働くVol.7

「錺」という漢字を知っていますか?「かざり」と読み、金属に細工をした物の事を指します。御神輿や神社で見ることのできる金色の金具の部分と言えば、イメージできますよね。今回は、そんな錺金具を作る職人の話を伺ってきました。

インタビューにご協力頂いたのは、墨田区石原エリアに工房を構える「有限会社 塩澤製作所(かざり工房しおざわ)」の塩澤政子さん(冒頭の写真)。塩澤さんは、「第6回東京の伝統的工芸品チャレンジ大賞 都知事賞」を受賞する等、知る人ぞ知るその道のプロです。デザイナーとのコラボレーションにも取り組まれており、職人単独の仕事だけでなく恊働についても話してくださいました。

ぼく自身、外部パートナーと協力しあって仕事をする事が多いので、コラボレーションする上で相手を気遣うポイントを学んだインタビューになりました。

錺職人の仕事

かざり工房しおざわは、神社の金物をはじめ、金属に模様を付けて型紙にあわせかたちづくりをし、納品するまでを行っています。受注生産がメインで、オーダーに応じて一点ものを作る会社です。

「平らな金属板に、たがねを打ち付けて模様を付けます。たがねを打った所は波打つから、木槌を使って、傷を付けないように叩き、整えます」

たがねとは、金属に打ち付ける模様や模様を作るための形が先端部に整形されている、金属の棒。塩澤さんの父に当たる先代から引き継いだたがねを駆使し、オーダー通りの模様を作ります。工房には、1500本以上ものたがねがあるのだとか。

「父が独立する時に、勤め先の親方から譲り受けたたがねもあります。たがねはうちの財産です」

金属にたがねを打ち付ける際は、金床の上に金属板を乗せる(写真参照)。金床の設置面は狭いけれど、金属に鏨を打つのは一度ずつ打つ作業なのでどんな大きなものも可能だそうです。

写真:たがねで模様を打ち付ける塩澤さん
たがねで模様を打ち付ける塩澤さん。

「たまに、カーブしている部分に模様を付けてくれと頼まれて、困りますね。平らな部分にしかたがねが打てません。家具の角に付けるための錺金具を作ってほしいと頼まれた時は、別途、木型を送ってもらって、それに合わせて型紙を作り、ロー付けなどの加工をして作る事にしています」

模様を付けた金属板を寸法に合わせて仕上げ、メッキ屋、塗装屋、箔屋などに外注してもらい、納品するまでが錺職人の仕事。

「例えば銀の鈴であったら、見本になる鈴を一つ作って、あとは専門の業者にお任せする事もあります」

一点ものの用途は人それぞれ。自分が使う道具を頼む人や神社の金具を頼む人だけでなく、鈴のようなお土産品を頼まれる事もあるそうです。その際は、見本となる一点を作成し、それを元に、工場で複製してもらう事ができると言っていました。

扱う金属は真鍮(しんちゅう)と銅銀なのは、鉄やステンは硬すぎるため、加工ができないからだとのこと。

デザイナーとのコラボレーション

近年は墨田区のすみだ地域ブランド、ものづくりコラボレーション事業に参加。デザイナーとのコラボレーションを行い、錺を活かした商品作りにも取り組む、かざり工房しおざわ。第6回東京の伝統的工芸品チャレンジ大賞 都知事賞」に輝いたブローチ『花まとい』や「第8回TASKものづくり大賞 優秀賞」に評されたがびょう『錺画鋲』等はその一例です。

写真は錺画鋲
写真は錺画鋲

「(『花まとい』のデザイナー)赤池学先生のデザインはまったく抵抗なく作る事ができました。うちで取り扱っている物を見てからデザインを提案してくれて。(『錺画鋲』のデザイナー)SOL styleさんは『いつか一緒に、何か作りたいですね』と言ってくれていて、きっと、頭のどこかでずっと考えていてくれたんでしょうね」

オーダーやコラボレーションの中には、「作るのが難しい物もあった」と言います。かざり工房しおざわの仕事を理解した上で提案されたデザインと、たがねで表現しづらい、絵に描いた物だけを対象にしてデザインされた物との違いだったようです。

一緒に組んで、物作りをする以上、相手の特徴を受け取る事。独りよがりのコラボレーションにならないようにしなくちゃいけないなと、そう心の中で思いつつ、次の質問に移りました。

ーーーコラボレーションのキッカケは何ですか?

「(すみだ地域ブランド戦略の)のものづくりコラボレーションの日原先生のグループの『soon』でデザイナーさんと組ませていただきました」

ーーーでは、一般のオーダーはどうやって受注するのでしょうか。クチコミですか?

「今はインターネットがあるから、ホームページを見て、直接頼んでくれる人がいます。職人さんはお年寄りが多いけれど、お孫さんが見つけてくれるらしいんですよ。昔は御神輿の錺金具を作っていたんですけど、女性だけの所為か、最近は頼まれなくなりましたね」

職人は男の世界。かざり工房しおざわは、先代が引退後、母、姉(塩澤さん)、妹の3人で続けてきた。母が墨田区登録無形文化財に登録され、職人の世界でも認められてはいるが、見えない敷居はまだ高いようです。

ーーー先代が引退されてから作った物の中で、特に印象に残っている商品があったりしますか?

「両国の江戸東京博物館の近くに、両国湯屋江戸游という銭湯があるんですね。そこの下駄箱の番号札(いろはにほへと等)を作りました。先代が引退してから受けた中で、あれが一番大きな仕事だったかなぁ。両国の江戸游は他にもたくさんの地元すみだの職人の手仕事で作られていて、素敵ですよ。ぜひ一度、見に行ってみてください!」

やっぱり、物作りの話になると元気が出るみたいでした。その日は別件があって足を運ぶ事ができなかったのですが、江戸游までの道のりをハツラツと教えてくれる塩澤さんの姿から、人柄を感じさせてもらいました。適切な表現が見つからないけれど、シンプルに「いい人だなぁ」って。

先代が現役の頃、「猫の手も借りたい」時に錺職人の仕事をスタートした塩澤さんは、途中、母が受け継ぎ、妹と力を合わせて今も、錺金具の制作をしています。ぼくの体験と想像力ではこぼれ落ちてしまうような苦労や失敗もあるのだろうけれど、それでも、作業に集中する塩澤さんの姿を見ていたら、働く事は楽しい事だと思えました。

ぼくも自分の働く姿を見た人が、「働きたい」と思えるような仕事をしていきたいです。塩澤さん、インタビューにご協力頂き、心から御礼申し上げます。有り難うございました。

この記事を書いた人/提供メディア

新井 優佑

インタビュアー/ノンフィクションライター。WEBマガジンやオウンドメディアの運用、寄稿をしています。出版社でスポーツ雑誌編集とモバイルサイト運用を担当したのち、独立しました。2014年は、手仕事からデジタルファブリケーションまで、ものづくりの記事を多く作成しました。1983年東京生まれ。

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