ホーム > コラム > 空き家&空き店舗で暮らす、遊ぶ! Vol.4: 世代や文化を超えた出会いも生まれる長屋カフェ&キッチン!ー「ムームーコーヒー&サテライトキッチン」@京島・曳舟

2014.06.09 (Mon)

空き家&空き店舗で暮らす、遊ぶ! Vol.4: 世代や文化を超えた出会いも生まれる長屋カフェ&キッチン!ー「ムームーコーヒー&サテライトキッチン」@京島・曳舟

東京は曳舟・京島。地元密着の商店が立ち並ぶキラキラ橘商店街から1本路地を入ったところに、今回の舞台、コーヒースタンドの「ムームーコーヒー」と、ハーブを使った料理が楽しめるカフェスタンド「サテライトキッチン」があります。こちらは、10坪にも満たないスペースを自分たちでセルフリノベーションしたシェア店舗です。

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2014年4月にオープン1周年を迎えましたが、満を持してお店を開いたというよりも、この物件に出会えたから“夢”が舞い込んできたという感じのようです。気負いなく、ライフスタイルの延長としてお店経営を楽しんでいる、2人のお店をご紹介します

「場所を借りて1日店長」のつもりが一軒家を借り上げることに

隣同士壁でつながる四軒長屋の一角、オリーブの木が目印の建物が、「ムームーコーヒー」の灰谷歩さんと、「サテライトキッチン」の小畑亮吾さんが運営するシェア店舗です。朝からコーヒーやスコーンなどの焼ける香りに誘われて、ドアを思わず開けてしまう…そんなほっこりとした空間。そもそも2人は音楽仲間なのだといいます。

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「僕がワーキングホリデーでオーストラリアに行っていたときに向こうで知り合った友だちが、『爬虫類館分館』で夜の店長をしていたんです。それで僕らが分館でライブ演奏に行くようになったんです」と灰谷歩さん。

ムームーキッチン&サテライトキッチンは、以前lwp magazineでご紹介した「爬虫類館分館」と同じ商店街にあるお店なのです。

「僕は小さなコーヒー屋をやってみたいと思っていたので、バリスタの学校へ行き、カフェで働いたりしていました。小畑も調理師免許を持っていて、ケータリングサービスは時々していて。でも、実際にお店を出すとなると、資金も含めていろいろ準備が必要ですよね。だからその当時は『いつかは開きたいな』くらいの気持ちでしたね」(灰谷さん)。

そんなとき「爬虫類館分館」で行っている日替わりで店長がお店を出店するスタイルに興味を持ち、「2人でやってみようか!」と話が盛り上がっていた矢先、爬虫類館分館マネージャーの後藤大輝さんから条件のいい物件を紹介してもらったのだそうです。

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「築数十年の長屋なんですが、分館の大輝くんはそもそも『空き家を壊して、アパートや駐車場にするのは街並みに合わないし、もったいない。改装して、若い人たちが面白いことを始められる拠点にしたい』と想いがあって、空き物件の情報を集めているんですよ。ここもその中の一軒でした。この物件の大家さんも、京島界隈を面白くしたいという想いが強くて、初開業でも始めやすく、そして長く続けやすくできるようにと、金銭面やリノベーションなどについてとても良い交渉をしてくださいました。そして僕が大家さんと賃貸契約を結んで、小畑から使用料をもらい2人でシェアすることもOKしてくれたんで、『じゃあやってみよう』ということになりました」(灰谷さん)。

「音楽活動の時間も作りたいし、自分の料理を出す飲食店もやってみたい。2人でお店をシェアできるなら、金銭的にも気持ち的にも負担が軽く、生活の延長として始められるんじゃないかと思いましたね」と小畑さんも言います。

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そして2012年11月、物件の契約をすませ、いよいよリノベーションがスタートしました。

必要最低限をプロにまかせてセルフリノベーションで予算を抑えた

本当のところ、お店を開店するのはまだ先と考えていたので、お店にかけられる資金の用意もそれほどない状態でした。そのため、電気や水道回りなど、自分たちではできない部分だけをプロに任せ、それ以外はほぼ自分たちで改修工事を行なうことに。

「改修などの知識や経験も全然なかったので、店舗をリノベーションしている知り合いのカフェに行って、壁の作り方や床の貼り方を教えてもらったり、古い建具を安く譲ってもらい、お店に戻って2人でやる……そんなことの繰り返しでしたね。梁を出したいからと、天井を一部抜いて、その状態で大家さんに見てもらって大丈夫か確認するなどしていました」(灰谷さん)。

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こうしてセルフリノベーションをしたおかげで、物件取得や改修費、厨房機器など、開業にかかった資金は約120万円まで節約できました。また、完成に近づくにつれて気づいたこともあったといいます。

「分館には夜行っていたけれど、お店を開こうと思うまであまり京島にくる機会もなく知らなかったんですが、よくよく観察してみるとこの辺は例えば床が傾いているなど古い家が多いので、自分たちでリノベしている人たちがけっこういるのがわかってきて。それがこの街の面白さなんだって、気づきましたね」小畑さん。

そうしてお店が完成したのは2013年4月1日。なんと開店日の朝だったそうです(笑)。

世代や職業を超えて会話が弾む。新しい出会いや楽しみも広がる

お店のドアを開けると真っ先に、吹き抜けになった開放的な天井とカウンターが目に飛び込んできます。キッチンスペースは一段高くなっていますが、客席とのへだたりがないので、自然とお客さんとの会話も弾むのだとか。飲食スペースは窓際と壁沿いのカウンターテーブルと5席のみ。当然お客さん同士の距離も近くなります。

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「たとえば同じテーブルに、妊婦さんと、お子さんをたくさん生んだおばあちゃんが居合わせて、子育てについて話をしたりとか、偶然面白い組み合わせになることも多いですね。新しい出会いがあったり、話をしたり、楽しいことが始まりそうな、そんないいきっかけが生まれる場所になるといいですよね」(灰谷さん)。

京島界隈は、ニット職人や染色、帽子屋さんなど、若い年代の作家さんたちも移り住んできていて、お店を覗いてくれるそうです。また、常連さんの中には昔からここに住んでいるご年配の方々もいるそうです。

「たとえば初めてエスプレッソ系のラテを飲んだり、ハーブ系の料理やキッシュを初めて食べてくれた人たちもいて、おいしいって言ってくれて。そういう新しいものを受け入れてくれるとうれしくなりますよね」(灰谷さん)。

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お店を運営したこの1年間について、灰谷さんはこう語ります。

「お店を軌道に乗せたいということもあって、この1年間は100%コーヒー屋の店主になっちゃいました(笑)。もちろん楽しいんですけれども、今年はもう少し時間やお金も余裕
を持って、音楽活動など別のものにも比重を置いて生活したいですね。あと、2階をイベントスペースとして開放するため、いま改修工事の真っ最中なんですよ。こちらも楽しみです」

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一方小畑さんは、「僕らはビジネスとしてカフェや飲食を始めたのではなくて、“ライフスタイル”として選んだんだと思うんです。ここを拠点につながりを持ち、また別のことを始めるきっかけが生まれそうな生活を。その証拠に、ここにいると人が集まってきて、面白い話ばかり来ちゃうんですよ(笑)」といいます。

一軒家を自分たちで改装してカフェを開店する。それは一見、田舎に生活を移して自由に暮らす人たちの生活のようですが、それを都会でなんなくできてしまう……。それがヒガシ東京・京島の魅力なのかもしれません。

2人の気さくな笑顔と会話も、このお店のご馳走です。下町散策で近くに来たら、気軽に訪れてみてくださいね。

詳細情報

名称ムームーコーヒー&サテライトキッチン
住所東京都墨田区京島3-48-3
URL

http://muumuucoffee.moo.jp/

その他

この記事を書いた人/提供メディア

Chiho Takita

空き家&空き店舗活用研究員。普段はマネー誌のライターだが、地域に根ざした暮らしと仕事をしたいと思い、東東京マガジンライターに。浅草~向島界隈を中心に街歩きをしていたところ、空き家&空き店舗を再生して図書館やギャラリー、カフェ、イベントスペースに活用している事例を知り、これらの取材をするように。浅草在住。

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