ホーム > インタビュー > タナカホンヤ「本を通じて人と繋がる」@根津<ブックイーストVol.1後編>

2014.09.08 (Mon)

タナカホンヤ「本を通じて人と繋がる」@根津<ブックイーストVol.1後編>

本にまつわる事柄で先進的な事例の多い東東京。9月の特集『ブック・イースト〜日本中を刺激する東東京の「本」文化〜』では、本屋さん、出版社、本イベントの仕掛人、本を生活の一部にした人たちなど、4組にお話を伺います。特集を通じ、東東京にある本にまつわる活動が多くあることを知っていただけたらと思います。

Vol.1では根津の古書店&ギャラリー「タナカホンヤ」店主・田中宏治さんのお話しをお届けしています。前編でお訊きした「古書店」の話に続き、後編では「ギャラリー」のお話しを尋ねました。

エネルギーの集まるイベントスペース

前編では、タナカホンヤをスタートしたキッカケや地域を意識した選書等、古本屋に関するお話しを伺いました。後編は、タナカホンヤのもう一方の魅力・ギャラリーの話をお届けします。

【タナカホンヤ店主・田中宏治さん】

【タナカホンヤ店主・田中宏治さん】

イベントがモチベーション。本は人と繋がる入口

——ギャラリーのレンタル料は?

2週間3万円〜、になります。壁に作品を飾ってもいいですし、物販をしても構いません。音楽ライブを開催することもできます。

周辺の人たちから好意的に思って頂けているおかげか、通りに出店を開いて珈琲を販売してみても買いにきてくれたり、ライブのお客さんが沿道に出てしまっても怒らずにいてくれたりしていて、助かっています。この界わいの人たちも楽しみにしてくれていて、近くの地域と比較しても、「どうしてここではイベントを開くことができるの?」と言われるくらいです。

——印象深かったイベントは?

いくつかありますが、一つは東東京研究所が週末に開催した、ファッションの展示と映画上映会のイベントですね。人がたくさん集まり、来てくれた方がまた別のイベントを開催してくれる等、広がりがありました。また、夜ふかし市というイベントで行われた腹話術怪談も、印象深いものでした。今までで一番、人が集まってくれて、盛り上がりました。

イベントの時は、ぼく自身も参加者になって楽しんでいます。今はギャラリーで開催されるイベントがあるおかげで、モチベーションを維持できている部分が大きいです。

【夜ふかし市では腹話術怪談が行われた】

【夜ふかし市では腹話術怪談が行われた】

——イベントのおかげでモチベーションが保たれる今、それでも古本を並べ続ける理由は?

もともと古本屋としてスタートしたこともありますし、本が好きだということもありますが、何もないと入口がないような気がしています。本が置いてあれば、「この本、面白いですよね」といった共通点が見つかるので、自然と会話が始まるんです。だから古本屋&ギャラリーとしての運営を続けています。

ワクワクするイベントから力をもらって

——タナカホンヤのこれからは?

当面は来年4月の契約更新まで、継続していく予定です。賃貸契約の更新をするかしないか、ウンウン悩んでいます。

自宅を引っ越すタイミングで開業したこともあって、今日まで続けていられることも予想外でした。月曜火曜は定休日なので、飲食店での仕事を掛け持ちすることで生活費と運営費を稼いできました。貯金を切り崩しながらではありますが、ここまで継続できて、とてもよかったです。

ぼく自身としては、もしも契約を更新しない場合は東京から離れて暮らそうかなとも思っています。でも、腹話術怪談のように、ぼく自身がワクワクできるイベントの予約が5月6月に入ってしまったら、迷わず更新するでしょうね。ワクワクする、楽しみなイベントの予約が入ることを待っているのかもしれません。

【8月末に開催されたイベント風景。ライブは外まで立ち見】

【8月末に開催されたイベント風景。ライブは外まで立ち見】

ちなみにイベントを開催する場合は、3ヵ月前くらいから声をかけてもらい、主催者がDMを刷るタイミングまでにきっちりした日程を決めるようなスケジュールが多いです。皆さん、ゆるく運営していることを知ってくれているので、きっちりかっちりせず、相手の予定に合わせてスケジュールを決めていけています。

愛される秘密はきっと人柄にある

本が糸口となり、人が繋がって、イベントから力をもらう。インタビューを聞いていて、古書店&ギャラリーという組み合わせに流れる豊かな循環を感じました。

また、印象深かったのは、「根津界わいの古本屋の方々や編集者、ライターの方々からも、とても心配されていて、お世話になっています」と、都度、感謝の気持ちを口にする店主・田中宏治さんの姿です。タナカホンヤへの愛はきっと、田中さんの人柄が源泉になって周囲の人から注がれているのだろうなと思いました。

また、綿密な計画や知的な発想、行動的な企画力など、自分の強みや秀でた能力を必要とするイメージのある「場づくり」とは異なった、関係づくりの実態を教えてもらえたような気もします。そんなタナカホンヤと田中さんの魅力は、実際に一度会いに行くとはっきりわかりますよ。

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【タナカホンヤの目印は店頭に立てかけられている、こちらの看板です】

【タナカホンヤの目印は店頭に立てかけられている、こちらの看板です】

9月特集【ブックイースト】記事アーカイブ

Vol.0:9月特集を始める前に。本のことなら、東東京をみよう
Vol.1前編:タナカホンヤ「本を通じて人と繋がる」@根津

詳細情報

名称古書店&ギャラリー「タナカホンヤ」
住所東京都台東区池之端2-7-7
URL

http://blog.livedoor.jp/tanakahonya

その他ギャラリー利用料:2週間3万円〜(参考例)

この記事を書いた人/提供メディア

新井 優佑

インタビュアー/ノンフィクションライター。WEBマガジンやオウンドメディアの運用、寄稿をしています。出版社でスポーツ雑誌編集とモバイルサイト運用を担当したのち、独立しました。2014年は、手仕事からデジタルファブリケーションまで、ものづくりの記事を多く作成しました。1983年東京生まれ。

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