ホーム > インタビュー > 城一生さんの浅草靴産業への情熱が止まらない <クツと革の街 浅草のニューウェーブ!〜前衛派モノづくりの今を追え〜Vol.1後編>

2014.10.10 (Fri)

城一生さんの浅草靴産業への情熱が止まらない <クツと革の街 浅草のニューウェーブ!〜前衛派モノづくりの今を追え〜Vol.1後編>

前編では、浅草の靴産業に情熱を注ぐ靴業界ジャーナリスト・ものづくり工房マネージャーの城一生(たちいっせい)さんに、”小売店 > 問屋 > メーカー > 材料販売店” という小売店が一番力を持っている力構造が変わらなければいけないという課題と、1990年前後での大きな変化について触れて頂きました。

後編は、1990年前後での大きな変化についてもう少し掘り下げ、そのあとに城さんがモノづくり精神の重要性を語ります。

浅草靴産業が直面するグローバル化の勢い

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【城さん作成の資料:日本の革靴生産量の推移・革靴輸入の推移。80年代後半からの変化が顕著】

——1990年前後に何が変わったのでしょうか?

戦後の洋装化、高度成長期を経て、ブランドが数多く生まれたバブルの時代まで、浅草靴産業は全盛を極めました。また、その時代の日本の皮革・靴産業は自由貿易ではなかったこともあり、まだ国内産業が守られていたのです。

86年にその貿易制度が変わり、90年代から輸入品が急増し、また多くの日本企業の生産拠点が海外に移転しました。2000年以降は低価格化が進んでいます。このグローバル化への対応に追いつかず、日本国内・外での競争力が弱くなったんです。最盛期の浅草メーカー350社は現在その3分の1近くまで減少しました。

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【城さん作成の資料:革靴はどこから輸入されているのか?】

こういう状況の中で、浅草靴産業を守ってきたメーカーや職人さんも高齢化し、次第に企画力も弱くなり、若手の育成をすることも少なくなって、現在に至ります。日本では20年以上有力な国産ブランドが生まれていないんです。材料屋、職人さん、メーカー全てを含めて、産業としての仕組みが、今のままだと危ぶまれます。

将来を担う若手デザイナー・職人には誇りがある!

実は日本には、お金を払うお客さんもいるし、物が売れる市場は存在しているのですが、今の浅草の靴産業はこれにミスフィットしているのです。ということは、“この市場に合うようにするにはどうするか?”、“その隠し玉は何か?”が課題です。そのカギを握るのが”モノづくりの精神”だと城さんは信じています。誰かが靴産業に”価値がある”と言わなければならないのです。

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【城さん作成の資料:靴産業のしくみを確立できる可能性はある!】

——”モノづくりの精神”が、実際にどのように浅草の靴産業の将来に影響するのでしょうか?

まずは”小売店 > 問屋 > メーカー > 材料販売店”という力構造を変える必要性があります。今の若手(30代が多い)のデザイナーや職人は、管理されない、自分らしさへの欲求から靴づくり・モノづくりを始め、それに誇り・自信・愛着を感じています。時代の違いであり、大量生産・販売への素朴な違和感、疑問とも言えます。彼らはこの力構造にはまりません。

現在、危機にある浅草靴産業の仕組みは、こういう個人のモノづくりをする人と一緒に成り立つことができると思っています。機械と手作りの住み分けで、うまく融合できる可能性があるということです。ですので、個人で靴を作っているデザイナーは個性を出して、周りと繋がって循環するということが実現できれば、と思います。

作れば売れる時代のプロダクトアウトでもなければ、実は大手有力企業主導のマーケットインでもない。自分たちの暮らしや環境を見つめ、ファッションや健康生活にとって十分な価値感のある靴・履物を無駄なく作っていくこと、それがこれからますます強く求められていきます。そこに必要となるのは、若い柔軟な発想とエネルギーです。

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【城さん作成の資料:浅草の靴業界では、将来を担う新しい動きが起こってる!】

——若手デザイナーや職人さんが、浅草に新しい動きを起こしているんですね。では、熟練職人さんなどには、誇り・自信・愛着に対する変化は見られますか?

若手デザイナーと一緒に仕事をする職人さんは、変化しているみたいです。デザイナー達に「すごい!」などと言われて、うれしそうな様子。本来、仕事熱心で、すばらしい技術を持った人が多いのですから、きちんと評価されれば、より良い仕事をしようという姿勢になるのだと思います。

浅草に拠点を構え、浅草で仕入れをする将来を担う新しい人材が存在するんですから、今その存在を知ってもらうこと、新旧が交流することが重要になっています。これが僕が今力を入れていることなんです。

現在、台東区立”浅草ものづくり工房”のマネージャー、浅草モノづくりのイベント”A-round”の企画、靴デザイナーのインキュベーション施設”JINCA”の運営、百貨店などでの各種イベントの企画をしているのは、そのためです。

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【写真:城さんの浅草靴産業への熱が伝わってきます。】

今回の取材インタビューは、実は私が口をはさむ隙はほとんどなかったくらいに、城さんの情熱レクチャーでした。城さんは、靴に関する生き字引といって過言ではないと思います。企画、情報提供、人を繋げることが大好きという城さんは、真剣ながらも、とても楽しそうなのです。

浅草靴産業のことを、再度考えたり、初めて知ったりしていただけたでしょうか?ターニングポイントに立っている現在、モノづくり精神で切り抜けようとする新しい動きはいよいよ大きくなっている様子。東東京マガジンでは、これを見守り続けます。

詳細情報

名称城一生(たちいっせい)- 浅草ものづくり工房マネージャー 
住所〒111-0023  東京都台東区橋場1丁目36−2 台東区立産業研修センター
URL

http://www.monokobo.jp/

その他

この記事を書いた人/提供メディア

Kumiko

独自性研究員。 独自のアイデアで、”考える”機会を与えてくれるものに惹かれます。 また、時間の動きに興味があり、今流行っているものよりも、その先: 時間を先に引っぱっている事や人、または、それ以前: 時間が刻まれた物をいつも探しています。東東京にはこれらの要素がいっぱいで飽きることがありません。

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