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2015.02.23 (Mon)

家電を愛する男 DESIGN UNDERGROUND@足立区<恋におちる Vol.3後編>

2月といえば、バレンタイン。それにちなんで2月の東東京マガジンの特集は「恋に落ちる。」をテーマとします。

恋といっても、今回の恋は男女の甘酸っぱい恋ではなくて、ユニークな視点で色々な物や事にのめり込んでいる偏愛(=恋している)を持つ方々を取り上げたいと思っています。

何かをとてつもなく好き・のめり込むということは、情報が氾濫しトレンドがどんどん移り変わる現代において、心のよりどころにもなりえ、自分のアイデンティティを感じる必要な能力のように感じます。

今回の特集では取材させていただく方々の恋がどんな恋なのか、どんなキッカケでその恋がはじまったのか、恋するためのヒントなどを様々な4組に伺っていき、読者に自分らしい生き方のヒントをご提供できればと思っています。

vol.3 は、家電蒐集家・家電考古学者、DESIGN UNDERGROUND 主宰の松崎順一さんにお話しを伺っています。前編では、松崎さんが家電蒐集家になるまで、そして家電との恋愛模様を伺ってきましたが、後編では、これまでの家電蒐集の活動から派生してきたこと、果ては松崎さんの今後の夢までを伺いました!

家電蒐集は、その時代の空気も集めること

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ーーー松崎さんはどういうところで家電を集めてくるのでしょうか?

最初はリサイクルショップだったんですが、本格的に蒐集するようになってからは、ゴミ屋さんが多いですね。日本全国のゴミ屋さんを回って、可能な限り探してくるんです。ぼくが行くところの一つに、埼玉や千葉や神奈川などにある、主に東京から出るゴミを集めている処理場があります。毎日、一般家庭やお店、会社などから大量に出るゴミの中からラジカセなどの家電を探してくるんです。たまにヘソクリも出てきますよ(笑)。何十年も経って、隠した人も忘れてしまったんでしょうね。

家電がすきで探しているはずが、100年前の家族アルバムや第二次世界大戦時に発行されていた古いコイン、当時の本や江戸時代の訴状なども見てしまうので、とても時間がかかります。でも一日に数軒、週2〜3回は回るようにしています。ここ(ファクトリー)には、当時いろんな人が使っていたものがいっぱいあるんです。

ーーーいろんな人に見られている、ということですね。

ぼくはそれが心地いい。人のぬくもりを感じるというか、人が使っていたものに囲まれるというのは、気持ち悪くはないんです。

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ふと我に返る瞬間

ーーーところで、“自分は一体なにをやっているんだろう”というような、ふと我に返る瞬間があったりはしませんか?

あのですね、もう我に返っているんです、すでに(笑)。これが我なんですよ。だから返るときがないんです(笑)。本来の自分に戻ったときが「我」なんでしょうけど、これがぼくの「我」なんでしょうね。

小学生くらいのときから、電気製品が大すきだったんです。家の中の家電を全部分解していました。家に新しい機械がきたら、必ず開けていました。中がどうなっているのかが知りたいんですね。どうやって動くのかという仕組みが知りたいんです。

昔から、自分が知らないものを知りたいという欲はすごくありました。それは家電の中身を知りたい!とか、オバケは本当にいるの?とか。夏になると墓場をリサーチして、オバケは出てくるのかを調べたりしていました。未知なものに憧れるんですね。探究心はすごく強かったです。科学的な実験などもすきで、それが家電いじりに繋がっているんですね。10代のころから50代になった現在まで、やっていることはあまり変わっていません(笑)。

家電探しも蒐集もそうなのですが、謎解きというか、家電を探すことによって自分がわくわくドキドキするというその活動自体を楽しんでいるという方が正解なのかもしれません。自分でナゾナゾを作ってそれを解く。方程式をつくったり、ここを行ったらどうなるかとか、それを検証しているという感じなのかな。だから純粋にモノを作る人とは全然違うんですよね。

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ーーー最近は、家電マニアの方もたくさんいらっしゃいますよね。

どちらかというと新しい、現代の家電のマニアですよね。家電芸人というのもいますが、彼らは今巷に出回っている家電をこの機能が最高だ!とか、これがいい!というのをあれこれ比較していますよね。それはそれでいいと思いますが、ぼくは興味がありません。ぼくにとってインダストリアルやプロダクトは、性能の前にデザインなんです。スペックなどは二の次です。家電芸人の方が「この機能がいいんですよ!」となると、「その機能はどうでもいいでしょ!デザインでしょ!」となります(笑)。

人間にとって家電やプロダクトは愛でるという行為が大切だと思っています。愛着をもって毎日使うことによって自分が楽しいと感じることが、プロダクトとの関わり合いで大切なことだと思います。動かさなくても、眺めているだけでも楽しい、ぼくはそういうモノとの関わり方がすきです。高性能でテキパキ働いている家電をみると「そんなにがんばらなくていいよ、もっとゆるくいこうよ」と、そのぐらいのスタンスがすきなので、毎日眺めていても飽きないという部分が愛でるという行為に繋がると思うんです。

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松崎さんは日本一!

ーーー松崎さんの代わりはいませんね…

ぼくは主に1970年代以降の家電を集めています。70年代、80年代のTVドラマなどの番組は、ほとんどぼくが家電のイメージを作っています。実はそういった番組のイメージを作るお仕事も多くて、たくさんの方が相談にくるんです。

ぼくは、家電がすきだから勉強しています。ただ、資料があまり多くないことも事実で、検証することが難しい。ぼくのところには、1960年代以降の家電の紙資料、カタログやパンフレットなどがほとんどあります。ぼくが日本一の量を持っていると思います(笑)。家電の本体を集めるのと同時にその家電のデータを集めて、何年製のもので、発売当時の価格やスペックなどを検証すると、その家電に対してより愛着がわくんです。

家電に関する日本記録更新し続ける松崎さん。その活動は、家電に関するコラムを書いたり、ファッションブランドとコラボレーションしたり、アート作品として発表をしたりと多岐に渡ります。松崎さんなりの家電に対する愛情の表現方法を探している最中なのだそうです。

また、蒐集した家電をアーカイブする方法は現在も模索中とのこと。プロダクトがどうやったら自分の中に残るのかということを考えて、現在は「Instagram」という無料の画像共有アプリケーションを使って、写真で記録を残すことを試しているそうです。

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ーーー最後に、「DESIGN UNDERGROUND」はどういう意味でつけられた名称なのでしょうか?

あんまり深い意味はないんですが… ぼくが家電蒐集家を目指したときに、なんでこういう形になったのか?とか、どうしてこうなったのか?とか、家電のデザインの本質の部分を突き止めたい、知りたいと思ったんです。それがスタートのコンセプトでした。

DESIGN UNDERGROUNDを別名で言い換えると「温故知新」なんです。ぼくの活動は、古いものから新しいものづくりのヒントを得て表現していくというものなので、ベクトルが下を向いていて、そうするとやっぱりアンダーグラウンドだろう、と。

普通のデザイナーは、新しいものをクリエイションしていくのが本来のデザインの在り方だと考えると思います。でも、みんなが向かっていく方向ではなくて、向かいたい方向に向かっていくデザインもアリなんじゃないかなと思います。古いものを検証したりする自分の好奇心のベクトルが、方向的には下に向かっているんだけど、上に向かうよりもはるかに面白い!ということに気づいたんです。

ーーーなるほど!なんだか納得しました!

いろんなプロジェクトに携わりながら、自分が本当にやりたいことを探しています。コンセプトがしっかりしていないと活動がブレてしまうけど、毎日モノを検証することによって自分自身のことも検証しています。それが何かの発露としていろんな形になっていくとおもしろくて、自分なりの考え方や哲学を表現できたらすごく楽しいですね。自分の違う側面は、今でも活動の中で探していて、ある意味、毎日が活動という旅ですね。

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古い家電を媒介にして、さまざまな時代のいろんな場所をたくさんの人と旅を続ける松崎さん。家電を語る姿はずっとキラキラしていて、心の底から楽しそうでした!

実は昨年、家電の中ではAppleマニアだということをカミングアウトした松崎さん。Macintoshのモニター型の一軒家もしくは家電研究所を建てることが夢なんだそうです(!)。

家電トークは想像していた以上に楽しくて、話は尽きませんでした… そうです、恋は楽しいものだったんです。

2月特集:恋におちる

<Vol.1前編>文字に思いを込める 活版印刷工房 FIRST UNIVERSAL PRESS@台東区

<Vol.1後編>文字に思いを込める 活版印刷工房 FIRST UNIVERSAL PRESS@台東区

<Vol.2 前編>スカイツリーに恋してる!写真家 石川明宏さん

<Vol.2 後編>スカイツリーに恋してる!写真家 石川明宏さん

<Vol.3 前編>家電を愛する男 DESIGN UNDERGROUND@足立区

<Vol.3 後編>家電を愛する男 DESIGN UNDERGROUND@足立区

詳細情報

名称■DESIGN UNDERGROUND
住所〒121-0062 東京都足立区南花畑5-15-14-105
URL

http://www.dug-factory.com

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なお、2015年現在、家電整備等の作業は行っておりません。整備・修理のお問い合わせはご容赦ください。
お問い合わせの際は、お名前は必ずフルネームを入力いただきますようお願いいたします。

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