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2017.02.15 (Wed)

福岡生まれ、東東京育ち──草木染めブランド「MAITO/真糸」を支えるモノづくりの街の魅力

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株式会社マイトデザインワークス代表/染色家
小室 真以人さん

ユニークな企業やショップが続々と誕生する東東京の中でも、特に注目を集めている街の一つが台東区・蔵前。センスの光る店舗が点在するこの街で、豊かな色合いと柔らかな風合いでひときわ目を引くお店があります。それが、草木染めの染色工房を兼ねたアトリエショップ「MAITO蔵前本店」です。

ニット、シャツ、カットソー。それにスカーフや靴下、バッグなど小物の数々。天然素材とメイドインジャパンをコンセプトに作られた商品ラインナップは、海外の観光客も魅了するほど。このお店を2012年に立ち上げ、草木染めブランド「MAITO/真糸」を展開するのが、染色家の小室真以人(こむろ・まいと)さんです。

小室さんは、下町で生まれ育った生粋の江戸っ子……というわけではなく、故郷は福岡で、本人曰く「めちゃくちゃ田舎の出身です」とのこと。そんな彼が、創業の舞台として東東京を選んだ理由とは? たっぷりお話を伺いました。

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懐かしさと新しさが同居するMAITOの商品は、一点一点手染めで染められています

「本物の色」をお客さんに直に見てほしい

──草木染めブランド「MAITO/真糸」は、2008年に小室さんの地元、福岡でスタートしたと伺っています。
そうです。もともと父が草木染めを稼業にしていたので、父の工房で修業して技術を磨きつつ、夜内職をして自分のブランドを立ち上げたって感じです。その後、2010年に会社を設立。台東区上野の高架下、モノづくり系の工房やショップをセレクトした商業施設「2k540」に初店舗をオープンしました。

──東京ではなく、地元福岡で創業する道もあったのかな?と思うのですが。
たしかに選択肢は色々ありました。大学(東京藝術大学美術学部工芸科、2005年卒)が東京だったので東京の良さも分かるし、田舎にしかない良さも分かる。そう、“福岡”って市内は結構都会なんですけど、僕の地元は秋月という山に囲まれたすっごい田舎なんですよ。

特に草木染めは植物を扱う仕事ですから、自然があふれていて、水がきれいで、という環境でしかできないこともたくさんある。ただ染物ですから、僕らとしては日の光を反射した“本物の色”を、直にお客さんに見てもらいたいじゃないですか。それが山奥だと、わざわざ見に来てくれる人はどうしたって少ないんですね。

──自信作ができても、そもそもお客さんがいないと。
だから、当初は自作した商品をクルマに詰め込んで、1人で東京まで行っていたんです。色んなショップに「うちの商品を置かせてください」って、飛び込み営業でお願いして回っていました。

──店舗を構える前に、商品の卸から始めたんですね。
色々なお店にご協力いただいて、少しずつMAITOを知るお客さんも増えていきました。そうなると今度は、お客さんがいつでもちゃんと商品を見られる場所を設けたいと思うようになったんですね。

で、ちょうどその頃に秋葉原と御徒町の間の高架下に「2k540」がオープンするという噂を聞いて。大学のキャンパスが近かったので土地勘はありましたから、人通りは正直そこそこだよなと。でも、素材や材料が必要になれば浅草橋や三筋も近いし、渋谷・原宿あたりにも山手線1本でいける。モノづくりにはかなり便利な場所だというイメージが持てたので、「ここで勝負してみよう。お店を作れば、今以上に商品の魅力を直接お客さんに届けられる」と出店を決めたんです。

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商品の生産は地元福岡。職人さんと協力しながらひとつ一つ染め上げます

什器はイチからDIY! 低予算で立ち上げた初店舗

──店舗の立ち上げって、かなり予算がかかるイメージがあるのですか、小室さんはそのあたりいかがでした?
学生時代から貯金はしていましたけど、お店づくりにお金をかけるなら、商品づくりに費やしたいタイプなんですよね。だから、店舗用の什器とかは全部自分で図面を引いて、仲間にも協力してもらってDIYしました。内装費はその材料費くらいじゃないかな。

──なるほど、作り手たるもの什器も自前で作ってしまえと。
工夫すれば、お金の面はなんとかなりますよ。東東京の場合、家賃だって福岡市内より安いところがいっぱいありますし。ただ、今思い返せば、自作した棚をいっぱいに満たすほど商品がなくて。スカスカすぎて、これでよくオープンしたなってレベルだったと思います(苦笑)。

──準備万端でオープン!というわけではなかったのですね。
正直、最初は怖かったです。お客さんが来てくれるかも分かりませんし。だから、自分の中で期限を決めていました。「オープンから半年間売り上げが立たなかったら、お店を閉める。そして何がダメだったのか見つめ直して、お金もまた貯めて再出発しよう」と。

──その覚悟が今につながっているわけですね。
何ごともやってみないと分からないですから、腹をくくるって大事だと思いますよ。

それに、お店を持ったことでなんというか安心感が生まれたんですよね。商品は自分が頑張ればつくれますし、直営店なら、夏にウールを置いてもいいし、冬にTシャツがあってもいい。やり方・売り方は考えないといけませんが、この世に1つだけの限定商品をつくるとか実験的なことも含めて、自由にモノづくりができて、その評価を直に確認できる環境を得られたのは、自分にとって本当に大きかったです。

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「ぜひ一度蔵前に足を運んでほしい」と話す小室さん

商売で育ってきた街は人も地域も温かい

──2012年には、同じ台東区の蔵前にアトリエショップもオープンされて、現在は草木染めのワークショップなども開催されているそうですね。
2k540に店舗を出した時も、「大学からずっと台東区だな」って笑ってたんですけど、なんか肌に合うし、好きなんですよね。それに、このエリアじゃなかったら、ブランド自体がこんなに上手くいってなかっただろうなとも思っていますし。

──なぜそう思うのですか?
特に蔵前に来てから思うんですが、“人”と“場所”のフォローがめちゃくちゃ大きい。元々商売で発展してきた街だからなのか、これから頑張ろうという新人もちゃんと受け入れてくれて、色々な情報を気兼ねなく共有してくれます。

例えば、アトリエショップをオープンするときに、台東区の「アトリエ化支援事業」(*)という助成金を活用したんですが、僕はこの制度をまったく知らず、詳しい方から、「あれが活用できるんじゃないかな」と教えていただいたんです。そういう周りの方々のアドバイスに助けられることが本当に多いです。

*台東区が平成23〜26年度に行っていた助成金制度(現在は終了)。店舗を「手作り」による製造工程や「ものづくり」の現場をみることができるように改装する場合、その費用の一部を支援する事業。

──特に創業期は、色んなバックアップが必要ですものね。
それに昔から色んなクリエイターが創業してきた前例があるから、地域の信用金庫さんとかも、モノづくりの事業に対して理解が深い。ありがたい環境が整っているから、ユニークなショップもどんどん増えていて、最近は外国や地方から「あのお店でチョコレートを食べたい」「自分だけのインクを作りたくて」なんて、そのお店を目的にこの街に来る方も年々増えている印象です。

──お店それぞれの魅力が、地域全体のブランド力を高めていると。
しかも、いいお店・いい人が集まっているので、お客さんが来ると「お食事なら向こうの通りに……」とか「革細工がお好きなら……」とか、近隣のお店を自然に紹介しあっているんですよね。本当にあったかくて面白い街です。

──そんな東東京でこれから創業を検討している方に、最後にメッセージをいただけますか?
少しでも興味があれば、まずは一度地域に足を運んでみてほしいですね。色んなお店を巡って、実際の空気を感じた上で、この街をチャレンジの舞台に選んでもらえたらうれしいですね。

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MAITO/真糸(マイト)
http://maitokomuro.com/
■MAITO蔵前本店: 〒111-0051 東京都台東区蔵前4-14-12 1F
■アクセス:
都営浅草線「蔵前駅」A0出口より徒歩2分
都営大江戸線「蔵前駅」A6出口より徒歩9分
JR総武本線「浅草橋駅」浅草橋駅東口より徒歩11分
■OPEN: 11:30〜18:30(月曜定休)

この記事を書いた人/提供メディア

イッサイガッサイ 東東京モノづくりHUB

Eastside Goodside (イッサイガッサイ) 東東京モノづくりHUBとは「CREATION IN EAST-TOKYO」を合言葉に、モノづくりが盛んな東東京の「ヒト」と「モノ」と「バ」をつなげて創業者をサポートし、東東京をワクワクする地域に変える創業支援ネットワークです。
https://eastside-goodside.tokyo/

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