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2017.05.10 (Wed)

墨田の老舗メリヤス工場から第二創業。「ニット草履」をブレイクさせた3代目が語る「モノの価値の高めかた」

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オレンジトーキョー株式会社
代表取締役 小高 集(こだか つどい)さん

「いいものを長く使う」という考えの人が増えたことにより、近年、職人の技術を活かして新しい商品を生み出す企業が増えてきました。オレンジトーキョー株式会社が手掛けるニット草履「MERI」も正に、そんな商品の一つです。

オレンジトーキョーの母体となった「小高莫大小(こだかめりやす)工場」は、「リブニット」と呼ばれる素材でポロシャツの襟などのパーツを60年以上作り続けてきた老舗企業です。その創業の地、墨田区・両国は、明治時代から続くメリヤス産業の集積地であり、現在でも「莫大小」の名を冠した多数の会社が立ち並んでいます。

3代目である小高集さんは2005年、家業を引き継ぎ代表に就任。「MERI」をはじめとするオリジナル商品のブランド展開を手掛け、2013年にオレンジトーキョーとして分社化しました。

「MERI」ブランドのニット草履の価格は7000円前後。ルームシューズとしては決してお手頃な価格とは言えないこの商品は、どのようにして市場に受け入れられたのでしょうか。ブランド立ち上げのストーリーを、小高集代表にお聞きしました。

きっかけは八戸からの1本の電話

──洋服のパーツを作ってきた工場が、なぜブランドを始めたのでしょうか。

2000年前後から中国製の商品の質が向上してきて、私が代表を引き継いだ05年頃には売り上げの減少が止まらなくなってきました。完成品を作っていないので、洋服メーカーなどのお客さんから注文がなければ仕事はありません。そのことに危機感を覚えて、オリジナル商品の企画を始めました。

──ニット草履を作ろうと思ったきっかけは?

それまでの本業に代わる商品がなかなか出てこないなかで、09年に青森の八戸で布草履を作っている、あるご夫婦から電話をいただきました。「縫製工場から余った生地を仕入れて制作していたが、工場が減って原料の入手が難しくなってしまった」とのこと。仲間にも声をかけて、余り布をかき集めて送ったところ、後日お礼として送られてきたのが手作りの布草履だったのです。

それを履いたらすごく気持ちが良くて、逆に「うちのオリジナル商品開発を手伝ってもらえないか」とお願いしたところから、試行錯誤の日々が始まりました。

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▲偶然かかってきた1本の電話からニット草履の開発がスタート

顧客を絞り込み、デザインの力で売り値を倍以上に

──当初の売れ行きはいかがでしたか。

1年くらいかけて原料から開発し、「めりやす草履」という名前でネット販売を始めたところ、あっという間に売り切れました。「これはいけるかもしれない」と思いましたが、当時の価格はほかの布草履の相場に合わせて、1足3500円程度。しかも月に50足ほどしか作れなかったので、大した売り上げになりませんでした。1足編むのに3時間かかり、手間賃を考えると本当は8000円くらいの価格を付けないとビジネスになりません。でも、3500円をいきなり8000円にするわけにはいきませんよね。

──どうしたのでしょうか?

原料の質を高めるだけでは値段は倍にできない。突き破るにはほかの布草履とは違う価値がないといけない。そこで「自分の想像できないところにヒントがあるんじゃないか」と考えました。

ものを作るなかで僕が知らないこと、つまりデザインです。そんなとき、カタログの作成を依頼していたデザイン会社の人から、「ブランディングからやりませんか」という提案があったのです。

──デザインを磨くことで商品価値を高めようと考えたのですね。ブランディングはまずどこから着手しましたか。

まず室内履きに8000円という値付けがあり得るのかを調べたところ、40代の独身女性が室内履きに年間5000円かけるというデータを見つけました。

ニット草履は洗えるし、2〜3年使えるなら8000円でも買ってくれるかもしれない。40代女性が好きなデザインといえば、北欧テイストではないかという話になりました。

そこで、メリヤスの「MERI(メリ)」の「E」に上にウムラウト(横並びの‥)を付けて、北欧風のネーミングにすることを決めました。さらに、「Anne(アンネ)」、「Hans(ハンス)」、「Tove(トーベ)」、「Ellen(エレン)」などのデザインのカテゴリーを設けました。例えば「アンネ」だったら、「洗練されたおしゃれを楽しむ女の子をイメージ」と言った具合です。そこまでをデザイン会社に整理してもらい、方向性が決まるとアウトプットの形も見えてきました。

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▲「自分の想像できないところにヒントがある」と語る小高さん

職人育成、海外拠点で生産性アップ

──いよいよ本格的にブランドが始まるわけですね。事業はすぐ軌道に乗ったのでしょうか。

いいえ。創業後に2つの壁が立ちはだかりました。1つ目は入口=生産です。ニット草履は、職人1人につき1日2〜3足しか編めません。そして売り物を作る腕前までになるには、最短でも1年かかるんです。1期生として3人の職人を養成しましたが、それでも1カ月で150足。青森の方にご協力いただいても月産300足が限界です。

日本ではなかなか職人のなり手が見つからず、それなら海外で作るしかないと考えました。今はベトナムのハノイに6人の職人がいます。材料を投入してソール部分を送り返してもらうという仕組みのため、原価としては高くなりましたが、おかげで月1000足ほど生産できるようになりました。

──2つ目の壁は?

2つ目は出口=販路です。とにかく認知度を上げなければと、まずは展示会への出展から始めました。とはいえ、展示会ではゆっくり話ができません。そこで、14年からは展示会シーズンの前に本店で内見会を開催することにしました。展示会前に新しい商品を見られるので、バイヤーの方も先取りができて双方にメリットがあります。

また、展示会と並行して百貨店での催事にも力を入れました。12〜15年に全国のべ70カ所ほど催事に出ましたね。どういう売り場・客層で売れるか次第に分かってきたので、16年からは場所を絞っています。自身のブランドに適した方法は、経験しながら見付けていくしかないですね。

──ニット草履を作り始めた当初から、売り上げはどのくらい伸びましたか。

ニット草履は夏に履くイメージがあるため、冬はどうしても売り上げが落ちます。それなら靴下を履いてもらえばいいと思いつき、14年に「TUTUMU TOKYO 1948」という、指先の割れた靴下のブランドをスタートしました。靴下も合わせて、売り上げは12年の約390万円から17年には約5500万円に伸びました。

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▲2014年にスタートした靴下のブランド「TUTUMU TOKYO 1948」

──この先、どのようなブランドに育てていこうと考えていますか。

14年に墨田区にオープンした本店兼工房ショップの「MERIKOTI」にはメリヤスの編み機を置いています。70年くらい前の機械ですが、日本の昔の機械は丈夫なので、モーターやネジを変えるだけで使い続けられます。題して「メリヤス編み機 復活プロジェクト」。墨田区にはメリヤスという地場産業が昔からあったことを見える化して、地域の発信拠点になる。そして新しい商品開発に挑み続ける。それが、ファクトリーブランドとしての役目ではないかと思っています。

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▲両国の本店に置かれたメリヤスの編み機

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オレンジトーキョー株式会社
2013年に東京都墨田区で創業。ニット草履ブランド「MERI」を12年に立ち上げ、14年に工房兼ショップ「MERIKOTI」(墨田区)と直営店(成田空港店、現在は閉店)をオープン。同年、指割れ靴下のブランド「TUTUMU TOKYO 1948」をスタートさせた。

〒130-0014 東京都墨田区亀沢1-12-10 平井ビル1F
電話: 03-6658-8662
オレンジトーキョー株式会社 http://www.orange-tokyo.jp/
MERI http://www.meri.tokyo/
TUTUMU http://www.tutumu.tokyo/

工房ショップMERIKOTI
〒130-0014 東京都墨田区亀沢1-12-10 平井ビル1F
電話: 070-6986-0708
営業時間: 10:00〜18:00
定休日: 不定休
http://www.meri-koti.tokyo/

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イッサイガッサイ 東東京モノづくりHUB

Eastside Goodside (イッサイガッサイ) 東東京モノづくりHUBとは「CREATION IN EAST-TOKYO」を合言葉に、モノづくりが盛んな東東京の「ヒト」と「モノ」と「バ」をつなげて創業者をサポートし、東東京をワクワクする地域に変える創業支援ネットワークです。
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