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2017.10.04 (Wed)

浅草橋で人気の雑貨づくり教室、運営の秘訣は「準備し過ぎずすぐ動く」

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みちくさアートラボ 代表
椎名 恵叶さん

近年、アクセサリーや雑貨のハンドメイドがひとつのムーブメントになっています。ウェブサイトやスマホアプリで自分の作品を発表・販売するクリエイターも増えており、モノづくりの手法を学べるワークショップも増えて続けています。

特にハンドメイドファンに人気を博しているのが、2011年に浅草橋駅近くにオープンした、モノづくりカフェ『みちくさアートラボ』です。100種類以上を誇るワークショップメニューは、「簡単」「楽しく」「オリジナル」が特徴で、しかも全て1回完結。入会金なども一切不要で、2時間の講座に参加すれば、手芸初挑戦の人も、自分だけの作品を完成できる手軽さが大きな魅力です。

そんなみちくさアートラボが、ファンに選ばれる人気店へと成長できた理由とは? 2009年に同店を創業した椎名恵叶さんにお話しを伺いました。

みちくさアートラボの写真

様々な加工ができるUVレジンは、同店の看板メニュー。最近はネクタイのリメイク講座も好評

お客さんの「やりたい!」を集めて形に

──みちくさアートラボでは様々なワークショップを開催しているそうですが、どのような講座があるのでしょうか?

ワークショップメニューは、アクセサリー作りなどのハンドメイドやクラフトを中心に現在100種類ほどあります。ただ、毎月の営業日数にも限りがありますから、その中でも人気の20〜30講座を手掛けている形です。

──100種類ですか! カルチャーセンター並みのバリエーションですが、そうしたメニューはすべて椎名さんが企画されているのでしょうか?

そうですね、メニューは基本的に私が考えています。ただ、私は「これがどうしてもやりたい!」というこだわりが特別ないタイプなので(笑)。まったくゼロから想像するというよりは、お客様からお話を伺って、その声を集めながら皆さんの「やりたい!」を形にしていく感じです。

──特に人気のワークショップなどはあるのでしょうか?

一番人気はUVレジンを使ったアクセサリー作りですね。

レジンという素材は、紫外線で硬化する透明の樹脂なんですけども。それを使って写真を加工したブローチをつくったり、ドライフラワーを加工したり、プラ版に絵を描いたり。様々な種類のアクセサリーや雑貨を作ることができるので、お客様の「次はこれをやってみたい」という声に応えるうちに、いつの間にかUVレジン関連のメニューだけでも20種類くらいに増えているんですよ。

──参加者のニーズをヒントにメニューを増やしているわけですね。

そうですね、お客様に喜ばれたこと、褒められたことはもっとやる。それがすべての判断基準です。ハンドメイド限定というわけでもないので、「カフェメニューのスコーンの作り方を知りたい」「お店づくりの方法を教えてほしい」という声に応えて誕生した講座もあります。

みちくさアートラボの写真

創業前はウェブデザインなどを手掛けていた椎名さん。実は当初、ハンドメイドは苦手だったんだとか

カルチャーセンターのチラシから着想

──ワークショップのテーマ以外に、何かこだわっている点などはありますか?

お客様それぞれのご要望に合わせて気軽に参加していただきたいので、ワークショップは全て2時間制の1回完結にしています。もちろん入会金などもありません。こうした特徴は創業当時から変わらないですね。

──1回完結にこだわった理由とは?

もともとこのラボを始める時に、まず参考にしたビジネスモデルが、先ほどお話しに上がった“カルチャーセンター”だったんですね。

新聞の折り込みチラシなどを見ていると、多種多彩なコースが100種類ほど掲載されていて、魅力的に感じる。だけど、決して右肩上がりのビジネスではないですよね。で、何を変えたらいいんだろう? と。

──改善ポイントを探したわけですね。

そうです。ひとつ一つ検討する中で、特に気になったのが「最初の入会金が煩わしいな」「定期的に通う月謝型の仕組みも、今の人に受け入れらないかも」という点です。そこで、入会金なし&1回完結のワークショップにしようと決めて、今に至っています。

──ハンドメイドやクラフトのワークショップという事業アイデアは、元々考えていた?

いえいえ。実はハンドメイドは全然得意じゃなかったんです。ただ、独立前にウェブデザインやグラフィックデザインの仕事をしていたこともあって、パソコンを使ったデザインスキルはありました。それに写真を撮ることも好きだったので、当初は写真をデザイン加工して、かわいいフレームをつけたUVレジンのアクセサリーの受注販売サービスを検討していました。

──当初はオリジナル商品をつくって販売しようと。

ただ実際やってみると、「自分で作ってみたい」という声が多くて。であれば、私が作って差し上げるよりも、自分で作れるようにレクチャーする方が、事業として広がるんじゃないかなと方向転換をしたのです。

今はデザイナー時代とは違ったやりがいも多くて、お客様から「こんなことができるようになるなんて! 」と驚きや喜びの声をいただけると、本当にうれしいですね。

みちくさアートラボの写真

アットホームな店内には、ハンドメイドやクラフトの材料・ツールがずらり

続けるためには「準備し過ぎない、無理し過ぎない」

──ビジネスモデルの研究以外にも、創業前の準備で特に頑張ったことはありますか?

いえ、どちらかというと、「あまり準備し過ぎない方がいい」というのが私の考えです。

「失敗しないように」と勉強し過ぎるよりも、すぐ動くべきだと思います。準備が足りない状況でも始められるようなスタートラインに立って、小さく動けばいい。

──小さく動く、ですか?

私も最初は、出来るだけ固定費がかからないように、新橋のレンタル会議室から始めました。ダメだったらいつでも辞められるように初期投資を抑えて、3カ月ごとにワークショップの成果をひとつ一つ見直して、「やるべきかどうか」を判断してきました。

──勢いで突っ走ってきたのではなく、慎重に前進し続けてきたのですね。

前進し続けるという点では、「続けていける仕組み」づくりもずっと考えてきました。これはカフェや雑貨屋さんなどもそうだと思いますが、お店を始めると、つい営業時間を長くしてしまう傾向がありますよね。

──家賃などの固定費もかかりますから、できるだけお店を開けておこうと。

私も当初は、自分がいられる限り営業時間を伸ばしたり、一見のお客様もフラっと参加できるようにしたりしていました。でも、そうすると体力的にも精神的にもツラくなるんですよね。これでは働き続けていくのは難しくなります。

だったら決まった人数で、絶対に来るお客様だけを対象にしようと、完全予約制に切り替えました。そうやって何度も何度も結果を見ては改良する、という繰り返しです。

──ちなみに、東東京の浅草橋に店舗を構えた点はいかがでしたか?

浅草橋は日本でも有数の問屋街ですから、単純にすごく便利です。たくさんの材料を目にすることで、ワークショップの新しいアイデアも湧きますし、お客様に「この素材は、駅に行く途中のお店で売っていて……」と紹介してあげるとすごく喜んでいただける。

これも道草アートラボのひとつの魅力になっているので、浅草橋を選んだのは大正解だったと思いますね。

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みちくさアートラボ
2009年創業。当初は新橋のレンタル会議室でワークショップを開催していたが、事業成長に伴い、2011年に浅草橋駅から徒歩2分の場所にカフェ併設型の店舗をオープン。定員最大8名という少人数制のワークショップは、ランチやお茶を楽しみながらハンドメイドやクラフトの情報交換・交流を行えるアットホームな雰囲気も魅力です。また、日本屈指の問屋街という立地を活かして、講座で使用した素材の仕入れ先やオススメの材料屋さんも紹介しています。

東京都台東区浅草橋1-31-4 大原第三ビル3階B室
http://michikusaartlab.com/

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Eastside Goodside (イッサイガッサイ) 東東京モノづくりHUBとは「CREATION IN EAST-TOKYO」を合言葉に、モノづくりが盛んな東東京の「ヒト」と「モノ」と「バ」をつなげて創業者をサポートし、東東京をワクワクする地域に変える創業支援ネットワークです。 https://eastside-goodside.tokyo/

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