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2013.11.14 (Thu)

台東区での撮影の裏にこの人たちあり!台東区フィルム・コミッション

今年(2013年)の春から夏にかけてお茶の間の朝を賑わせたのは……そう、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』ですね。東京編の舞台となったのは、上野を中心とする台東区の各所。ドラマ放映後、上野アメ横の集客数は、約1.5倍に増えたのだとか。

台東区に活気を与えたこのドラマの撮影をサポートしたのが、「台東区フィルム・コミッション」です。以前、LwP magazineでご紹介した「したまちコメディ映画祭in台東」にも関わりが深い台東区フィルム・コミッション。どのような活動を行っている機関なのでしょうか?

世界41カ国にあるフィルム・コミッション

フィルム・コミッションとは、撮影場所の誘致や支援を行う機関のことです。現在、世界41カ国・307の団体が国際フィルム・コミッション協会(AFCI)に加盟。日本では各地の地方公共団体や観光協会が中心となり活動を行っている場合が多く、地域の活性化や観光振興に一役買っています。

台東区フィルム・コミッションが設立されたのは2004年のこと。2005年4月には、「Tokyoダウンタウンアートサポート」と名称を変更し、フィルム・コミッション事業とステージ・コミッション事業を主軸に活動を行ってきました。

今回は、「したまちコメディ映画祭in台東」の事務局も行っている文化産業観光部にぎわい計画課で、職員の行木(なめき)さんと、フィルム・コミッション担当の古山さん、大森さんにお話を伺いました!

Tokyoダウンタウンアートサポートのパンフレットには、これまでに支援した作品やロケ地マップが載っている。これを手にロケ地めぐりをするのも楽しい。(パンフレットは区役所にて配布中) Tokyoダウンタウンアートサポートのパンフレットには、これまでに支援した作品やロケ地マップが載っている。これを手にロケ地めぐりをするのも楽しい。(パンフレットは区役所にて配布中)

「エンドロールで名前を見ると、やっていてよかったなと思う」映画やドラマの撮影を支援すべく働く3名の方にインタビュー

にきわい計画課でフィルム・コミッション事業を担当する3名
にぎわい計画課でフィルム・コミッション事業を担当する3名
(写真左:行木さん、中:古山さん、右:大森さん)

--2004年に立ち上がった事業ということですが、設立の経緯を教えてください。
行木:もともと台東区は、上野や浅草など特徴ある街並みが多く立地に恵まれていますので、2004年以前も映画やドラマの撮影で使われることが多かったんです。現在の区長(吉住弘区長)の発案で、撮影の希望を取りまとめたり撮影の誘致をしたりして台東区を盛り上げていこうということになり、事業がスタートしました。

--何名で活動を行っているのでしょうか。
行木:当初は職員だけで対応していましたが、設立した翌年の2005年から専門のスタッフが3名入りました。フィルム・コミッション事業に関わっているのは、専門スタッフの3名と私の計4名ですね。
「現在の区長は映画などの文化が大好きな方なんです」(行木さん)
「現在の区長は映画などの文化が大好きな方なんです」(行木さん)

--台東区は特徴ある街並みが多いということですが、他の区と違う魅力は何でしょうか。
行木:浅草には、昔から活動している落語家や芸人の方がたくさんいて、芸能文化が盛んです。六区ブロードウェイの通りも昔は映画館通りでした。そのように、芸能や映像など文化の集積があるところが特徴ですね。

--人気のロケ地はどこですか。
行木:やはり、浅草寺、仲見世、雷門の辺りです。

--台東区は、画面に映ったときに「あの辺りでロケをしているんだな」とすぐに分かるところが魅力だと思います。他に、人気の場所はありますか。
行木:浅草の煮込み通り(ホッピー通り)や上野のアメ横、焼肉街で有名なコリアンタウン、昭和の街並みが残る谷中の辺りなども人気があります。
「上野公園も、もちろん人気のスポットです」(行木さん)
「上野公園も、もちろん人気のスポットです」(行木さん)

--撮影支援の申し込み方法について教えてください。台東区内の場所を撮影で使いたい場合、どのように申し込みを行えば良いのでしょうか。
行木:まずは電話でお問い合わせいただき、撮影の内容や使いたい場所についてご相談を受けます。「こんな感じのところを探しています」という漠然とした問い合わせから、「ここを撮りたいので紹介してください」という具体的な問い合わせまで、全てフィルム・コミッションで相談をお受けしています。漠然とした問い合わせの場合、スタッフから「こういう場所はいかがですか」と提案することもありますね。撮影保険に入っていることが前提なので、個人的な自主制作や学生の制作は原則お断りしています。

--1日に何件ほど問い合わせがあるのでしょうか。
大森:多い日と少ない日がありますが、平均すると10件ほどですね。お問い合わせが一番多いのは、桜の時期の取材です。隅田公園で1日10件の撮影を行うこともあります。
※いただいた資料によると、2012年度の受付件数は1236件、そのうち支援実績は359件。4名のスタッフでこなすには相当な量だということが分かります。

--1件1件、時間がかかるんですか。
大森:そうですね、海外のコーディネーターや通訳を介しての問い合わせも、最近とても多く、浅草寺やアメ横など色々な所を取材したいという希望が多いので、海外関係のものはやり取りが比較的長くなります。

「桜の時期は、ニュース番組やワイドショーの取材がいっぺんにきます」(大森さん)
「桜の時期は、ニュース番組やワイドショーの取材がいっぺんにきます」(大森さん)

--ロケ地が決まるまでの流れについて教えてください。
大森:まず場所の選定を行い、次に所有者の方や警察などと打ち合わせを重ね、全ての許可を得て、撮影する体制が万全に整った状態が、「ロケ地が決まる」ということです。体制が整ったら、撮影当日、事前に相談した条件通りに動いていただいているか確認しに行きます。ロケ地が決まるまでが一番忙しいところですね。

--日程や場所について、周囲の方にお知らせする際に注意すべき点は何でしょうか。
大森:例えば、商店街や道などではご通行の方にご迷惑をかけないことが第一になりますので、撮影者に事前に指導をしてトラブルがないようにするのが大事な仕事ですね。
古山:映像製作者の方のサポートを行うのはもちろんですが、台東区にとって良きもの、街の方にメリットがあるもの、というのが事業の大前提です。

--区民の方との関わりについてお伺いします。ロケ地が決まり、許可を得るまでにはどのようなやりとりが行われるのでしょうか。
大森:お店や商店街などで撮影したいという希望を受けたら、所有者の方に説明をして了承を得ます。フィルム・コミッションから直接お知らせに行く場合もありますが、物理的に全てには行けません。また、当人同士の方が交渉がスムーズに行く場合もあるので、総合的に見て同行するか判断します。
「台東区にとって良きものというのが大前提です!」(古山さん)
「台東区にとって良きものというのが大前提です!」(古山さん)

--許可を得るときに気をつけていることはありますか。
古山:コミュ二ケーションの基本として、まずは挨拶を大事にしています。
大森:浅草界隈の商店街などは特に取材が多いので、口頭ではなく、要点をわかりやすく簡潔にまとめた撮影予定表などを関係各所すべてにをお渡しするように指導しています。なので、あとで何回も撮影内容を変更されたりすると困ってしまいますね。

--台東区フィルム・コミッションのお仕事でやりがいを感じる瞬間を教えてください。
行木:やはり、大きな作品に関わることができるのはやりがいを感じる部分です。今年の前半、力を入れて支援していた『あまちゃん』では、私と古山の名前がシナリオに載っているんですよ。それは家族や子どもにも自慢しましたし(笑)、自分が関わったものがテレビや映画に出てくるとすごくやりがいを感じますね。
古山:映画やテレビで、商店街や台東区フィルム・コミッションの名前が出ると、良かったなと思いますね。
大森:マスコミや映像制作会社と街の方との橋渡しというか、「撮影をやってみたい」「取材にきてほしい」という方も多いと思うので、間口を広げていけたらいいかなと思います。
行木:街の人から、「この間うちの(店)映ってたじゃん、ありがとうね」と言われることもあります。それから、私たちの耳に直接入ってはこないですけれども、自分の住んでいる街がテレビや映画に出てきたらテンションが上がりますし、特に子どもたちは、テレビや映画を観ていて近所の街並みが出てきたら喜んでくれると思います。区民の皆さんが、自分の住んでいる台東区に誇りと愛着みたいなものを感じてくれるのではないかと思うので、そこが一番やりがいある部分ですかね。
「映画やテレビで知っている商店街やフィルム・コミッションの名前が出ると嬉しいですね~」 (古山さん)
「映画やテレビで知っている商店街やフィルム・コミッションの名前が出ると嬉しいですね~」
(古山さん)

--逆に、大変だと感じる瞬間はありますか。
大森:撮影は水ものなので、どんなに準備していても予期せぬことが多々起こります。予期せぬことが起きることを常に想定して対処していかなければならないところが大変ですね。
古山:広報をどのように展開していしくかというのも悩みどころです。ホームページでロケ地マップを載せてみたり、区内各所にポスターを貼ったりしていますが、もっと展開の仕方を考えたり、役者さんの肖像権の問題をクリアして画像を取り入れられたりするといいなと思います。

--撮影支援のスタッフを募集する機会などはあるのでしょうか。
行木:撮影サポートのスタッフを募集する予定はありませんが、撮影協力隊という組織を作って街の方に協力してもらっています。町会や商店街など自治体ごとの単位で登録されていて、問い合わせがあった時に一斉メールを送って情報提供してもらえるような仕組みです。例えば、「古い美容院とコインランドリーが隣合わせになっているところを探しています」というメールを流して、「うちにあるよ」ということになれば協力してもらっていますね。
古山:制作サイドの皆さんは困ってお電話されてくることが多いので、時間がないんですよ。区民の方はお仕事をしながらボランティアで協力してくださっているので、時間がないなかでピッタリの場所を見つけ出すのは難しいところがあり、どのように仕組みを作って活用していくかが課題です。

--今後の活動予定や、「こういうことができたら」という展望があれば教えてください。
行木:『あまちゃん』のように、舞台設定そのものが台東区だとインパクトが全然違ってくるんですね。細かな努力を行っているので、今後も『あまちゃん』のような作品が増えてくれれば嬉しいです。
「今後もぜひ台東区で撮影を行ってください!」(皆さん)
「今後もぜひ台東区で撮影を行ってください!」(皆さん)

(写真撮影:塩田亮吾)

この記事を書いた人/提供メディア

Yui Sato

東東京のニュースタイルカルチャー研究員。下町の伝統と今風の文化をミックスした作品・商品や、それらを作り出す人々に強く惹かれます。 初めての1人暮らしの地・森下に住み始めて4年。東東京は、深く関わるほど味わい深く、愛着を感じるエリアだと実感する日々を送っています。ふだん書いているのは、ミニシアター系映画の紹介など。夢は、ミニシアターのない東東京で、定期的に映画の上映会を開催すること!

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