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2014.03.20 (Thu)

浅草花柳界Vol.3 日本唯一浅草の「幇間(ほうかん)」さん達が日本全国のお座敷の”間”を助けに赴きます!

今まで2回お届けした浅草花柳界のご紹介に引き続き、今回は女芸者さんと共に江戸時代から代々続く職業「幇間(ほうかん)」さんに迫ってみました。実は日本で唯一残っている「幇間」さん達が浅草で活動しているのです。その貴重な存在を大切に育て、見守る師匠である桜川米七(さくらがわよねしち)さんにお話を伺ってきました。

幇間の師匠 桜川米七(さくらがわよねしち)さんとお弟子さん 桜川七太郎(さくらがわしちたろう)さんが浅草見番にて真剣稽古中。
幇間の師匠 桜川米七(さくらがわよねしち)さん(右)とお弟子さん 桜川七太郎(さくらがわしちたろう)さん(左)、浅草見番にて真剣稽古中。

「幇間」さんてどんな仕事?

「幇間」という職業、ご存知でしょうか?辞書で見ると、”幇” ‐ わきから助ける・”間” ‐ 字のごとく。文字通り「幇間」さんは宴会のお座敷で”間”を助けるのです。また「太鼓持ち(たいこもち)」、「男芸者」、「太夫衆」という別名で呼ばれることもあります。では具体的にどういうことをするのでしょうか?

女芸者さんと同様に浅草見番に籍を置き、女芸者さんと共にお座敷の宴会へ出向き、持ち芸とお客さんとの会話で”間”を盛り上げます。「幇間」さんは基本一人で女芸者さん達とお座敷に出ます。ですので、お客さんによって即興で出し物の芸の品目を決めます。かなり機転が利かなければいけない仕事です。また桜川米七さんは笑いを誘うと同時に、品の良い芸を披露することを心がけているそうです。

日本で初の女性の「幇間」桜川七太郎(さくらがわしちたろう)さんは今やデビューして3年。舞台芸の合間にお客さんとの会話を盛り上げます。
日本で初の女性の「幇間」桜川七太郎(さくらがわしちたろう)さん(一番右)はデビューして3年。舞台芸の合間にお客さんとの会話を盛り上げます。

前回浅草見番での架空の料亭「悠游亭(ゆうゆうてい)」にお邪魔して女芸者さん・「幇間」さんのお仕事現場を見ることができましたが、「幇間」さんはお座敷芸でお客の笑いを誘い、また舞台の合間にはお客の隣に座って会話を盛り上げます。

浅草見番での架空の料亭「悠游亭(ゆうゆうてい)」にて桜川七助さんの屏風芸。屏風の向こう側にあたかも誰かがいるかのようにふるまいます。
浅草見番での架空の料亭「悠游亭(ゆうゆうてい)」にて桜川七助さんの屏風芸。
屏風の向こう側にあたかも誰かがいるかのようにふるまいます。

お座敷芸は、江戸時代から代々引き継がれたものが多いそうですが、新しい芸も自分で作ることもできます。代表的な出し物は”屏風芸”(屏風の向こう側にあたかも誰かがいるかのようにふるまいます)・”かっぽれ”(ゆかたとステテコに手ぬぐいを顔に巻く出で立ちでの踊り)など、観客の笑いを誘うように趣向が凝らしてあります。

師匠 桜川米七(さくらがわよねしち)さんのおばあさんの芸。このなんともいえない”しな”!さすがです。
師匠 桜川米七(さくらがわよねしち)さんのおばあさんの芸。
このなんともいえない”しな”!さすがです。
浅草見番での架空の料亭「悠游亭(ゆうゆうてい)」にて。

舞台で芸を披露した後、座敷に下りてきてお客さんの会話を盛り上げます。お客さんから”おもしろいかったです”と感想を言われたことを受け、桜川米七さんの返しは”芸はまだまだ未熟で、ただハンサムなだけです”、また”写真とってもいいですか?”と聞かれ、”500枚までならね”と切り返し。こんな具合に場が笑いで和みます。

若い「幇間」さんが加わってこれからの活躍が楽しみ!

日本で最後に残った「幇間」さんは浅草に現在5人のみ。この5人が日本全国のお座敷の”間”を助けに赴きます。

しかし五月のお祭りのシーズン後には今修行中の2人がデビューして合計7人になります。このうち1人はずっと長唄を習っていて、中学3年生の時から「幇間」の弟子入り希望に桜川米七さんのもとを訪れ、高校卒業まで待ってやっと仲間入りしたというやる気満々の若手です。

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幇間の師匠 桜川米七(さくらがわよねしち)さんとお弟子さん 桜川七太郎(さくらがわしちたろう)さん。浅草見番にて真剣稽古中。

また日本で初の女性の「幇間」桜川七太郎(さくらがわしちたろう)さんは今やデビューして3年。最初は女性ということで浅草見番では認めてもらえなかったそうですが、本人の芸への真剣さが伝わりました。もともと”かっぽれ道場”で団体で”かっぽれ”を踊っていて、そこのお師匠さんを通じて初めて「幇間」という仕事を知ったそうです。

幇間の師匠 桜川米七(さくらがわよねしち)さんとお弟子さん 桜川七太郎(さくらがわしちたろう)さんが浅草見番にて真剣稽古中。
幇間の師匠 桜川米七(さくらがわよねしち)さん(左)とお弟子さん 桜川七太郎(さくらがわしちたろう)さん(右)。浅草見番にて真剣稽古中。

お弟子さんたちはお師匠さんの芸を見てまねして、アドバイスをもらいながら覚えていくそうです。修行には2、3年、デビューして収入を得られるまでさらに数年かかります。長い道のりですが、中には40歳で弟子入りした桜川七好(さくわがわしちこう)さんもいらっしゃいます。やる気があって、落語、芝居、踊りが好きであれば弟子入りできるのだそうです。

基本一人で仕事に向かう幇間さん達がめずらしく5人中4人そろいました。 左より桜川七好さん・桜川玉八さん・桜川米七さん・桜川七太郎さん。浅草見番にて。
基本一人で仕事に向かう幇間さん達がめずらしく5人中4人そろいました。
左より桜川七好さん・桜川玉八さん・桜川米七さん・桜川七太郎さん。浅草見番にて。

桜川米七さんはこの「幇間」という職業を絶やさず、日本に残していきたいと、お弟子さん達の育成に真剣に取り組んでいます。また、一般の人に向けて、毎週火曜日には浅草見番でお弟子さんも参加する「幇間芸」の稽古を行っています。男女・年齢不問。ゆかたセット・足袋・手ぬぐい・ステテコ、参加費1回2500円さえ持参すれば誰でも参加できます。(詳細は以下参照)江戸時代からの宴会芸のお稽古、浅草でしか経験できないチャンスです。ゆかた・足袋・手ぬぐい・ステテコなんて粋ですねー。

さて、4月27日(日)には浅草幇間さんたちが全員勢ぞろいする舞台「浅草幇間大競演」が浅草の一流老舗浅草田甫草津亭で開催されます。芸者さんたちと共にその昔吉原のお座敷で行われていた小芝居が再現されるそうです。貴重な江戸時代の吉原のおもてなしの体験、いかがですか?

この記事を書いた人/提供メディア

Kumiko

独自性研究員。 独自のアイデアで、”考える”機会を与えてくれるものに惹かれます。 また、時間の動きに興味があり、今流行っているものよりも、その先: 時間を先に引っぱっている事や人、または、それ以前: 時間が刻まれた物をいつも探しています。東東京にはこれらの要素がいっぱいで飽きることがありません。

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