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2014.11.14 (Fri)

space dike「様々なジャンルの展示がつなぐ、アートと人と建物」〈建築/コミュニティスペースVol.2後編〉

こんにちは! 空き家&空き店舗活用研究員のChiho Takitaです。

Vol.2では三ノ輪にセルフリノベーションでオルタナティブスペース「space dike(スペース・ダイク)」を立ち上げた写真家の畔柳さんにインタビュー。

後編ではセルフリノベーションの詳細と古いビルを借りる際に気付かなかった盲点、今後の展望について伺います。

半年のつもりが2年経ってもリノベが終わらない!?

そして2012年7月、三ノ輪の町工場だったビルに引っ越してきました。幸い3階以上の住居部分は、以前の大家さんがリノベーションしておいてくれたため、リノベーションが必要なのは1~2階部分でした。セルフリノベーション初心者と言えど「半年もやればなんとかなるかな?」と思っていたそうなのですが…

「仕事のお休みを利用して作業を始めたんですが、長年放置された建物内は壁も天井もびっしりとホコリを被った状態でした。いたるところに石綿のようなモワモワの断熱材(調べてもらったらアスベストは含まれていませんでした)がこびりついていて、真っ黒になっていました。『これは見た目にも汚いし、なんとかしないと』とコンプレッサーを買ってきて吹き付けたものの、加減がわからずホコリがたってしまってうまく取れないんです、全然。最終的には水で薄めたペンキでほこりを塗り固めながらペイントしていきました。天井を塗るときは首も肩も痛くなってしまって、本当に大変でしたね」

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【写真:引っ越してきた直後の1階の様子。全体に黒く暗い空間で、壁や天井に古い電気配線配管が張りめぐらされているのがわかる】

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【写真:現在の1階の様子。右側の壁は配管を撤去して、一枚一枚建てられたもの。木材を組み、ベニヤを貼っていった】

—-今は壁も天井も真っ白なので、当時の写真と見比べると、その大変さが伝わってきますね…。ほかに大変だったところはありますか?

「壁や天井に古い電気の配管がたくさん残っていて、それがあると展示用の壁を作るのにとても邪魔になるんです。でも電気工事もけっこうお金がかかるので躊躇していたら、たまたまペンキ塗りを手伝いに来てくれた友だちが『電気工事の資格持ってるからできるよ』って」

途方に暮れる作業量に「とにかく1階だけでも進めよう」と決意

—-これでやっと壁を作ることができるようになったんですね。

「そうですね。電気の配管をとにかく外して、次は壁の作り方をいろいろ調べて考えて。そうしたら高校生向けの、大道具『かきわり』の作り方の教科書が見つかって、シンプルな壁の作り方を知ることができました。それからはホームセンターで角材とベニヤ板を買って来てひたすら壁を作っていく日々でしたね。丸ノコも買って作業していたら『そうだ、僕は建築学科卒業したんだった!』と思い出しました(笑)。とにかく作業量が多すぎて疲弊してしまうので 『とにかくいろいろなところを白く塗ろう、1階だけでも、できた感があるペンキ塗りをから終わらせよう』と考えました」

作業をする際にはツイッターで告知し、ペンキ塗りが次第にイベント化していきました。以前からお世話になっていた人から「出来上がったら映画の上映会がしたい」という話しがあったので、2014年2月にプレオープンと決めて、いよいよ1階のスペースがオープンしたのです。ところが古い建物だけに思わぬ盲点もあったといいます。

「工場用の物件だったので、200ボルトの動力電源が入っていて、水道のポンプがこの動力を利用しているので使わざるをえないんです。光熱費は今までよりアップしましたね。通常の電気も100アンペアあるのにもかかわらず、部屋によって振り分けが違ってリビングはすぐブレーカーが落ちてしまったり。 設備も古いので維持費が思ったよりかかるのも、集合住宅にはない盲点でしたね」

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【写真:階段のてすりは階ごとに異なる色にペイント。壁には畔柳さんの写真が飾ってあった】

—-セルフリノベーションをする中で感じたことはありますか?

「例えば壁の作り方がわからないとか、必要な道具は何で、それはどこで買えるかなど、ゼロからすべて調べないと行けなかったことですね。一度経験した人なら知識はあるはずなので、そうした相談ができたり、道具を貸してくれる機関やグループなどがあればいいですね」

これはセルフリノベーションしたことがある人なら、きっと実感できるはず。壁を立てるために、セルフリノベした人のところへ聞きに行ったり、 YouTubeで調べた人は多いでしょう。それに、最初はいらないと思っていても、効率的に作業を進めるには、木材を切る丸ノコほか、電動ドリル、サンダーなどは必須アイテムです。ただし終わってしまえばしまうスペースにも苦労する代物。こうしたことを相談できしたり、貸し出ししてくれる機関があったら うれしいですね、本当に!

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【写真:現在の2階の様子。奥にある小部屋は、クレーンなどの操作室。現在は物置として使っている。今後は厨房スペースを配して、コーヒーやお菓子を楽しめるサロンにする予定】

活動を続けるのがメインで場所にはこだわらない。将来ココを借りてくれる人がいれば

—-今後のspace dikeについてのビジョンはありますか?

「みんなの作ったフォトブックなどの作品や音楽CDなどを売れるようなスペースがほしいですね。ここにくればこんなものが手に入るんだ、という。また以前のギャラリーでも食べ物を囲んで作られる時間とスペースが面白いと思っていたので、2階はコーヒーや軽食を出せるスペースにしたいと思っています」

意外だったのは、畔柳さんご夫妻が苦労して育ててきた“この建物”に執着をしていないということ。

「借りているものなので、いつかは離れることもあると思います。いまはココを楽しむけれどもココじゃなくても続けられる、場所を選ばずに活動できるようにしておきたいです。そのための準備期間でもあると思っています。だから、ココを訪れる人たちに部屋に上がってもらって、屋上を見せたりして、僕達がココを離れた後に借りたいと言ってくれる人がいたらいいなと考えているんです」
大家さん、畔柳さんの手によって作られてきたspace dike。少しずつ出来上がっていく空間を見たら、「大変かもしれないけどやってみたい!」と思うかもしれませんよ。

詳細情報

名称space dike(スペース・ダイク)
住所東京都台東区日本堤2-18-4
URL

http://spacedike.blogspot.jp/

その他

この記事を書いた人/提供メディア

Chiho Takita

空き家&空き店舗活用研究員。普段はマネー誌のライターだが、地域に根ざした暮らしと仕事をしたいと思い、東東京マガジンライターに。浅草~向島界隈を中心に街歩きをしていたところ、空き家&空き店舗を再生して図書館やギャラリー、カフェ、イベントスペースに活用している事例を知り、これらの取材をするように。浅草在住。

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