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2014.11.24 (Mon)

やりたい仕事がないから、惚れた建物に自分で作った!古物商店東京蛍堂 <建築/コミュニティスペース Vol.4 前編>

【写真:「東京蛍堂」の入り口を、オーナー稲本さんが植えたもみじが演出】

東東京では、既存の建築物を改装して、シェアアトリエ、ゲストハウス、カフェ、ギャラリー、店舗などとして起業する人がますます増えています。

その建築物を、仕事を可能にする”スペース”という位置づけで使っている人もいれば、建築物の”外観・内観、すべてのキャラクター”を大切な仕事環境としている人もいます。今回はその後者である「東京蛍堂」オーナーの稲本淳一郎さんと、奥さんの陽子さんの、建築物へのこだわりと共に、仕事へのとどまるところのない熱い思いをお届けします。

hotarudo-03【写真:東京蛍堂への路地の入口はタイムトリップの始まり】

昭和前半まで東京中心の繁華街であった浅草六区。その真ん中にある路地をフッと曲がると…誰でももれなく当時へタイムスリップ。そんな場所が古物商店「東京蛍堂」。

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オレンジ色の暖かい明かり、磨かれた焦茶色の木造ドア枠・窓枠、漆喰の壁に囲まれた商品は、古物の着物・服・靴・アクセサリー・食器・蓄音機・本・白黒写真などなど、とてもここには書ききれる種類ではありません。しかも、これらの商品すべてを触って、試してみるように、張り紙がしてあります。

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この建物の前身”野口食堂”に呼ばれた

「東京蛍堂」オーナーの稲本さんは、私の今まで出会ったさまざまな人々の中でも、指折りのエキセントリックな芸術家。このお店にたどり着くまでの話、現在、そして将来について、水が湧き出るがごとく、とぎれなく言葉が流れ続け、倉庫になっている2階と3階、また屋上まで案内して頂き、浅草のど真ん中のワンダーランドに行ってきた気分になったのでした。

hotarudo-07【写真:東京蛍堂の屋上で。「ここ一体だけが、ポツンと焼け残ったんです。共同体っていう気がします。」と言う稲本さん。】

今回の建築という視点からの取材の趣旨を説明すると、すぐに「最初にこの建物を全部案内しますよ」と言いながら、稲本さんはどんどん木造の急な階段を2階へ上がっていきます。そこは倉庫として大量の古物が置いてあるのですが、木の窓枠、ドア、畳はすべて当時のままなのが見えます。そしてなんと、壁には木造の簡易ベッドがいくつか付いています。「初めのうちは、ここで寝てたんですよ」。

実はこれがこの建物の前身である”野口食堂”を物語っていて、昔そこにあった大きな食堂の従業員の宿舎だったのです。現在は区切られていますが、その両側が食堂でした。「このベッドのデザインから見て、ここは1950年位にリフォームされたようで、当時儲かるからと、あちこち建て増しされたみたいです」と言う稲本さんからは、この建物への愛着が滲み出ています。

hotarudo-14【写真:稲本さんの頭上に落ちてきた、東京蛍堂の前身である”野口食堂”の当時の写真はお店に飾られています】

—— どうやってこの物件に辿り着いたんですか?

稲本さん:家賃・地理的位置など、自分の希望条件を全部書いたチラシを5年間配り歩いて、惚れる物件を探したんです。最初は神楽坂で決まりかけたんですが、最後にダメになって。結婚と不動産は追いかけるなって言うから、きっぱりと諦めてから、またいろいろ探した結果、最後に出会ったのがここだったんです。不動産屋さんも怖がって入りたがらないような物件で、自分が先に入ったら、頭の上から”野口食堂”の写真が落ちてきたんです。

—— うわっ!

なりふり構わず、すべて自分で掃除と改装

稲本さん:もうこれは呼ばれたなと思って、即決しました。お祓いをしてもらってから、ここに住みながら、もうひげも伸ばしたまま、なりふり構わず、ひとりで掃除と改装、何もかもやりました。最初は1階の使えるスペースで古物のお店と、カフェをやりながら、改装を進めました。

hotarudo-17【写真:東京蛍堂の店内は、不思議に入り組んでいる。ここは地下。】

—— その形でお店がオープンしたのはいつですか?

稲本さん:2008年2月ですね。

—— 6年半で随分成長したんですね。毎回ここに来るたびに、お店の内装や、品物が変わっているのに気が付きます。

hotarudo-45【写真:仕事も生活も恋も、すべてが楽しいという稲本さん夫婦。陽子さん(左)と淳一郎さん(右)】

稲本さん:今でも少しずつ、すべて自分たちの手で内装、改装してます。そこの漆喰の壁も、ここの階段の煉瓦も。漆喰や煉瓦は湿気を防ぐことができるんです。

陽子さん:夜中3時まででも、全部自分たちの手でやるんですよ。

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稲本さん:この換気扇も、プラスチックの見た目が嫌なので、黒に塗りました。ほら、ここのカウンター、解体されているたばこ屋さんの前をたまたま通りかかって、奥さんが「あれ!」と見つけて、壊される直前にもらってきたんです。この床は、壊される麻雀屋の床を剥がして貰ってきました。

——— 稲本さんと陽子さんの改装の話は、こうして楽しく延々と続いたのでした ———

hotarudo-32【写真:たばこ屋さんのカウンターが、今は東京蛍堂のカウンター。】

やりたい仕事がないなら、自分で作る!

—— このお店のアイディアはいつ、どこで、どのように思いついたのですか?

稲本さん:実はこの前に30もの違う仕事をしていたんです。そのときの上司にわかってもらえな悔しさや、「こんな大人になりたくない!」と云う気持が、「こんなことをしたい!」になって、自分が好きな仕事がないなら、自分で作ると決めたんです。そこでやりたいことをレシートの裏に書いて、メモして箱に貯めるようになりました。これが弓をグーッと引くイメージで、あとは放つのみという状態までになったんです。

出会う仲間も重要で、恋人から教わる事があったり、また”日本人とは!?やりたい仕事は?”について夜通し、上野から高円寺まで散歩しながら話し合ったりしました。

* * *

稲本さんの建物への愛とエネルギー、伝わってきたのではないでしょうか? では、稲本さんがグーッと引いた弓がどのように放たれたかは、次回後編からお届することにします。

詳細情報

名称古物商店 東京蛍堂 
住所東京都台東区浅草1-41-8
URL

http://tokyohotarudo.com/

その他営業時間:
水〜日(祝日は営業)
11:00〜20:00

定休日:月・火

この記事を書いた人/提供メディア

Kumiko

独自性研究員。
独自のアイデアで、”考える”機会を与えてくれるものに惹かれます。
また、時間の動きに興味があり、今流行っているものよりも、その先: 時間を先に引っぱっている事や人、または、それ以前: 時間が刻まれた物をいつも探しています。東東京にはこれらの要素がいっぱいで飽きることがありません。

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