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2014.03.24 (Mon)

空き家&空き店舗で暮らす、遊ぶ! Vol.1:改装はワークショップで。鳩の街の私設図書館ー「こすみ図書」@向島

最近ヒガシ東京をはじめ各地で、空き家や空き店舗を再生する動きが出てきています。長い間空き家にしている家や店舗ならば、大家さんはあまり収益を追求しなかったり、考え方が寛容なことがあり、家賃が安く抑えられたり、好きなような改装しても大丈夫というケースがあるのだそうです。では実際にはどうやって探せばいいのでしょうか。

今回は、「空き家&空き店舗で暮らす、遊ぶ! 」第一弾。墨田区にある店舗兼自宅を改装した私設図書館をご紹介します。

かつてお茶屋さんだった店舗を改装した「こすみ図書」。
かつてお茶屋さんだった店舗を改装した「こすみ図書」。

昭和レトロな雰囲気漂う向島はアート色が色濃い街

場所は墨田区・向島。スカイツリーを望む鳩の街通り商店街は、吉行淳之介の小説「原色の街」、永井荷風の戯曲「渡り鳥いつかへる」の舞台として知られる、かつて遊郭だった街。東京大空襲をまぬがれたこの街は、車が通りぬけできないような小道がいくつも張り巡らされ、どこか懐かしい昭和レトロな雰囲気が漂います。

レトロな店舗が狭い路地に建ち並ぶ、鳩の街商店街。
レトロな店舗が狭い路地に建ち並ぶ、鳩の街商店街。

街には戦前から残る井戸水が数か所点在する。
街には戦前から残る井戸水が数か所点在する。

まるで映画「三丁目の夕日」の中の風景のよう! その半面、どこの商店街も抱える問題なのでしょうが、高齢化により廃業したりと、空き店舗がちらほらと目立つ状況でした。そんな中、約15年間空き家だった店舗兼住宅を改装し、私設図書館として2010年にオープンしたのが「こすみ図書」です。

住宅の一部を図書館として開放できるスペースを探して

鳩の街通り商店街には、同じく空き店舗を改装したカフェ「こぐまカフェ」があったりと、空き家や空き店舗を改装して地域に開放したアートイベントを開催したり、カフェや雑貨店として利用しているケースが増えています。では、「こすみ図書」ではどのように改装・運営を進めていったのでしょうか。

「私はもともと大学で美術を勉強していて、地域に関わったアートプロジェクトなどをしていました。でも、就職してからこうした活動をすることができなくなっていて。次第にイベントなどが行えるスペースを持ちたいと思うようになったんです」と、昆野純子さんは言います。

「こすみ図書」の昆野純子さん。「ギャラリーになったり食事会をしたり、いろいろなイベントをしています」。
「こすみ図書」の昆野純子さん。「ギャラリーになったり食事会をしたり、いろいろなイベントをしています」。

「本が好きだったので一部を図書館にして、あとはイベントを行うようにしようと。でもそうしたスペースを自宅と別に作るのは予算的に大変なので、自宅の一部を改装してそういったスペースとして利用できる物件を探しはじめたんです」

「こすみ図書」にはいろいろな本が並んでいる。まるで友達の家に来たみたいにくつろげる。
「こすみ図書」にはいろいろな本が並んでいる。まるで友達の家に来たみたいにくつろげる。

普段はあまり触れることのない、小さな街の物語を集めた「墨東文庫」。この本を片手に街歩きをすると楽しそう♪こすみ図書で無料配布している。
普段はあまり触れることのない、小さな街の物語を集めた「墨東文庫」。この本を片手に街歩きをすると楽しそう♪こすみ図書で無料配布している。

大家さんと直接交渉し、改装OK、家賃は月5万円に

千葉に住んでいた昆野さんが向島に興味を持ったのは、この界隈でアートプロジェクトを行いながら移り住む人が増えているのを知ったから。

「『墨東まち見世』といって、この辺りのエリアを中心に東京都などで開催していた地域アートプロジェクトがあったんです。それにボランティアで参加して話をしてみたら、ここに住んでアーチスト活動しているという人が多かったんです。イベントを通じて知り合いも増えてきたので、ここで何かをしてみたいという想いが強くなりましたね」

街歩きをしていていた昆野さんの友達が見つけてくれたのが、もともとはお茶屋さんだったこの店舗兼住宅でした。長い間空き家だったものの、一時期お店が入っていたこともあり、大家さんは賃貸に出す気が全然ないわけでもないらしい…、ガラス戸の間口が広くて、面白く使えそう…。そんな希望を持って、商店街の会長さんを通じて大家さんに直接交渉。改装して、住みながら図書館としても開放したい。時々イベントを行いたいと説明したと言います。

「改装もOKをもらい、家賃は5万円で了解をもらいました。不動産屋さんを通さなかったので、私が見よう見まねで不動産契約書を作り、親の印鑑証明書を提出して、ようやく借りることになりました」

ガラス戸なので、街に開けた空間になっている。
ガラス戸なので、街に開けた空間になっている。

改装自体をイベント化して総費用を50万円の低予算に

1階の土間部分と1部屋を図書館兼イベントスペースに、奥のキッチンと2階の部屋を自宅として使っています。改装は基本的に手作り。まずは自宅部分から行い、天井が朽ちているところは板を張り、ペンキを塗ったり、お風呂がなかったのでシャワーブースを設置するなどしました。これは仲間の手を借りての作業に。図書館兼イベントスペースは、改装自体をイベント化することにしました。

「『墨東まち見世2010』のイベントに参加して、空き店舗を改装するワークショップを開催しました。土間の一部にステージのような一段高くなったスペースをつくったり、図書スペースに壁を張ったり。壁のペンキ塗りだけで1カ月くらいかかりましたね」

壁のペンキ塗りはのべ1カ月くらいかかった(写真/こすみ図書提供)。
壁のペンキ塗りはのべ1カ月くらいかかった。(写真/こすみ図書提供)

棚もペンキ塗り。どんどんお店が出来上がっていく!(写真/こすみ図書提供)
棚もペンキ塗り。どんどんお店が出来上がっていく!(写真/こすみ図書提供)

お店部分はイベントから出た予算15万円で、住居部分を含めると費用はおよそ約50万円で済んだということ。改装自体をイベント化するというアイデア、真似できそうですね!

入口・土間側のスペースは展示品を並べるギャラリースペース。壁は改装時に参加者で塗ったもの。
入口・土間側のスペースは展示品を並べるギャラリースペース。壁は改装時に参加者で塗ったもの。

ギャラリースペースの隣は一段高くなっているので、トークなどのときのひな壇として使われている。「ふわゆる上映会」では、右の壁にプロジェクターを設置する。
ギャラリースペースの隣は一段高くなっているので、トークなどのときのステージとして使われている。「ふわゆる上映会」では、右の壁にプロジェクターを設置する。

現在こすみ図書では、「こどもの本の読書会」と「ふわゆる上映会」をそれぞれ2か月に1回のペースで開催しています。そのほか、イベントや展示会をしたいという申し出があれば、イベントを行うようにしています。

「読書会は最近いろいろな場所で行われていますが、児童文学に特化しているものが少ないため、コアなファンが多いですね。上映会ではご飯を食べたり、映画を見てからトークしたり、終電までいろいろ話をしたりしていますね(笑)。イベントの際にはご近所の人がコーヒーを淹れに来てくれたり、覗きにきてくれたりします。こんな感じで街に根付いた活動を、ゆるっとした感じでできると嬉しいですね」

墨東文庫編集室が編集した「墨東文庫」から選んだストーリーで紙芝居をつくり、口演するというワークショップも行われました。

墨東文庫・街頭紙芝居編。紙芝居をつくるワークショップは大好評!!
墨東文庫・街頭紙芝居編。紙芝居をつくるワークショップは大好評!!

紙芝居をつくるワークショップでは、紙芝居師の方に教えてもらいながら(本格的!)、みんなでつくっていった。
紙芝居をつくるワークショップでは、紙芝居師の方に教えてもらいながら(本格的!)、みんなでつくっていった。

紙芝居の絵もみんなでわいわい作成。個性的な作品に仕上がった。
紙芝居の絵もみんなでわいわい作成。個性的な作品に仕上がった。

そのほかにも、タイ人と一緒にタイ料理をつくって食べたり、チョコレートの食べ比べなど、一風変わったイベントを開催してきています。

街に開かれたスペースでイベントに参加してみたい人、またイベントを開いてみたい人は、一度「こすみ図書」さんを訪れてみては?

詳細情報

名称こすみ図書
住所東京都墨田区向島5-48-4
URL

http://kosumitosyo.blogspot.jp/

その他開館情報:
基本的に土日祝13:00-18:00オープン。twitter @kosumitosyo で確認を

Facebook:
https://www.facebook.com/kosumitosyo

この記事を書いた人/提供メディア

Chiho Takita

空き家&空き店舗活用研究員。普段はマネー誌のライターだが、地域に根ざした暮らしと仕事をしたいと思い、東東京マガジンライターに。浅草~向島界隈を中心に街歩きをしていたところ、空き家&空き店舗を再生して図書館やギャラリー、カフェ、イベントスペースに活用している事例を知り、これらの取材をするように。浅草在住。

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