2015.11.30 (Mon)
日本最古の遊園地に妖怪たちが大集結!お菓子をよこさにゃ、あやかすぞ!「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」<後編>
ハロウィンの夜、閉園した浅草花やしきには、続々と異形の者たちが集まってきます。妖かし(あやかし=妖怪)たちは夜の遊園地でどんちゃん騒ぎ! 人間は足を踏み入れることすらできない「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」が10月31日に開催されました
<後編>の記事では、「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」本番ともいえる夜の部の模様を紹介します。また、東東京で妖怪イベントを主催する「妖店百貨展(ようみせひゃっかてん)」の海津智子さんへのインタビューを通して、浅草花やしきという場所でイベントをする意義を読み解きます。
人間は立ち入り禁止、妖かしだけが楽しめる
日本最古の遊園地・花やしきを妖かしたちが跋扈(ばっこ)するハロウィンの夜。フラワーステージでは、吉原狐社中(よしわらきつねしゃちゅう)の百合之介太夫(ゆりのすけたゆう)と怪人猫面相(ねこめんそう)による儀式が始まりました。
「お菓子をよこさにゃ、あやかすぞ!」という妖かしたちの声。その妖力に呼応して花やしきが動き出しました。メリーゴーランド、ローラーコースター、お化け屋敷も稼働し、妖かしたちが我も我もと乗り込んでいきます。
園内の至るところで、怪しくも魅力的なパフォーマンスが披露されていました。まさに冥界の風景!
「花やしき座」館内では『妖店(ようみせ)マーケット』が開催。昼にも増して妖気漂うマーケットでは、売り子さんたちも妖怪化!
「花やしき座」のステージでは、怪活動弁士・坂本頼光さんの無声映画上映が始まりました。
坂本さんの軽妙なトークに妖かしたちはじっと耳を澄まします。笑いあり涙ありの上映会は妖怪たちをも魅了したのです。
一方、フラワーステージを占拠した猫面相一味は『ようこそ、妖しき花やしき』を披露。
続いて、吉原狐社中による狐舞が行われました。
縁起のいい狐舞が終わると、客席からはたくさんのおひねりが飛んできました。拍手喝采の嵐! この夜集まった妖かしたちにはきっと福が訪れることでしょう。
楽しい一夜はあっという間でした。21時で「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」は終了。妖かしたちは人間の姿に“仮装”し、名残惜しそうに花やしきを後にしたのでした。
花やしきを貸し切った日が偶然ハロウィン!
東東京で数々の妖怪イベントを主催してきた「妖店百貨展」は、妖怪ハロウィンの舞台を浅草花やしきに定めました。「妖店百貨展」の主宰・海津智子さんは「花やしきを借りたのは偶然です」と語ります。
花やしきを貸し切りできるのは知っていたので、何かやりたいなぁ、とは思っていました。昨年浅草で「妖店百貨展」を開催したとき、「次は花やしきでやりたいね」と話が盛り上がったんです。
実際に問い合わせたら、土日で空いているのは(今年の)10月31日くらいしかありませんでした。「じゃあ、その日でお願いします!」って決めました。その後、10月31日に花やしきを借りたことをツイッターでちょろっと流したら、幻さん(=文京区千駄木にある「カフェギャラリー幻(まぼろし)」)に「和のハロウィンですね!」と言われたんです。そこで、ハッとしましたね(笑)。
毎年ハロウィンの日は、別の団体が花やしきを貸し切るそうです。今年はたまたまその団体が予約していなかったため、「妖店百貨展」で花やしきを借りられたといいます。花やしきの貸切案内は、花やしきの公式サイトに記載されていて、夜の時間帯を貸し切ることができます。
昼間は貸切メニューの対象外なのですが、「今回は、ハロウィンということもあって交渉していったら、特別に昼間も借りられました」と海津さん。入園料については、昼の部を通常の入園料と同じ1000円に、アトラクション乗り放題やドリンク代が含まれる夜の部を4000円に設定しました。海津さんは昼間の入園料設定について、次のように考えたといいます。
普通に花やしきへ遊びに来る感覚で、「妖怪がやってくる」って感じになればいいですね。だから、入園料は普段と同じに設定して敷居を下げて、いろんなアトラクションで普通に遊んでもらえるようにしました。お客さんには、花やしきを妖怪の姿で出入りできるという特典に魅力を感じてもらいたいです。
浅草寺周辺を「結界エリア」に
花やしきを会場とした今回のイベント。商店街で開催するのとは違った苦労があったのではないでしょうか? これについて、海津さんは2つの苦労話をしてくれました。
1つめは、設営の時間を確保できないこと。
入り時間からイベント開催まで本当に時間がないので、花やしきをそのまま使わせてもらいました。大きな作り込みはできません。
また、10月31日は、花やしきもハロウィンの飾り付けをします。そのため妖怪イベントなのに、西洋のハロウィンの雰囲気がだいぶ残ってしまいます。カボチャがあちこちに置いてある中を妖かしたちがウロウロ…。良く言えば「和洋折衷」ですが、「和のハロウィン」を前面に出せないのはやはりツライところ。その分、夜の部では雰囲気を出すことに力を入れました。
2つめは、仮装(妖かしたちにとっては、本当の姿を表すこと?)に関するルール。通常の花やしきでは、仮装やコスプレをしたければ事前に申請して許可を得るのが原則です。一方、「浅草花やしきハロウヰン」では、妖かしたちは、許可なく昼間の花やしきを出入りできます。だからこそ、気を付けなければならないことがある、と海津さんは話します。
浅草寺は神聖な場所なので特に気を遣いました。そのため、「妖かし姿のままでウロウロしていい」と許可を得ているところ以外は「結界エリア」として区切っています。警備も強化して、妖かしたちが絶対に浅草寺へ行かないようにしました。
あくまでも仮装のルールを徹底し、その中で楽しめる人だけに足を運んでもらいたいといいます。
「1000人、2000人…と規模を広げ過ぎず、どんなに多くても500人くらいの人数で、皆さんが楽しめるイベントにしていきたいです」と海津さん。一方で、人が増えればトラブルも増えることに対しては、「覚悟を持ってやっています」とのことでした。
人と東東京とをつなぐ
「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」をきっかけにして、いつも花やしきの前を通り過ぎているだけの人たちに花やしきに入ってもらいたいです。そして、「楽しかったから、花やしきにもう一回行ってみよう」と思ってもらいたいです。そういう形で皆さんが東東京へ足を運ぶ機会が増えれば嬉しいですね。
そう話す海津さん。思いは実現したのではないでしょうか?
何を隠そう、私は、「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」の取材で初めて花やしきに入りました。そして、取材を通して、「花やしきに入るのは初めてです」という妖かしさんたちに何人も出会いました。人(妖かし)と東東京とをつなぐイベントの効果は、これからじわじわと広がっていくはずです。
最後に、「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」の魅力を海津さんに話してもらいました。
「本来の姿は妖怪で、みんな本当は人間に化けているだけでしょ?」という世界観を大切にしています。そうした世界観の中でオリジナルの妖怪が300体近く集まれば、夜の遊園地はきっと盛り上がります。花やしきという場所の雰囲気も味わいながら、コミュニケーション中心に楽しんでもらえればうれしいです。
大盛況のうちに幕を閉じた「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」。取材から帰る道すがら、「最高のハロウィンだったね!」という妖かしたちの声を私は耳にしました。そんな妖たちは、今からもう、次のハロウィンに向けて準備を始めています! 来年も、お菓子をよこさにゃ…!?
詳細情報
名称 | ■花やしき |
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住所 | 東京都台東区浅草2−28−1 |
URL | |
その他 | 入園料 ○大人(中学生以上~64歳)1,000円(65歳以上 500円) ○小人(小学6年生以下) 500円(未就学児 入園無料) 交通 つくばエクスプレス「浅草駅」から徒歩3分 東京メトロ銀座線・都営地下鉄浅草線・東武伊勢崎線「浅草駅」から徒歩5分 |