ホーム > コラム > 日本最古の遊園地に妖怪たちが大集結!お菓子をよこさにゃ、あやかすぞ!「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」<前編>

2015.11.18 (Wed)

日本最古の遊園地に妖怪たちが大集結!お菓子をよこさにゃ、あやかすぞ!「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」<前編>

10月31日はハロウィン。街中には西洋のモンスターたちが溢れ、渋谷などは大混乱に見舞われました。一方、台東区浅草にある日本最古の遊園地「花やしき」では、「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」が開催されました。

普段は「人間」として生活している妖かし(あやかし=妖怪)たちが本来の姿を表して集まる「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」。主催は、東東京で活動する「妖店(ようみせ)百貨展」です。イベントを運営する有志のスタッフたち、『妖店マーケット』に出展する妖怪作家たち、妖かし姿で来場したお客さんたちが花やしきを盛り上げました。

<前編>の記事では、人間と妖かしが交流する昼の部の模様を紹介します。また、「妖店百貨展」の主宰・海津智子さんへのインタビューを通して、「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」開催までの道のりにも迫ります。

妖かしと人間が交流する

「お菓子をよこさにゃ、あやかすぞ!」

花やしきの舞台「フラワーステージ」で宣言するのは、怪人猫面相(ねこめんそう)一味と吉原狐社中(よしわらきつねしゃちゅう)の百合之介太夫(ゆりのすけたゆう)。

浅草花やしきハロウヰン妖夜祭

怪人猫面相一味と百合之介太夫(右から2番目)

「あやかすぞ!」※と言いながら次々と現れる妖かしたち。ステージ前を見渡せば、客席にも妖かしたちが座っているではありませんか!

※あやかす=だます。たぶらかす。愚弄する。邪魔する。世話をかける。

「怖いよ~」と泣き出す子どもがいれば、妖かしたちはお菓子をそっと差し出します。お菓子を受け取った子どもは涙をぬぐってニッコリ! ポーズを決めて撮影に応じるサービス精神旺盛な妖かしたちの姿も。花やしきを訪れたお客さんと妖かしたちとの微笑ましいやり取りが、あちこちにありました。

園内ではパフォーマンスが披露され、妖かしたちが練り歩く『花やしき妖かし行列』も行われました。「花やしき座」館内では、妖怪グッズを取りそろえた『妖店マーケット』も開催されました。

浅草花やしきハロウヰン妖夜祭

花やしき妖かし行列

浅草花やしきハロウヰン妖夜祭

妖店マーケット あめ細工吉原

浅草花やしきハロウヰン妖夜祭

妖店マーケット 秋津屋

『妖店マーケット』には、買い物に訪れる妖かしたちもいっぱい! 魅力的な商品の数々を、妖かしも人間もじっくり品定めしていました。

浅草花やしきハロウヰン妖夜祭

日向庵の前で品定めする隅田川の河童・益次郎さん

にぎやかで楽しい「浅草花やしきハロウヰン」は大盛況でした。

台東区と文京区の区境、よみせ通りで始まる

このイベントの主催は「妖店百貨展」。谷中で雑貨店兼ギャラリーの「アートギャルリ谷中ふらここ」を営む海津智子さんが中心となり、営業マンやウェブデザイナー、保育士など、さまざまな本職を持つ有志が集まって運営しています。「妖店」を「ようみせ」と読むことからも分かる通り、台東区谷中と文京区千駄木の区境に位置する「よみせ通り」でのイベントがきっかけとなり生まれました。

2年前、よみせ通り商栄会の青年部は、「魅力ある商店街にするにはどうすればいいんだろう?」と話し合いを重ねていました。その取り組みの一つとして青年部が主催する夏祭りに重ねて、最初のイベントとなった「妖店通り商店街」が開催されました。

海津さんが、当時のことを話してくれました。

うち(=アートギャルリ谷中ふらここ)の2階で、妖毛フェルト作家のnattu;n(なっつん)さんが個展を開いたんです。そのとき、nattu;nさんと「都内で大きな妖怪イベントがあったら面白いよね」という話になりました。「よみせ通りにどうやって人を呼ぶか?」を、私が考えている時期でもありました。そこで「霊園もあり、夏には幽霊画の公開なども開催している谷中は、妖怪が集まるのにはぴったりではないか」という話になり、「よみせ通りに妖怪を呼んでこよう!」となったんです。

浅草花やしきハロウヰン妖夜祭

妖店マーケット 闇鍋カルテット(がま口やストラップがnattu;nさんの作品)

個人的な話から生まれた企画は、nattu;nさんの協力もあっていよいよ実現。2013年8月、「妖店通り商店街」が開催されました。しかし、当時は商店街や地元の方々の理解を得ることは難しく、よみせ通りの一部でのみの開催となりました。「商店街や地元の方々の中には、気持ち悪いとか、怖い人が来るのではないかとか、不安があったんですね」と語る海津さん。

「妖店通り商店街」初開催後、海津さんは「いろいろと懲りて、もういいかな、と半分どこかで思っていた」そうです。しかし、「来年はいつ開催されますか?」「発展性がありそうだから応援していきたい!」というお客さんたちの声に励まされ、次の年も開催することを決意したといいます。

『妖怪ウォッチ』ブームが追い風に

nattu;nさんや他の作家さんの協力もあって、「妖店通り商店街」では、1回目から質の高い妖怪作家さんたちが集まりました。海津さんたち運営側でも、お化け屋敷の人形を借りてくるなど、コンテンツの充実にしっかり投資したそうです。当時の思いを海津さんは語ります。

最初の「妖店通り商店街」では、商店街の一部しか使えませんでした。だから、しょぼくなってしまうのはしかたないのかな、と思いました。でも、お客さんが「次に期待したい」と思うレベルまでやっておかないと次はないぞ、と自分に言い聞かせました。

そんな「妖店通り商店街」に転機が訪れました。『妖怪ウォッチ』のブームです。よみせ通り商栄会の高齢者たちにとって、妖怪は「気持ち悪いもの」から「孫の好きなもの」へと変わりました。このことがきっかけで、妖怪イベントへの協力や参加を商店街や周辺店舗の方々に呼びかけやすくなりました。

妖店通り商店街

2013年以来、毎年夏に開催している「妖店通り商店街」。谷中と千駄木の間の「よみせ通り」に妖怪グッズの出店が並びます

しかし『妖怪ウォッチ』ブームに対しては、海津さんは慎重です。ブームに頼って集客すれば、去った後にはお客さんが一気に減ってしまう──。「人を説得するのにはブームに乗って、やることとしてはブームに乗らない」と説明する海津さん。一時的に盛り上がるのではなく、活動領域をよみせ通りから東東京全体に拡大する方向へと歩み始めました。このときに有志が集まり、活動の核となる「妖店百貨展」が誕生しました。

東東京を舞台に「妖怪」で盛り上がろう!

「妖店百貨展」は、よみせ通りを飛び出して、2015年3月に浅草のヴィンテージビル(詳しくはこちら)でイベントを開催しました。そして、今回の「浅草花やしきハロウヰン」と、浅草を第2の拠点にしている感があります。「場所柄、いずれは外国人観光客の方々にも楽しんでもらえるような仕掛けをしていきたい」と、海津さんの思いは膨らみます。

浅草の3階建て貸しスタジオビルを丸ごと会場にして開催した「妖店百貨店」。フロア毎に趣向を凝らし、カフェや謎解きイベントなども開催

浅草の3階建て貸しスタジオビルを丸ごと会場にして開催した「妖店百貨店」。フロア毎に趣向を凝らし、カフェや謎解きイベントなども開催しました

さて、ここで気になるのが、「妖店百貨展」が浅草に展開した理由です。海津さんは次のように事情を話してくれました。

「妖店百貨展」は、吉原の狐さんたち(=吉原狐社中)と一緒にやっています。そのため、活動エリアとしては東東京、具体的には台東区・文京区・荒川区を中心にしたかったんです。そもそもよみせ通りが台東区と文京区の区境にあって、区の施設の利用や、申請関係が結構ややこしい(笑)。それなら、区境も関係なく、東東京という広いエリアを舞台に「妖怪」でどんどん盛り上がろう、と思いました。

浅草花やしきハロウヰン妖夜祭

吉原狐社中の百合之介太夫

とはいえ「妖店百貨展」は常に手探り状態。「今回で皆にがっかりされて、イベントがつぶれるのではないか?」という不安でひやひやしながらも、「誰もやっていないことをやっていく!」という思いを胸に、新たなイベントに挑戦しています。今回の「浅草花やしきハロウヰン」も試行錯誤の連続だったといいます。

浅草花やしきハロウヰン妖夜祭

「浅草花やしきハロウヰン」に集まった妖かしの皆さん

それでも積み重ねていくしかないんだな、と思います。大きく勝負するときは大きく失敗することと背中合わせ。もちろん、皆さんからお金を頂戴してやっているイベントなので、失敗することは考えないでやっていますけどね。

そう言って海津さんは、笑顔を見せてくれました。

<後編>では、「浅草花やしきハロウヰン妖夜祭」の模様と、浅草花やしきの上手な使い方を紹介します。

詳細情報

名称■花やしき
住所東京都台東区浅草2−28−1
URL

http://www.hanayashiki.net/

その他入園料
○大人(中学生以上~64歳)1,000円(65歳以上 500円)
○小人(小学6年生以下) 500円(未就学児 入園無料)

交通
つくばエクスプレス「浅草駅」から徒歩3分
東京メトロ銀座線・都営地下鉄浅草線・東武伊勢崎線「浅草駅」から徒歩5分

この記事を書いた人/提供メディア

本間 秀明

墨田区・台東区を中心に活動する家庭教師。ライター・(自称)妖怪研究員。「みみずく」という名前で皆さんに親しまれて(?)います。アート、教育、地域情報を軸に、広く文化全般を対象に執筆。まじめに教材作成をする一方、サブカル、アングラ、フェチなどに関連するイベントも取材します。東東京の各所に伝わる妖怪伝承に興味津々で、いつか徹底的に取材したいという野望を抱いています。

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