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2017.01.18 (Wed)

「クリエイターのアイデアは職人の技術でさらに輝く」 町工場シェアオフィスco-lab墨田亀沢が示す“次代の仕事像”

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株式会社ステージアップ代表
有薗 悦克さん

「東東京の職人の技術は世界一。その技術に光を当てられるのはクリエイターだけ」

そう語るのは、町工場がひしめく墨田区・亀沢地区に拠点を構えるシェアオフィス「co-lab墨田亀沢:re-printing(以下、co-lab墨田亀沢)」の運営会社、株式会社ステージアップ代表取締役の有薗悦克さんです。

創業50年を迎えた印刷業を営む株式会社サンコーの3代目であり、「下請脱却」を掲げ、町工場の現状に風穴を開けるべく新分野のシェアオフィス運営に進出した挑戦者でもあります。

今回は有薗さんに、co-lab墨田亀沢が実現するクリエイターや創業者・町工場の仕事創出の取り組みと、クリエイターと職人のコラボレーションが生み出す可能性についてインタビューしました。

印刷工場の近くにクリエイターがいる環境を

── 「co-lab墨田亀沢」とはどんな場所なのでしょうか。

株式会社サンコーの印刷工場の3階にあるクリエイター専用のシェアオフィスで、2015年3月にオープンしました。サンコーは墨田区で創業して50年の印刷会社です。オフセット印刷機やオンデマンド印刷機などのインフラと印刷職人の技術を持っているので、思ったような色が出せないとか、大判の出力をしたい、といったクリエイターの悩みを解決できるのが強みです。

入居者はグラフィックデザイナーやウェブデザイナー、映像作家やシステムエンジニア、地域活性化のために活動している方などがいます。

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── なぜ印刷工場にシェアオフィスを併設しようと思ったのですか?

シェアオフィスの入居者と印刷工場のサンコー、お互いにメリットがあるのではないかと考えたからです。

印刷屋の後継者としてこの会社に入社して、営業をしている中で悔しい思いをしてきました。名刺やパンフレットの印刷などからお客様との関係が始まり、信頼関係を作っていくことでウェブ制作や簡単なデザインなどまでは仕事の領域を広げることはできます。でも、本当に大きい仕事になると、自社のクリエイティブチームでは対応しきれずお仕事を受ける事が出来ないのです。

たとえばどこかの企業が新商品を出すというとき、ブランド構築から販促キャンペーンまで手掛けるような大きなプロジェクトになると、広告代理店さんの仕事になってしまう。そして、印刷会社は、そのプロジェクトで生まれでデザインを印刷する下請けにしかなれないのです。

ちょうど、その頃に印刷工場の3階が空いて、活用策を考えなければならなくなりました。最近、このエリアにはフリーランスのクリエイターが移り住むようになってきていましたので、その人たちと組んで、この場所で何かできないかと考えました。クリエイターの人たちに話を聞いてみたら、紙見本が入手できないなど、「印刷屋難民」だということがわかりました。

そこで、印刷工場と隣接したこの場所をシェアオフィスとして使ってもらい、印刷会社が持つインフラを使って貰いながら、案件ごとにチームを組んだら、お互いにとってメリットを生み出せるのではないか。そう考えてこの場所をオープンさせました。

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クリエイター400人のネットワークを活用

── ブランド名の「co-lab」についても教えてください。

co-labはクリエイター専用のシェアオフィスを2003年から展開しているブランドです。現在、墨田亀沢だけでなく、渋谷や千駄ヶ谷など7つの拠点が稼働しています。構想段階でシェアオフィスを何軒も見に行くなかで、co-labのコンセプトに共感し、私から逆営業をしてライセンス契約を締結しました。ブランドやノウハウの提供を受けています。

co-labは各拠点を合わせると約400人のクリエイターの集合体となっており、そのネットワークを共有しています。私たちは400人のクリエイター集団を持つ印刷屋になったと言えるかと思います。

── co-lab墨田亀沢をはじめて、手応えはどうでしょうか?

開設して2年足らずですが、たくさんのコラボレーションを生み出しています。

たとえば、弊社では企業のウェブサイトや会社案内の製作も手がけていますが、グラフィックデザイナー、ウェブデザイナー、カメラマン、ライターとチームを組んで、プロジェクトを進めています。

またあるとき、名刺のデザインを相談したいという方が訪ねて来ましたが、話を聞いていくうちに、実はご自身のブランディングに悩んでいることがわかりました。そこでco-labのネットワークを活用して、パーソナルブランディングの専門家にコンサルティングを受けてもらい、そこからどんな名刺をつくればよいか検討することにしました。

このように私たちにとっては、今までは自社でこなしきれずに断っていた仕事を、クリエイターとチームを組むことで受けることができるようになりました。また、クリエイター同士のコラボレーションも起きていて、クリエイター1人では受けられない大きな仕事を、何人かでチームを組んで受けるような事例も生まれています。

印刷技術の弱点を逆手に生み出した「オンリーワンの名刺」

── コラボレーションの具体的な一例を教えてください。

入居するデザイン会社からの相談を受けて、世界に1枚だけの名刺を作るプロジェクトに弊社の職人が取り組みました。

通常、印刷する際の最初の200枚はかすれたり、色が安定しないのですが、裏を返せば、そのときにしか出ない色や模様なわけです。その特徴にスポットを当て、デザインや印刷方法、裁断方法を工夫し、互いに検討を重ねた結果、同じデザインが1枚も無い「世界に1枚だけの名刺」を生み出すことができました。

デザイナーのアイデアだけではダメだし、職人の技術だけでもダメ。アイデアを持つ人と、工場で技術を持つ人が出会うと、面白くて新しいものが生まれるのです。

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── クリエイターや創業者に、なにかアドバイスがあれば。

ものづくりの現場である、町工場を訪ねてみることをオススメします。

東東京は印刷以外にも、革製品や金属、プラスチック、化学製品、繊維などいろんな分野の町工場があります。それぞれの分野にかかわる工場に行き、現場に落ちているタネを拾えば、面白いもの、世界で日本にしかできないものができると思います。

かつて高度成長期に工場とデザインが分かれ、分業のシステムが確立しました。大量生産には効率が良いのですが、その方法を見直すべき時に来ているように思います。日本の製造業の職人の技術は、世界でも有数のレベルにあります。その技術にクリエイターが別の視点から光を当てた時に、新しい何かが生まれると思っています。

ただそうは言っても、やみくもに町工場に飛び込んでも、うまくいかない場合が多いです。

私たちには、新しいことにチャレンジしてくれる町工場のネットワークがありますので、クリエイターが思い描くデザインやアイデアを理解し、町工場に「通訳」してつなげられればと思っています。

自分にしかできない仕事を求めている方、「町工場」という資源のある東東京エリアにぜひいらしてください!

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co-lab墨田亀沢:re-printing
クリエイターとクリエイティブワーカー専用のシェアード・コラボレーション・スタジオco-labを運営する春蒔プロジェクトとのライセンス契約により、印刷工場の上階に2015年3月に開設。印刷業などの地場ものづくり産業と、地域のクリエイターをつなぎ、墨田という街にクリエイティブなビジネスと活気を創出する場をめざしている。2016年12月現在20人が入居。印刷コンシェルジュが駐在し、気軽に印刷や各種制作実務に関するプロフェッショナルな相談ができる。
〒130-0014 東京都墨田区亀沢4-21-3
電話:03-6658-5292(平日11:00-12:00、13:00-17:00)
FAX:03-6658-5293
http://co-lab-sumida.jp/

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イッサイガッサイ 東東京モノづくりHUB

Eastside Goodside (イッサイガッサイ) 東東京モノづくりHUBとは「CREATION IN EAST-TOKYO」を合言葉に、モノづくりが盛んな東東京の「ヒト」と「モノ」と「バ」をつなげて創業者をサポートし、東東京をワクワクする地域に変える創業支援ネットワークです。 https://eastside-goodside.tokyo/

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