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2017.01.25 (Wed)

シェアオフィス「ベンチャーステージ上野」から一貫、創業したい人を応援し続ける老舗企業オーナー

(写真:incdesign.inc 鈴木 潤)

(写真:incdesign.inc 鈴木 潤)

メトロ設計株式会社
代表取締役社長 小林 一雄さん

ここ数年、シェアオフィスやコワーキングスペースと呼ばれる空間が増えてきました。それぞれコンセプトは異なりますが、空間をシェアすることで創業へのハードルが低くなり、人とのつながりや新たな業務の展開が生まれやすくなるなど、多くのメリットが挙げられます。そんな利点にいち早く気付き、2004年から自社ビルの空間を生かして創業者支援に乗り出した方がいます。

今回は、入谷の自社ビル内でインキュベーション施設「ベンチャーステージ上野」を運営し、2014年にシェアアトリエ「reboot」、2015年にはイベントスペース「SOOO dramatic!」をオープンした小林一雄さんに、場を持つことでできる創業者支援についてお話を伺いました。

つくりたかったのは、創業者の最初の一歩をサポートできる場所

── 2004年から、インキュベーション施設を始められたきっかけはなんでしたか?

家業を受け継ぐ準備でビジネススクールに通ったのですが、その合宿で同室となった、若山泰親さんとの出会いが一つのきっかけでした。

家業のメトロ設計は、地下鉄の構造物などを設計するコンサルタント会社です。祖父が立ち上げてから、もう半世紀を超えました。先代の時代に現在の入谷の自社ビルを購入して、当時は近所の専門学校に一括して貸していました。ところがその学校が経営難で撤退し、賃料収入が一気にゼロになってしまったのです。1社にまとめて貸すことのリスクを痛感しました。

どうしようかと悩んでいたときに、ベンチャー企業を支援したいという若山さんのことを思い出しました。フロアをブースで区切ったシェアオフィスをつくれば、1区画あたりの賃料を抑え、初期資金が不足しがちなベンチャー企業でも入居しやすくできます。分散して貸すことで、一挙に空室になるようなリスクも減らせます。そこで空いてしまったビルのワンフロアを改修して、若山さんと共同で「ベンチャーステージ上野」を立ち上げたのです。

当初から心がけていたのは「単なるハコ貸しはしない」ということです。入居された方の経営相談に乗ったり、創業者を支援するスクールを始めたりと、スタートアップを応援する体制をソフト面からも整えました。この「台東スタートアップ創業スクール」は3年続いているのですが、その中で生まれた事業案が「全国創業スクール選手権」の初回大賞を受賞するなど、成果を挙げています。

「ベンチャーステージ上野」の共用スペースで開催した、台東スタートアップ創業スクール。ハードとソフトの両面から、創業をバックアップしています

「ベンチャーステージ上野」の共用スペースで開催した、3年目を迎えた「台東スタートアップ創業スクール」の様子。ハードとソフトの両面から、創業をバックアップしています。この日の講師は若山さん

── 現在、自社ビル内には3つのスペースがありますが、どんな特徴があるでしょうか。
マーケットや演劇公演ができる1階のイベントスペース「SOOO dramatic!」は、お客様の生の声に触れ、ニーズを把握できる場になっています。2階のシェアアトリエ「reboot」に入居されている方が利用することもできるので、同じビル内で活動を進化させることができるのは利点だと思います。

2015年にビル1階にオープンした「SOOO dramatic!」は、現代版の公民館として機能

2015年にビル1階にオープンした「SOOO dramatic!」は、現代版の公民館として機能

また4階の「ベンチャーステージ上野」は充実したハード面と長い実績を認められ、東京都認定施設となっています。認定施設では、中小企業振興公社の補助金など、創業を考えている入居者が利用できる支援制度が手厚くなるメリットがあります。

東東京で見つかる、事業の可能性が広がる出会い

── 創業者が事業を成長させるために重要なポイントは何だと思いますか?

まずは、人の意見に耳を傾けること。マーケットで出会ったお客様の声を聴いたり、rebootの入居者ミーティングで交わされた話からアイデアを生み出せたりする人は強いですよね。

2階「はじめるアトリエreboot」のメンバーミーティング。家具デザイナーや革製品制作、音楽プロデュース会社、ウェブデザイナー、和紙の製作まで、多様なメンバーが場を共有しています

2階「はじめるアトリエreboot」のメンバーミーティングの様子。家具デザイナーや革製品製作、音楽プロデュース会社、ウェブデザイナー、劇団や和紙の製造を手掛けるグループまで、多様なメンバーが場を共有しています

もう一つは、自分の不得意分野をサポートしてくれる人を身近に持っておくこと。人のつながりを生かして自分の得意に専念できれば、事業は加速します。

最後は、それを言っちゃおしまいという気もするのですが(笑)、地道に努力することですね。服飾関係で事業拡大し、昨年末にrebootから広いアトリエに移転された方などは、元旦まで休みなくrebootで作業に打ち込んでいたことを覚えています。

── 東東京で創業することのメリットや、可能性についてお聞かせください。

先ほど説明した、人のつながりが豊富なことですね。困ったとき、やりたいことができたときに周囲に相談すると、ぴったりの方を紹介してくれます。下町らしい密なコミュニケーションのおかげかもしれません。

あと、自然と出会った人が面白い。例えば、近所の居酒屋で出会った人と一緒に仕事をしたり、イベントを開いたり……街全体で、不思議で面白いことが起こっていると感じる機会が多く、ふとしたつながりが、事業が広がる可能性になると言えそうです。

創業者を応援できる“場”の力を、空間を持つ人に伝えたい

── 小林さんが東東京エリアで、今後力を入れたいことは何でしょうか。

(写真:incdesign.inc 鈴木 潤)

(写真:incdesign.inc 鈴木 潤)

東東京エリアで場を持っている方の中で、創業支援に携わる人を増やしたいと思っています。私自身、場を開いたことで多くの出会いが生まれ、人生が変わると言っても過言ではない経験をしてきました。

創業意欲のある人、自身の思いを形にしようとする人が、自分に近しい場所に集まってくる。これは、空き家やビルの空室をそのままにしていては得られない環境です。創業者と場所のオーナーが、能力を認め合って仕事をすることだってあります。遊休不動産を保有している方は、創業者が利用できる場所として提供することで、彼らの思いを応援してあげてほしいと思っています。

ソレイユ入谷

ベンチャーステージ上野
入谷駅徒歩1分、上野駅徒歩12分、鶯谷駅徒歩4分という 交通利便と低コストが特徴のレンタルオフィス。起業前から株式公開(IPO)まで見据えた起業支援を手掛けています。
http://vs.incubation-center.com/
03-5827-3011(メトロ設計株式会社)

はじめるアトリエreboot
モノづくりやデザイン、アート、企画をはじめとした創る人のための共同アトリエ。「固定デスク席」や「フリー席」のほか、4.3m2〜6.8m2の専有スペースを持つ「ブース席」から自分にあったスペースを選べます。モノづくりの街、台東区各所への好アクセスも魅力です。
http://www.reboot-iriya.info/
FAX: 03-6231-7612

SOOO dramatic!
ワークショップや演劇などの利用が多いユニークなイベントスペース。「すべての人はクリエイター」という信念のもと、地元の方やサラリーマン、子どもたちの才能を開花させるキッカケの場として、人々をつなぐ現代の公民館的役割を果たしています。
http://sooo-dramatic.com/
電話:03-6231-7619

〒110-0004  東京都台東区下谷1-11-15 ソレイユ入谷ビル

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イッサイガッサイ 東東京モノづくりHUB

Eastside Goodside (イッサイガッサイ) 東東京モノづくりHUBとは「CREATION IN EAST-TOKYO」を合言葉に、モノづくりが盛んな東東京の「ヒト」と「モノ」と「バ」をつなげて創業者をサポートし、東東京をワクワクする地域に変える創業支援ネットワークです。 https://eastside-goodside.tokyo/

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