ホーム > インタビュー > 下町の気っ風とご近所付き合いの紡ぐ先──ヒガシ東京で働くVol.1:デザイン事務所・SOL style(ソル・スタイル)@徒蔵【後編】

2013.12.25 (Wed)

下町の気っ風とご近所付き合いの紡ぐ先──ヒガシ東京で働くVol.1:デザイン事務所・SOL style(ソル・スタイル)@徒蔵【後編】

SOL styleは店舗デザインからグラフィックデザインまで多方面のデザインを「どんなゴールを目指して作り上げていくか」という部分からクライアントと手を取り合って仕上げていくデザイン事務所。ヒガシ東京を舞台にものづくり職人とのコラボレーションも多数手がけているSOL styleのお二人(伊東裕さん、劔持良美さん)に前編では、デザインする上で大切にしていること、職人とのコミュニケーションの取り方などを訊いてきました。

後編では、ヒガシ東京というエリア一帯の特徴やその中で紡がれる人の繋がりについて伺っています。これからヒガシ東京で活動をしたい人にとって耳寄りな内容です。後編もお楽しみください。

前編はこちら「手と手で会話する職人とのものづくり

ものづくりの街「ヒガシ東京」の気っ風

ーーー職人さんって聞くと、取っ付きにくいというか、どうやって話しかけたら良いものかわかりにくいのですが、今までの話を聞いているととてもオープンな雰囲気を感じて、驚きました。

劔持:確かに、結構オープンなのかもしれないですね。

伊東:いろんな人が来ること自体に慣れているからかもしれません。地方で、ものづくりをしている人たちと触れ合うには自分が出向いていかなきゃいけないと思うんですけど、ヒガシ東京のように、これだけ多業種が集まっている地域は珍しいですし、すぐに見に行こうと思えば本当に普通に行けるんです。

劔持:やっぱり、移動し易い距離内にあるからですかね。イベントが多いので、そのときにこっちに来てもらうってことも多いです。

伊東:本当にすごいですよ。バイヤーさんに来てもらえちゃう街なんですから。モノマチであったり、A-ROUNDであったり、ものづくりに関わるイベントが最近増えてきているので、来てもらい易い仕組みがあるんですよ。

ーーーものづくりのプラットフォームになっているんですね。

劔持:昔からの積み重ねがありますし、最近はどんどん新しい、若い面白い方たちも集まってきているし、デザイナーもクリエイターも多いですし。

伊東:モノマチっていうイベントができたこと自体も、きっと、ものづくりを楽しめる街にしていこうっていうことで始まっているんだと思うんですよ。そこから少しずつ、この地域が脚光を浴びていって、専門家だけじゃなく一般的な方にも知れ渡るようになってきた。たくさん人が集まるから、アトリエを構えたりお店を出す人も増えているんです。

劔持:あとこの辺りの「祭の気質」も関係あると思うんですよ。みんな気っ風がいいっていうか、かけ声をみんなでかけるときも「よぉー、(ポン)」みたいな感じで、祭行事とイベントのときは日を外そうとか、そういう重要なものは守っていきながら新しい人を迎える許容もあるというか。

写真:加藤製作所×SOL style「茶筒」
加藤製作所にあるデットストック(在庫品)の茶筒にポップなデザインをあしらった。

まさに「ご近所付き合い」のできるエリア・徒蔵(カチクラ)

ーーー他にはヒガシ東京独特の雰囲気ってありますか?

伊東:あとはどの人もポジティブですね。

ーーーポジティブ?

伊東:会社の将来に対して、とてもポジティブなんですよ。ものづくりをする企業さんって、世界中に売る場合じゃないと、どうしても海外の製品に押されてしまうものだと思うんですね。日本の製品って単価が高いので、難しい部分があったりもします。でも、このエリアの方は「動いていれば何とかなるし、良い物を作って外に出して行こう」って、そう考えているんです。

劔持:「よくなるよ、絶対」「そうだよね」っていう感じで、とても前向きな方が多くいます。

ーーーなるほど。でも、この広いヒガシ東京の中で徒蔵エリアの秋葉原近辺を選んだのは一体なぜですか?

伊東:それは交通の便です。とてもドライな話ですけど、ここ(シェアオフィス「place#001」のある場所)は、徒歩10分圏内に5〜6線が通っているんですね。乗り換え無しでどこにでも行けるから便利なんです。

劔持:ただ、秋葉原のどちら側が好きかって聞かれたら、浅草橋側って答えますね。結構、静かなんですよ、昭和通りを越えたこちら側って。利便性もあるし、良いところなんです。

伊東:それにどこに行くにしても自転車で行けちゃいますし。

劔持:墨田区の職人さんなんて、「今サンプルがあるけど、見る?」って連絡をくれて自転車で15分漕いで届けにくる人もいますよ。

伊東:シェアオフィス「place#001」のオープニングパーティーのときは、こちらが招待したのにパンを持ってきてくれて、切るナイフまで用意していて200人相手に振る舞ってくれた方がいたりもして、本当にご近所付き合いのようにして交流できています。

写真:シェアオフィス「place#001」
シェアオフィス「place#001」。落ち着いた雰囲気とくつろげる環境、ものづくりの街に根ざす拠点として利用できる。

最後に今後の活動についてSOL styleのお二人に聞いたところ、「今、made in 台東区っていうことで、いろんな職人さんとコラボレーションしています。モノマチに出品している茶筒を一緒に作った加藤製作所さんと一緒に、モノマチとは違う缶を作っています。パンフレットに本当に『made in 台東区』って書いてあるんですよ」とか、「塩澤製作所さんとは、東京スカイツリーで売られている鈴のパッケージデザインでご一緒しています。塩澤さんのところの鈴を、ハンドベルに見立てたパッケージで包んで、音を確かめながら買ってもらえるようにしているんです」などなど、次から次へと職人さんとのエピソードが出てきました。

このヒガシ東京を舞台に、お二人が職人さんと本当に深く交流している様子が感じられて、それを見ているだけでこのエリアの魅力、温かさを感じることができました。作り手(デザイナー)と作り手(職人)が自然に手を取り合える地域(ヒガシ東京)で、あなたもものづくりを始めてみてはいかがですか?SOL styleのお二人も、いろんな方とコラボレーションしていきたいと、待ってくれていますよ。

この記事を書いた人/提供メディア

新井 優佑

インタビュアー/ノンフィクションライター。WEBマガジンやオウンドメディアの運用、寄稿をしています。出版社でスポーツ雑誌編集とモバイルサイト運用を担当したのち、独立しました。2014年は、手仕事からデジタルファブリケーションまで、ものづくりの記事を多く作成しました。1983年東京生まれ。

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