2015.09.30 (Wed)
え?革製品丸洗い!? 創業80年の職人魂が宿るクリーニング技「カドヤ リフレザー事業部」@浅草<職人技リペアで思い出の品を末永く Vol.2>
みなさんは大切にしているもの、ありますか? 思い出の詰まったプレゼントや、長く使い込んだ道具など、古くなってもなかなか捨てられないものがあるかと思います。そこで今回は、そうした品々を手仕事でよみがえらせてくれる職人さんと、その技術に迫ります。
2回目のお題は「革ジャン」。一般的に、革製品は大きな工場に持ち込まれ、塩素系の洗剤でまとめ洗いされることが多いため、トラブルが生じることも。このことが「革にクリーニングは不向き」という印象を長年にわたり根付かせてきました。今回は、そんなイメージを覆す革製品クリーニングのプロフェッショナルをご紹介します。
レザーファンが待ち望んだカドヤの革クリーニング
西浅草に本社を置き、革ジャンメーカーのパイオニアとして、多くのバイク乗りから愛され続ける株式会社カドヤ。1935年創業、今年で80周年を迎えたカドヤの魅力は、その絶対的なクオリティ。職人による一人一着縫いを基本として、オリジナリティあふれる製品づくりを続けてきました。
以前からメンテナンスに関しての相談が多かったことから、革製品のクリーニングを行う「リフレザー」事業を立ち上げたのが2005年のこと。以来、革のプロであるカドヤのクリーニングとして大きな話題を呼び、今では全国から依頼が相次いでいるそうです。今回はリフレザー事業部の前田光裕さんに、実際にクリーニングの様子を見せていただきながらお話を伺いました。
実際にクリーニングの様子を見て驚かされたのは、一着一着、製品に応じてクリーニングの仕方を変えていること。「たとえ同じ製品であっても、汚れ具合や革のコンディションによって、ベストの洗い方が違うんです」と前田さん。一着一着に目を凝らし、時には鼻を近づけて匂いをかぎ、細部にいたるまで状態を確かめてから、もっとも製品に負担をかけない方法を模索していくのだそうです。
綿密な状態確認を終えて、今回は水洗いを行うことに。水洗いクリーニングを実現可能にしているのが、クリーニング先進国であるアメリカから取り寄せている自然由来の洗剤と、きめ細やかな製品の扱い方。特に濡れた革ジャンは、水の重さによって袖などが変形してしまう可能性があるため、まるで壊れやすいアート作品を扱うように両手ですくい上げます。
洗剤で丁寧に洗われた革ジャンは、水ですすぎ、トリートメント液に浸します。革の奥にまで栄養が染みわたることで、革本来の柔軟でしなやかな味わいが出ます。
水洗いが終わるとハンガーに吊るし、1週間ほど自然乾燥。その後、革面には中温アイロンを、裏地にはスチームアイロンを丁寧にかけていきます。アイロンがけのポイントは、着ている過程でついたクセやシワは味わいとして残し、洗濯によるシワのみを伸ばすこと。これも熟練の腕と革への愛情があるからこそなせる技です。
アイロンがけが終わると、お客様のご要望通りに汚れが落ちているかを細かくチェック。匂いまでしっかり落ちているか、糸くずなどが出ていないかを確認。確認が終わると、専用のワックスを塗りこみ、革独特の光沢に磨きをかけて仕上げます。
革という天然素材であるため、汚れ除去には限界もあるものの、確かな技と丁寧な事前説明があることで、お客様の満足度はとても高いという。
革製品のトラブルは、保管している時に多く、多湿な日本において特に多いのがカビのトラブル。着ようと思ってクローゼットから出してみるとカビが生えていたという経験をお持ちの方も多いのでは? 前田さんによれば、革製品のメンテナンスのポイントは、シーズンが終わったらすぐクリーニングに出すこと。さらにオプション施工である撥水加工を行えば、雨などの水分を弾く他に、汚れをつきにくくする「防汚効果」により、カビの発生を抑える効果も望めるそうです。
前田さんからは「革製品のクリーニングについて疑問や困ったことがあれば気軽にご相談ください」と心強いお言葉をいただけました。冬の革シーズン前は、駆け込みのお客様が増えるため注文で混み合うそうなので、シーズン後のクリーニングを基本に、どうしてもすぐにという方は、一度問い合わせてみてはいかがでしょう。
9月おすすめ:職人技リペアで思い出の品を末永く
詳細情報
名称 | ■カドヤ リフレザー事業部 |
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住所 | 東京都浅草台東区浅草6-41-7 1F |
URL | |
その他 |