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2015.12.17 (Thu)

若手革職人が立ち上がる! プロも通う養成所を開講@台東区蔵前<前編>

一人前になるには長い修行期間が必要──。手仕事を中心とする職人の世界に共通するイメージが、若者を遠ざけています。革小物の生産現場でも職人不足が深刻な問題となっているそう。そのピンチを救おうと、1984年生まれで現在31歳の若手職人である池田耕平さんが立ち上がりました。

池田さんはレザーブランド「PRO-MENER(プロムネ)」を制作する「Atelier K. I.」のオーナー。2014年にオープンした「クラマエビル」の3階に入居しています。自身のブランドを持ち、幅広い知識と高度な技術が必要な「サンプル職人」として活動する傍ら、職人不足のピンチを救う取り組みとして2015年6月、アトリエの一角に「職人養成所」を開講しました。そんな池田さんに革小物業界の現状と、職人へのハードルを下げることへの取り組みについてインタビューしました。

──まず、養成所を設立した理由をお聞かせください。

池田さん やる気とセンスがあれば数年で一人前になれるのに、「職人=長い年月の修行が必要」というイメージが強く、革業界に限らず日本の伝統文化の担い手が全国的に不足しているんです。現在既に職人不足なのに、第一線で活躍している職人の高齢化が進んでいて、彼らが引退したら一気に職人がいなくなってしまいます。このままではまずい、と養成所を作ることにしたのです。

──これまでのやり方では本当に職人がいなくなってしまいそうですね。

池田さん 養成所では基本的な技術を学ぶコースと、プロが各項目を深く学ぶコースの2種類を用意しています。養成所の他にも、革に興味がある人にはワークショップも用意しています。体験と言っても6時間ほどかけて小物を作るという本格的なもの。体験を通じて、狭き門のイメージを壊してハードルを下げたいと考えています。

Atelier K. I.

アトリエショップの一角に養成所を開講

──ハードルが下がれば気軽に学びに来られますね。それにしても何故そんなに職人がいないのですか?

池田さん 1980年代のバブル経済期は大量生産の時代で、「外注するなら人件費が安い中国へ」という流れがありました。工賃が安いために職人さんがどんどん離れてしまいました。そして近年は中国も工賃が上がってきたことと、国産が見直されてきたのに国内の職人が減ってしまった影響で、需要に対して職人が不足しています。

今でも工賃は安いですが、昔よりは上がってきています。それでもやはり職人になるには長年の修行が必要、というイメージが強すぎるために、職人になることに対するハードルが高いんだと思います。実際は、数年の修行で現場で活躍している若い職人もいるんです。

──職人不足を感じる場面はどんな時ですか?

池田さん 独立したてのころは、他のブランドの生産も手伝ってきました。そこでも職人が少ないことや、職人が高齢者になってなかなか商品ができあがってこないという話しを聞きました。また、Atelier K.I.では色んなメーカーやブランドのサンプルを作っているのですが、サンプルを作っても商品を作る職人がいないために、量産までたどり着かないということが何度かありました。

──それは残念ですね。サンプル職人も相当少ないのでしょうか?

池田さん サンプル職人は、型紙作りから仕上げまで全ての工程ができなければならないので、工種別の職人より圧倒的に少ないと思います。図面を元に型紙をおこし、そこからサンプルを作り、商品化する上での問題点、材料の指示、生産をする難易度などをお客様に伝え、量産できるように全てを整える必要があります。それぞれの技術だけでなく、素材の仕入れ先、生産する職人さんのクセ、道具の作り方などを知っておく必要があるのです。

Atelier K. I.

養成所でパーツの切り出しをする生徒さん

──この道を選んだきっかけは?

池田さん もともと台東区の「三和袋物」に就職して、サンプル職人として働いていました。色んなものを作ることができるサンプル制作が楽しく好きなことと、量産の職人よりも値段交渉で有利な点も魅力でした。現在、約20社と取引させていただいているので、各社・各ブランドの情報を知ることもでき、とても勉強になります。最近では口コミで評判が広まり、革小物以外のサンプルの依頼も来るようになりました。

──サンプル職人をしていることは、養成所にも役立っているんでしょうね。

池田さん 僕は革の仕入れ以降の工程を全てこなせるのと、色んなメーカーやブランドの情報を持っているので、養成所には革小物生産の一線で活躍しているプロも学びに来るんですよ。

──それはすごいですね! どんな方がいらっしゃるのでしょう。

池田さん 例えば普段はメーカーで企画、生産管理をしている人とか、工場の責任者とか。彼らは自分たちが職人に的確に指示をしなければならない。それには基本的な技術を知っている必要があるからです。それに何しろ職人不足なので、万が一彼らが外注している職人がいなくなってしまった時に、職人としても動けるように、と学びに来ています。

他にも北海道からも、革のお店をしている人が近くのホテルに泊まり込みで勉強に来ます。他の学校で学んだ人が、さらに技術を向上させたいと来る人もいるんですよ。

Atelier K. I.

オーダーに来たお客様と池田さん

* * *

革小物業界の危機を救いたい! そんな熱い想いを持つ池田さん。後編では池田さんの想いに迫ります。

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若手革職人が立ち上がる! プロも通う養成所を開講@台東区蔵前<後編>

詳細情報

名称■Atelier K. I.
住所〒111-0051 東京都台東区蔵前4-20-12 クラマエビル3B
URL

http://atelier-k-i.jimdo.com/

その他

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ヨーコ

フリーのデザイナー。時々ライター。 重機とお酒と廃墟と猫と猛禽類と深海魚が好き。 浅草在住。

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