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2016.03.14 (Mon)

ビンテージペーパーを「世界に1つだけ」のモノにリメイク! 「A-griffe」藤井タケヲさん

外神田「誂え財布 あぐり」の店内に並ぶ財布やバッグは、どれも一点物。1950年代~70年代前半のフランスの雑誌や新聞、アメコミ、地図などをリメイクした、レトロポップな味わいです。持ち歩いていると「どこで買ったの?」と聞かれるほど、個性的で魅力ある品物がそろっています。

このブランド「A-griffe(アグリ)」を運営する藤井タケヲさんは、もともとは東京の西側で活動していました。なぜ東東京に拠点を移したのか、ビンテージペーパーを「世界に1つだけ」の製品に生まれ変わらせるアイデアの背景には何があるのか、じっくりお話しを伺いました。

A-griffe

路面店「誂え財布 あぐり」入り口

お客さんとのつながりを求めて西から東へ

――どうして東東京に移って来たのでしょうか。

藤井さん 以前は表参道で8年間オフィスを構えていたのだけど、ファストファッションが流行ってきて、エッジィでハイエンドな高価なモノが売れなくなったんです。そこで流行に踊らされているようなビジネスでは厳しいと感じて。今はそういう時代じゃないな、直接お客さんと繋がる仕事がしたいな、と思ったのがきっかけでした。ちょうどその頃生まれたブランドが「A-griffe」なんです。

そんな中、JR東日本グループのプロジェクト「2k540 AKI-OKA ARTISAN」(以下2k540)への出店の話をいただきました。ものづくりをテーマとした工房を併設したショップという新しい試みの商業施設で。ちょうど良い転機だし、自分の思い描いていた方向と合っているなと思い、出店を決めました。

A-griffe

ビンテージペーパーの財布

――紙を使おうと思ったきっかけは何ですか?

藤井さん 人と違うものが作りたいなと思っていたんです。ファストファッションや有名なブランド品などの、いわゆる大量生産品とは違うものを作りたかった。趣味で集めていたフランスの古い雑誌をリメイクできないかな?と、ふと思って。古い雑誌は何冊も手に入れられないし、同じページでも切り取り方によって印象が変わるので、「世界に1つだけ」が可能なんです。

――手触りも気持ち良いですよね。しっとりサラサラという感じで。これはどう加工しているのですか?

藤井さん オリジナルのプラスチックコーティングを施しているんです。手触りもですが、使い続けていくうちに良い味が出るんですよ。まるで革のように。このコーティング剤は試行錯誤を重ねて製紙工場で作ってもらいました。

A-griffe

古い写真に設計図を重ねたもの

マーケットを尖らせスビード勝負

――表参道と東東京は全然違うと思いますが、特に大きな違いは何ですか?

藤井さん まず東東京エリアに来て驚いたのは、起業している若い人たちが多いこと。そしてみんな前向きで、その姿勢や考え方に刺激を受けました。みんな資金繰りを含めブランディングをしっかり考えていて、自力があるのでエネルギーをもらえています。大きな違いは西側の多くのファッション業界は中国で量産していて、カチクラエリアは国内で作っているブランドが多いこと。クオリティと商品への愛情の差が全然違いますね。

――確かに若い方が頑張っていますね。

藤井さん ただ、やはりアパレルで稼ぐには西側じゃないと売れない。東京のファッション発信地は西側なんです。とは言え、西でダメだったから東に来たというのと、東東京で自力と戦い方を身に付けて西側に進出するのでは全然違うと思います。断然後者が強い。実際にベースを東東京に置いて、西や海外に進出している若い人が多いのが、その裏付けとなっています。

A-griffe

彫刻とイギリスのストライブ柄の布を合わせたものも

――戦い方とは?

藤井さん 今はファストファッションブームに押されて、モノを売るのが難しい時代なので、マーケットを狭めることが大事だと思うんです。例えばバッグで1番になることは難しいけど、革のバッグ、その中のレディスバッグ、その中の…と下ろせる所まで下ろしていって、その中で1番、2番になれれば成功できます。そしてリスクをどこに持つかを、しっかり考えること。イチから新しいものを作るには時間とお金がかかるので、今あるものでいかに作ることができるかも重要だと思います。現代はスピードも大事なので。

――私は全くの異業種ですが、とても勉強になります。最後にこの路面店「誂え財布 あぐり」についてお聞かせください。

藤井さん 2k540店ではレディースを多く扱っているのに対して、こちらではメンズをメインに取り扱っています。「自分だけのもの」への価値が高まってきている昨今の流れと相まって、お客さまは医者や大学教授、弁護士など、今までブランド品を一通り使ってきた人たちも多いんですよ。最近は相撲の番付表や日本の古地図、古い文献などの和風の商品も作っています。和物は特に珍しがられて、話のネタになると喜ばれています。

A-griffe

オーダー時に使う型。印刷物の上に置いて、どこを切り取るか決める

* * *

「西洋の雑誌や新聞は50年代はポップなイラストが多く、60年代に入ると写真が増えてくるんです。そういう時代背景も含め、どこを切り取って商品にしようか考えるのが楽しいんです」と話す藤井さん。商品はオーダーも可能で、「子供が描いた絵」や「新婚旅行の写真」、「ご自身が掲載された時の新聞紙」など、様々な素材からオーダーがあるとか。「世界に1つだけ」へのこだわりは、そこにあるそれぞれのストーリーを愛おしむことなのかもしれません。

詳細情報

名称誂え財布 あぐり
住所東京都千代田区外神田6-13-11
URL

http://a-griffe.com/

その他

この記事を書いた人/提供メディア

ヨーコ

フリーのデザイナー。時々ライター。 重機とお酒と廃墟と猫と猛禽類と深海魚が好き。 浅草在住。

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