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2014.11.17 (Mon)

真っ直ぐな気持ちとコミュニティづくり|セコリ荘@中央区月島<建築/コミュニティスペースVol.3前編>

Vol.3では「セコリ荘」の宮浦晋哉さんにお話しを伺います。

中央区月島。東京メトロ有楽町線10番出口から徒歩3分の住宅エリアに「セコリ荘」はたたずんでいます。1階にギャラリーと飲食スペースがあり、訪れた人々が憩うリラックススペースが2階に。セコリ荘はそんな、ゆっくりできるコミュニティスペースです。

2000円を片手に、夜行バスで通い詰めた職人との日々

――2013年9月、セコリ荘がオープンします。それまで、宮浦さんはどのような暮らしをしていましたか?

服飾大学を卒業して、その年にキュレーションを学びにロンドンへ留学しました。2012年の秋が、ちょうど帰国するタイミングでした。留学中から、帰国後は生産現場をひたすら回ろうと決めていたので、帰国した翌週から夜行バスに乗って、毎週のように大阪や京都に行きはじめました。

――なぜ、生産現場を、しかも夜行バスで見て回ろうと?

日本では展示会に出展したり、ロンドンでは展示会の企画をしていましたが、現場を知らずに活動を続けたら服づくりと表面的な付き合いになってしまうかもと思ったんです。当時、坂口恭平さんの『独立国家のつくりかた』(講談社現代新書)を読んでいて、そこで坂口さんも夜行バスを使って建築物を見て回っていたというエピソードが載っていたので、そこからイメージが膨らみました。夜行バスならお金がかからず全国へ行けるので、「ぼくも、20代はこれだ」って思っていました。

「めっちゃ感動して、本にしたいと思った」

――生産現場を巡ってみて、実感したことは?

想像していたよりめっちゃ感動して、Facebookとかじゃなくて、ちゃんと本にして伝えたいという気持ちが溢れてきました。回っている途中から仲間になってくれそうな人たちに声をかけて、8人くらいの編集部ができたんです。ぼくは現場を回りつつ、週に1度はみんなと集まって本を制作する、そんな生活になりました。

――その本が『Secori Book Vol.1』ですよね。出版後の反響はいかがでしたか?

出版と同時に展示会も開いたので、仕事なのかわからない状況のまま、お仕事の依頼に繋がっていきました。素材の製造現場に足を運んで、それを本で紹介していたので、アパレル関係者の方々から連絡が来るようにもなっていって。キャリーバックとでっかいバックにたくさん生地などを詰め込んで、紹介する相手先を回るようにもなりました。

――大荷物ですね。足を運ぶのはご苦労が多かったのではありませんか?

ストックしている素材が、段ボール数箱分にまでなってしまい、車も使っていなかったので、「来てもらえるようにしなきゃ」って思いました。それで、場所を探しはじめて、知り合いや友達に声をかけていった縁が繋がって、今の大家さんと出会ったんです。最低限の設備だけ整えて、セコリ荘をスタートしました。

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【これが、セコリ荘です。古民家の内装をリノベーションしています。】

セコリ荘を地域活性に繋がるスペースにしたい

――帰国から約5ヵ月。拠点を構えるまで猛スピードで進んだんですね! 実際、セコリ荘をオープンしてみて、人は来ましたか?

月に100人くらいの人が、週末になると来てくれるようになりました。メディア関係者の方々も面白がってくれて、取り上げてくれました。徐々に仕事の幅も広がって、ファッションブランドに生地を紹介するコーディネートの依頼が増えて、職人さんにも仕事をお願いすることができて、喜んでもらえたんです。

でも、アパレル関係のコミュニティになってしまっていたことが気にかかっていました。

――ファッションだけでは物足りなかったんですね。

いやいや、そういうわけじゃないのですが、産地を巡る中で、衣食住に関わる地域文化全般や、地域に根づく職人技術などに興味が高まっていったので、コミュニティの偏りが気になったんです。どうしたら、一般の方、他業種の方にも気軽に来てもらえるかを考えました。そうして完成したのが今のセコリ荘です。ショーケースだけじゃなく、飲食スペースも設けて、そこで産地から取り寄せた食材やコーヒーを楽しんでもらえるように変わりました。2014年の3月に保健所の許可が通って、本格スタートしたばかりなんです。

後編では今のセコリ荘とこれからの話

文章に起こしてしまうと、抜け落ちてしまう音量や響きがあります。宮浦さんの言葉には、この音量や響きに気持ちが乗っていると、ぼくは感じました。それは、聞いているこちらが、「だから大家さんと出会えて、だから拠点を構えられて、だからコミュニティにまで育ったんだ」って納得できるほどの熱量でした。

後編では、今のセコリ荘と、これからについてお聞きします。セコリ荘を通じて、宮浦さんが社会に共有したい価値の話、と言っても過言じゃありません。続きもぜひ、お愉しみください。

詳細情報

名称セコリ荘
住所東京都中央区月島 4-5-14
URL

http://secorisou.com/

その他営業時間:
金 17:00~22:00
土 13:00~22:00
日 13:00~22:00

この記事を書いた人/提供メディア

新井 優佑

インタビュアー/ノンフィクションライター。WEBマガジンやオウンドメディアの運用、寄稿をしています。出版社でスポーツ雑誌編集とモバイルサイト運用を担当したのち、独立しました。2014年は、手仕事からデジタルファブリケーションまで、ものづくりの記事を多く作成しました。1983年東京生まれ。

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