ホーム > コラム > 一度は行きたい!見たい!美しい富士を眺めながら入る千駄木の銭湯「ふくの湯」@文京区千駄木<東東京の銭湯 and more vol.4>

2015.01.28 (Wed)

一度は行きたい!見たい!美しい富士を眺めながら入る千駄木の銭湯「ふくの湯」@文京区千駄木<東東京の銭湯 and more vol.4>

ふ~っと吐くと白い息。ちょっぴり冷え込むそんな季節になりました。東東京にはぜひ訪れてみたい素敵な銭湯や銭湯イベントが。最後は、銭湯らしい銭湯。千駄木にあるふくの湯さんをご紹介します。老舗ならではのお話を伺ってきました。

いいことあるかも!?ご利益気分のお風呂

東京メトロ南北線本駒込駅から徒歩約7分。今日もふくの湯さんの入り口前には自転車がたくさん止まっています。ふくの湯の名前の通りご利益気分の銭湯としてリニューアルしたのは2011年。以来、常連さんだった近所の人だけでなく遠方の方からも人気のふくの湯さん。ご利益気分の銭湯ってどんなお風呂?早速、行ってきました。

この日は女湯が「大黒の湯」。ふくの湯さんには、男湯と女湯が1つづつあり、それぞれ週替わりで楽しめます。

女湯

お風呂に入ると、まず目に飛び込んできたのが立派な赤富士。壁一面の赤富士の力強さに圧倒され、自然と「お~~」と声がでてしまいました。私が、今まで見た富士山の絵の中で一番大きく神々しい。風呂絵師さんはこの大きな絵を一人で描きます。どんな風に描くのだろう、描いている姿を見てみたいなという気持ちが湧いてきます。

後程、店主の村西さんに教えていただいたのですが、風呂絵師さんは下書きなしで、元の絵に専用ペンキで直接次の絵を描くそうです。もちろん、ふくの湯の赤富士も下書きなし。ちょっと遠くから眺めては描く、眺めては描くであっという間に描き上げてしまうのだそうです。私が感じた赤富士の力強さは風呂絵師さんのダイナミックな描き方だったのかもしれません。

また、お風呂の中で美しいのは赤富士だけじゃないんです。赤富士の下には黄金の壁が。壁には立派な1本松が描かれており、まさに金屏風。遠くからみると一枚の絵に見えますが、この黄金の壁はタイルでできています。松の木もグラデーションのある緑色のタイルで描かれているんです。これぞ、日本版モザイク壁画。

赤富士
【写真提供】設計:今井健太郎建築事務所

そして、男湯と女湯を隔てている壁には七福神の絵。大黒天の湯には、大黒様が打ち出のこづちを振っている絵が一面に描かれています。大黒様の絵の前でシャンプーをしていると、打ち出の小づちからこぼれる小判が頭の上にふってくるよう。

大きな湯船に足を伸ばしてゆっくり浸かれば、体も心もほぐれていきます。黄金の壁を背中に、頭の上には立派な赤富士、横を見れば大黒様、贅沢な気分にひたれます。「あ~極楽、極楽。」

男湯

もう一つは「弁財天の湯」。こちらは、赤富士ではなく白富士が一面に描かれています。壁には弁天様の絵が。お風呂の湯船もツボ湯があるなど雰囲気もまったく違う感じです。次は、こちらのお風呂にも入ってみたい。

白富士
【写真提供】設計:今井健太郎建築事務所

「一度来ていただいただけではなく、古さの中にも斬新さ、新鮮さがあってこそ感動が生まれると思います。感動していただけるとお客様も何回も来たいと思っていただけるんです。」と店主の村西さん。

銭湯のある町。銭湯という文化

村西さんにお話しを伺うと昔は銭湯が町の中心にあったそうです。銭湯に人が集まることがきっかけで、隣に飲食店ができたり、お店が建ったり、大きな道ができたりと自然と商店街が生まれてきたそう。町に銭湯があるということは、人が集まれる場所があるということなんですね。

「お年寄りにとっても銭湯に来るということは大切なことなのです。銭湯まで歩く、移動することで家から出る習慣ができる。体も元気になる。銭湯に行けば、知らない人でも誰かいる。一人ではなく、人と接することができる場が銭湯なんです。」

私が湯船に浸かっている時も、お客さん同士が晩ご飯のレシピ相談を始めたり、お互いの健康法などを楽しそうにを話していました。そんな井戸端会議を聞いていると初めてきたお風呂なのに私もご近所さんになった気分です。湯船に浸かって話をしていると、ぐっとお互いの距離が近づくように感じました。

ふくの湯さんにはお子様連れの若いパパやママも多く来ていました。老若男女が一緒に集まれる、話をしなくても接することができるのが銭湯という場所なのだと改めて思いました。

ふくの湯夜
【写真提供】設計:今井健太郎建築事務所

また、村西さんの話によると銭湯に入るという行動も日本人の文化の一つだけれど、銭湯を建てる職人さんもまた日本のかけがえのない文化なのだと教えていただけました。銭湯の数が減るにつれて、銭湯に携わる職人さんも減ってしまっているそうです。ふくの湯さんにある立派な富士山を描く絵師さんも今は日本中でたったの3人。

「銭湯を残すということは、日本の文化を残すこと。受け継がれてきた職人さんの技を残すことでもあるのです。」と店主の村西さん。ふくの湯さんのリニューアルにも、銭湯の文化を守るという熱い思いが込められています。

ふくの湯さんに行って、銭湯はお風呂に入って体を温める場所だけではないと気付きました。広いお風呂そのものを楽しむ、絵を楽しむ、会話を楽しむ。全て銭湯の魅力だと思います。

ふくの湯さんのご利益気分のお風呂も、富士や七福神の立派な絵はもちろんですが、たくさんの人が集まってできる温かい空間そのものが幸せな気分にさせてくれたのだと思います。

ぜひ、自分の肌で、目で、ふくの湯さんのお風呂を味わってみてください。

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詳細情報

名称ふくの湯
住所東京都文京区千駄木5-41-5
URL

http://www.sentou-bunkyo.com/facility_top/fuku_no_yu.html

その他

この記事を書いた人/提供メディア

Hiromi Suzuki

サラリーマン時々ライター。食べること・料理を作ること・山が大好き。日々、シンプルな暮らしを求めて探求中。素敵な人、素晴らしいモノがたくさんあると出逢いを求めて東東京マガジンへ参画。取材させていただいた人モノの魅力をまっすぐ言葉に込めてお届けしたいと思います。

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