2015.01.07 (Wed)
引き継がれる人への想いと、そこに集う人々のつながり。コミュニティ銭湯梅の湯@荒川区西尾久<東東京の銭湯 and more Vol.1>
銭湯の外に出ると肌から湯気。寒い寒いと言いながらマフラーを巻き白い息を吐く…なんてのが風流な季節です。東東京にはそんな季節にぜひ訪れてみたい素敵な銭湯がたくさん。初回の今回は、荒川区小台駅、尾久駅が最寄のコミュニティ銭湯 梅の湯をご紹介します。歴史ある銭湯を今も町の人々の大切な場所にしていたのは、四代目の栗田尚史さんの静かな若き情熱でした。
創業60数年。さまざまな挑戦で、今も進化を続ける町の銭湯。
銭湯を訪れるとまず目に止まるのが、銭湯ののれんの左、同じ建物に軒を連ねる飲食店らしき入口。じつはこちら、梅の湯のおかみさんが経営している焼き鳥屋さんなのです。
「お風呂を出た後に缶ビールでなくどうせなら生ビールと、簡単なおつまみがお出しできたらいいんじゃないか、と。それで、昔は銭湯の一部だった施設を焼き鳥屋に改装して、お客様が湯上がり後にすぐにくつろいでいただけるスペースを作ったんです。」
と四代目。
【写真:焼き鳥屋さんの中はこのようなカウンター席と、テーブル席が6名分あります。】
穏やかな語り口で語られる情熱には、その準備中の時間、ちょうどじっくりと温められていた銭湯のお湯さながらの密かな熱を感じました。
【写真:とても綺麗に保たれた準備中の浴場と、その床でくつろぐ飼い猫のミミちゃん。お湯の通り道なので、まるで床暖房のような温かさなのです。】
さらに挑戦はこれだけではないようです。
【写真:1月は松の湯、2月は大根湯。四代目渾身の「本物」のお湯を楽しみにいらしてみては。】
「12ヶ月月替わりで季節のお湯に入るのが昔からの伝統としてあって、それを梅の湯でもやっています。
そしてこれは僕自身の考えからなのですが、自宅のお風呂でなく銭湯ならではのできることがしたくて、どこでも手に入る入浴剤ではなく、本物の素材をと思ったんです。でもこれが実現するとなると結構大変で(笑)。4月は桜だ、桜の木の皮がいるとなったんですが、インターネットでどこを探してもない。まさか近所の桜の木の皮を剥ぐわけにはいかないよなあ…なんてあきらめかけていたときに、偶然近所の漢方の店で見つけて取り寄せました。
実際にお客様からあのお湯は良かった、大根湯は腰に効いた、などと言っていただけて好評なので、嬉しく思っています。」
町の人々の身体だけでなく心も温かくするまさに「コミュニティ」銭湯
さらに心あたたまったのが、3.11のエピソードからも垣間見えた、四代目の思いでした。
「あの日は、ガスも止まり準備していたお湯もあふれかえり、もう営業できないかなと思っていたんです。
そうしてあっという間に店を開ける時間になってみたら、なんともう二人のお客様がいつも通り桶を持って並んでいらしていて。そこから急いで準備して、数時間後に店を開けました。そのあとも、常連の皆さんが、驚くほど普通に、いつも通りいらっしゃいましたね。もしかしたら、一人でいる方は心細かったのもあるかもしれません。
そんな風に、『梅の湯があるから安心』と思われる場所でありたいと思っています。お風呂に入りに来てもらうだけでなく、話にだけ来てもらうのもいいですし。本来なら銭湯って、お風呂でしか会わないおじさんに良くしてもらう、とかが当たり前だったんですが、そういう文化が薄れていっていると感じているので、そこはなくさないようにやっていきたいですね。」
銭湯は、ただ大きなお風呂に入れるというのだけが良さじゃない。そんなことに改めて気付かされた梅の湯さん。まさに「コミュニティ」なんだなと感じました。ぜひこの時期の季節の湯と四代目の温かいお人柄にふれ、心も身体もポカポカになってみては。
あ、焼き鳥も欠かせませんよ!
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詳細情報
名称 | コミュニティ銭湯 梅の湯 |
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住所 | 東京都荒川区西尾久4-13-2 |
URL | |
その他 |