2015.11.20 (Fri)
プレイヤー必見! 1棟丸ごと楽器演奏可の老舗シェアハウス「なってるハウス」@台東区松が谷
「貸しスタジオの時間なんか気にせず、思いっきり練習したい!」
楽器を演奏する人ならば、誰もが一度は抱く気持ちだと思います。そんな人たちの希望に応えるかのように、「室内で楽器演奏OK」を打ち出す老舗シェアハウスがあるのをご存知でしょうか?
台東区の合羽橋道具街のすぐ裏手にある、ミュージシャン志望の住人たちが集まるシェアハウス「なってるハウス」。1階には同名のライブハウスも備えます。その成り立ちと、実際の生活の様子は? シェアハウスの管理人兼ライブハウスの店長、そして自らもサックス奏者である広沢哲さんにお話を伺いました。
ニューヨークのアパートをイメージ
合羽橋道具街が店じまいし、町が静かになる頃。路地裏にあるビルの1階「なってるハウス」の看板に明かりが灯ります。ここは連日、ジャズの演奏でにぎわうライブハウス。5階建てのビルの2階以上はシェアハウスになっています。
日本にまだ「シェアハウス」という言葉が広まっていなかった2000年、ねじ会社のビルを改装してオープンしました。特徴は、室内で楽器の練習ができること。最上階にはドラムの練習室も完備しています。
広沢さん オーナー(尺八奏者)が以前ニューヨークに住んでいたのですが、当時、ソーホー地区がすごく活気があったんです。大きなアパートにミュージシャンたちが集まっていて、夜になると住人同士で交流したり、ジャムセッション(合奏)をしたり……。そんな場所を目指してつくったそうです。当時は、まだシェアハウスという呼び方がありませんでしたから、入居者の募集のときは、「学生寮みたいなつくりです」と説明しました。今は説明がしやすくなりまして、「楽器の演奏ができるシェアハウスです」と言っています。
窓は二重サッシになっていて、表に音が漏れにくくなっています。室内もいくらかは防音になっていますが、隣の人が練習していたら聞こえます。予算の都合もあったと思いますが、オーナーとしては、「隣のヤツががんばっているから、おれもがんばらなきゃ」と思えるような環境のほうが刺激になると考えたようです。
家賃は部屋の広さによって異なり、5万〜7万5000円。「シェアハウスとしては高い」(広沢さん)のは、防音設備があるゆえ。練習のたびにスタジオを借りることを考えれば、元は取れることでしょう。最近は公園も音出し禁止が多いとか。
入居者は、地方から上京してくる人もいれば、学校を卒業後、ミュージシャンを目指して移り住む人も。最近は、ライブハウスにお客としてきたのをきっかけに、入居する人も多いそうです。ちなみに、現在の入居者の楽器構成は、管楽器、ギター、ドラム、ボーカルとバラエティ豊か。プレイヤーとしての段階も、ライブハウスなどで活動するプロから、初心者まで様々とのことです。
馴れ合うことなくストイックに
最近のシェアハウスというと、住民同士の交流が盛んというイメージがあり、それが魅力で入居を決める人も多いでしょう。聞いてみると、なってるハウスは、それとは少し趣が違うようです。「基本的に、楽器の練習ができる部屋を提供するだけなので」と広沢さんは話します。
「大きな音で音楽を聞きたい」とか、「面白そうだから入ってみたい」といって、音楽をやっていない人が面接に来ることがありますが、おすすめはしてないですね。楽器の音は思っているより大きいので、音楽をやっていない人は耐えられないと思います。
しじゅう住人同士で交流しているわけでもないです。月に1回お酒を飲みながらセッション(合奏)をしよう、と交流会を開いた時期もあるのですが、夜はアルバイトや自分のライブで来られない人もいて、なかなか難しいです。
現在は、特に住人全員が集まる催しはしていないとのこと。最近のシェアハウスをイメージしていた人は、物足りなく思うかもしれません。それでも、音楽を志す者同士、一緒に生活していれば、気心が知れ、はからずも交流が生まれることもあるようです。
時期によっては、住民同士がすごく仲が良くて、毎晩のように宴会をしていたこともあります。それこそ住民同士でバンドを組んで、ライブをすることもありますよ。オーナーからは、「住民に優先的にライブをやらしてやってくれ」と言われています。
でも、演奏が一定のレベルにまで達していないと思えば、意見や文句も伝えます。そうしたらけっこう嫌われています(笑)。
「ここだと敷居が高いので」と出演するのをやめてしまう人もいます。若い人は、こんなことを聞いたら恥ずかしい、と気後れしてしまうみたいだけど、わからないことがあったら聞けばいいのにと思います。聞いてくれれば相談にも乗るんですけどね。
自らもミュージシャンだからこその、厳しくも優しい言葉です。
音楽を生活の中心に据え、あとは、住人と交流するもよし、しないもよし。住人同士でバンドを組んでライブをしてもいいし、しなくてもいい。アドバイスを求めれば、応えてくれる。この場所をどう使うかは、その人次第、なのでしょう。
合羽橋から全国へ
最近のシェアハウスについての意見を伺うと、「人の交流のさせかたがうまいなと思います。この辺にも、面白いシェアハウスがありますね。もう少し学ばないと」と謙虚な姿勢。
それでも、シェアハウスの運営モデルもない時期から15年間、試行錯誤し歴史を重ねてきた、なってるハウス。オーナーが当初、思い描いていたソーホーのアパートとも、他のシェアハウスとも違う、独自の存在価値を培ってきたのだと思います。
ここを出ていった人間で、いま一緒にバンドやっているヤツもいます。東京を離れてしまったけれど、地元で活躍している人もいっぱいいますよ。
一見、音楽とはなじみの薄い場所・合羽橋ですが、なってるハウスを通して、ここを縁の場所とするミュージシャンが全国各地に存在しているのではないでしょうか。真摯に音楽を追求したい人におすすめしたいシェアハウス。まずは、ぜひライブハウスへ。こぢんまりとしたスペースながら、居心地のよい椅子があり、じっくり音楽に浸ることができます(広沢さんも出演されています!)。
詳細情報
名称 | なってるハウス |
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住所 | 東京都台東区松が谷4-1-8 |
URL | |
その他 | なってるハウスホームページ http://www.maroon.dti.ne.jp/knuttelhouse/ 写真協力:東京シェアハウス |