ホーム > インタビュー > 向島のリトルロンドン『Ipcress Lounge』では何か新しいことが生まれそうな空気充満<新歓(SHINKAN)—新人さんもそうでない人も!東東京の参加したいコミュニティ Vol.2後編>

2015.04.13 (Mon)

向島のリトルロンドン『Ipcress Lounge』では何か新しいことが生まれそうな空気充満<新歓(SHINKAN)—新人さんもそうでない人も!東東京の参加したいコミュニティ Vol.2後編>

4月と言えば、入学式や入社式など新生活がはじまる季節。
このマガジンの読者の方にもこの4月から東東京に住む方や東東京で働き始めるという方もいるかもしれません。

そんな方や東東京にもっと関わるキッカケを欲しいという方々にお送りするのが4月の特集「新歓(SHINKAN)—新人さんもそうでない人も!東東京の参加したいコミュニティ」です。東東京に住みはじめたけれど、もっと色々な人たちとつながりたい、一緒に何かをやりたいという方々に向けて、様々なコミュニティをご紹介します。

今回は前編に続き、年齢層も幅広く、クリエィティブな人たちの間に化学反応を起こしているパブ&ブティック「Ipcress Lounge」のパブマスター兼ファッションデザイナーの阿部訓諭(あべさとし)さんにお話しを伺っています。

前編では、向島に物件を借りたものの途方にくれている阿部さんのもとにキーパーソン小林君が訪れたところまででした。さて、ここからどう展開したのでしょうか?

「Ipcress Lounge」で生まれたコラボレーション第一号

契約後に”さて、シャツだけで食べていけるのか?”という不安があり、ここにある水回りを利用したカフェかバーなどのサイドビジネスの可能性を考えていました。このときキーパーソン、また今となってはなんでも相談しあえる映画監督・プロデューサーの小林君がひょっこりドアをノックしたんです。

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写真:「Ipcress Lounge」のパブマスター兼ファッションデザイナーの阿部さんは頭から足の先まで1960年代ロンドンのモッズスタイル

小林君「こんにちは。何をやっているんですか?」
阿部さん「デザイナーです。この町に可能性を感じて恵比寿から引っ越して来ました」
小林君「阿部さんおもしろそうな人ですね。ボク地元なんで何でも協力します」
阿部さん「勢いで借りたけど、何していいか…」
小林君「カフェにしてくださいよ。ここで映画撮らせてください」
阿部さん「はぁ?でも、材木買うお金すらないし…」
小林君「知り合いの倉庫に処分予定の材木があるから好きなだけ使っていいですよ。4月14日にこの場所を使って映画撮影をさせてください。阿部さんのセンスを信じています」

という会話からすべてが始まり4月1日のオープン日が決定してしましました。材木を本当に好きなだけもらってきて、自分でカフェバーの設計をしました。もちろん店舗設計なんて初めてです。友人や後輩らの手助けもあり徐々に改装は進んでいきました。小林君はこの近所にオープン予定の行き当たりばったりなカフェバーを自身のFacebookなどで広めてくれました。小林君のネットワークで近所に面白そうな店がオープンするらしいことはあっという間に拡散されました。

――すごい運命的な出会い。この場所で生まれたコラボレーション第1号ですね。

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写真:阿部さんのお母様もお手伝いと会話参加

阿部さん 実はこの改装期間中に3.11の震災がありました。飲食店経営者は絶望を感じた時期もあったでしょう。そんな中一方では開店に向けて準備をしている真っ最中でした。どんな状況でも人はお腹が空くし、不安を感じればどこかに集まるものと信じてオープンに向け一切の不安な情報はシャットアウトし作業に没頭しました。

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阿部さん 最後の2週間は文化服装学院の後輩達が手伝いに来てくれました。毎晩、電気つけっぱなしで徹夜作業が続きましたが、これも結果的に口コミが広がった宣伝効果になっていたようです。また小林君のFacebookでの呼びかけで、4月1日のオープニングパーティーには、入り切らない程の地元の若い人たちがオープニングパーティーに押し寄せました。その後の1年間は毎晩朝まで、墨田区のモノづくりにかかわる人を中心とした常連客で賑わいました。

こうして小林君には約束通り撮影場所を提供できたんです。気が付いたらウチのシャツを衣装提供、当時乗っていたSAAB900Sも映画に車両提供させていただきました。

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――シャツの販売ももちろん開店と同時に展開してきたんですよね?

阿部さん もちろん店内に展示されていますが、これまたキーパーソンの小林君に薦められて、開店2か月後に初めてFacebookを始めたところ、インターネットでの商品販売が成立したんです。作った商品をFacebookに載せるとすぐに海外からの反応があったんです。

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写真:パリから来たLouise Ebelさんは、ファッション雑誌マリ・クレール スタイルのジャーナリスト、またスタイリスト。日本では日本テレビ「Zip!」にてファッション情報プレゼンターを務めます。ボーイフレンドがIpcress Mod Fileのシャツの大ファンでもあり東京に来ると必ず立ち寄るそう

阿部さん 海外、特にヨーロッパのお客さんからの注文が多く、有名バンドメンバーが注文してくれたり、実際にお店まで来ることもあります。2012年には、Ipcress Mod Fileのブランドを広めたいということで、イギリスのミュージックフェスにその主催者から招待を受けました。

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写真:下に掲載の人気のアイルランドのバンドTHE STRYPESのメンバーが来店して、この大きなウィンドーにサイン。他にも様々な著名人がここにサインしています

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不思議な魅力に人が吸い寄せられて、コミュニティーが膨らんでいく

ここ「Ipcress Lounge」では、短時間の取材中でも、とてもオーガニックな形でお客さんが気軽にフラッと立ち寄っては、おっとりした阿部さんも交え、一緒に会話している様子を目撃しました。

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写真:阿部さんは、常にお客さんにエンターテイメントの提供をしています。これはおもちゃの煙草の吸殻

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写真:「Ipcress Lounge」の隅っこにはレトロなおもちゃといたずらグッズがいっぱい

モノづくり関係の人、IT関係、歯医者さん、うどん屋さん、学校の先生、化粧品会社の社長、パリからのファッションジャーナリスト、あっ、例の小林君などなど、実に様々な人たちがカウンターで一緒に飲んでます。”いこいの場”という言葉が思い浮かびます。

――どのような客層ですか?

阿部さん モノづくりの仲間を挙げたら切りがない程たくさんいるし、近所の人たちも応援してくれています。普通のおしゃれなカフェだったら集まらないような人たちが来ます。それぞれが席を隣り合わせ会話をしているうちに自然と様々なコラボレーションが生まれていきます。

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写真:阿部さんと靴職人の三森勇太さんのコラボレーション靴の数々

――今までのコラボレーションの例はありますか?

阿部さん まだオープン初期に常連客の鞄職人「HIS-FACTORY」の中野さんが連れてきた三森君。「何ができる?」と聞いてみたら「靴が作れます」と。「じゃあ、僕が靴をデザインするから一緒にブランド立ち上げない?」という飲みの席から始まった軽い冗談みたいな話でも、飲みながら打ち合わせを徐々に進めサンプル作成を何度も繰り返し、一足の靴が出来上がりました。

今となってはイギリスのモッズシーンで評判のこの「SPITFIRE(スピットファイヤー)」ですがこんな軽いノリで製作がスタートしたんです。名前もなんと当時販売していた英国ビールの名前から取りました。靴擦れしないように計算しつくされ、どこの角度から見ても美しいんです。

革はこれまた常連客の革問屋富田興業さん、また中野さんから譲っていただいたもので製作しています。また、最近ではシュークリエイターとしても独り立ちした三森君の展示会にこの場所を提供しました。

――人が繋がってますねー。本当にカッコイイ靴。私も欲しい。

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写真:阿部さんのお年始の黄色いタオルは、銭湯に行きたくなるデザイン

阿部さん 他にも常連客が小林君の映画のエキストラで出演したり、学校の先生と一緒に、ある大学生の描くおもしろいイラストを応援するためのTシャツプロジェクトが進行中です。

また、人と繋がるエンターテイメントとしては、2か月に1回将棋大会を催しています。

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写真:阿部さんと歯医者さんの上竹さんが将棋で真剣勝負中

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写真:将棋を指す阿部さんの足元もモッズ一色

――!!将棋大会??

阿部さん 最初は僕が将棋に割と自信があり、「マスターに勝ったら、1ドリンクサービス!」とキャンペーンを打ったんです。いつの間にか噂を聞きつけた将棋好きのメンバーは120名を超えました。将棋盤も8台揃用意しています。(バーの壁にランキング表が設置されています。赤い花が付けられているのは女性メンバー!)今ではIpcress Loungeの垣根を飛び越え様々な区内の飲食店でも将棋大会を開催させていただいています。みんな家族みたいな感覚です。

これからもこのまま細々と好きなものに囲まれて

――これからの展望は?

阿部さん 自分が商売を飽きないことが最も大事なことと考えています。飽きないように店舗は常に変化が必要だと考えています。なので内装作業も実は今も進行中なんです。空間全部を進化させ続けて行きたいです。将来も、このまま好きなものや好きな人に囲まれていれば幸せだと考えています。金銭的にゆとりができたら周りの人に還元したり、自分へのご褒美として車が欲しいくらいです。

ここで4年間やってこられたことをすごく誇りに思っています。恵比寿で6年、向島で4年トータルで10 周年を迎えられた感謝の気持ちを込めまして2016年1月16日(土)に10周年記念パーティーの開催を準備しています。

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※ ※ ※

こんな阿部さんの持つ確固たる信念と穏やかさのバランスが、人びとを自然に惹きつけるのではないかと思いました。「Ipcress Lounge」での1960年代ロンドンへのタイムトリップ、人とアイディアとの出会い、すごく贅沢だとは思いませんか?

4月特集:新歓(SHINKAN)─新人さんもそうでない人も!東東京の参加したいコミュニティ

詳細情報

名称Ipcress Lounge
住所〒131-0033 東京都墨田区向島1-11-11
URL

http://www.ipcressmodfile.com/

その他facebook:
Ipcress Mod File
Ipcress Lounge/イプクレス・ラウンジ

この記事を書いた人/提供メディア

Kumiko

独自性研究員。
独自のアイデアで、”考える”機会を与えてくれるものに惹かれます。
また、時間の動きに興味があり、今流行っているものよりも、その先: 時間を先に引っぱっている事や人、または、それ以前: 時間が刻まれた物をいつも探しています。東東京にはこれらの要素がいっぱいで飽きることがありません。

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