2015.04.10 (Fri)
向島のリトルロンドン『Ipcress Lounge』では何か新しいことが生まれそうな空気充満<新歓(SHINKAN)—新人さんもそうでない人も!東東京の参加したいコミュニティ Vol.2前編>
4月と言えば、入学式や入社式など新生活がはじまる季節。
このマガジンの読者の方にもこの4月から東東京に住む方や東東京で働き始めるという方もいるかもしれません。
そんな方や東東京にもっと関わるキッカケが欲しいという方々にお送りするのが4月の特集「新歓(SHINKAN)—新人さんもそうでない人も!東東京の参加したいコミュニティ」です。東東京に住みはじめたけれど、もっと色々な人たちとつながりたい、一緒に何かをやりたいという方々に向けて、様々なコミュニティをご紹介します。
そこでVol.2は年齢層も幅広く、クリエイティブな人たちの間に化学反応を起こしているパブ&ブティック「Ipcress Lounge」をご紹介。16人で満席になるこの小さな場所には、現在日本、いや世界で唯一の1960年代後半のスウィンギングロンドンがそっくりそのまま息づいています。
このパブとモッズアイテムをすべて自分一人でデザイン、また全改装し、4年間経営をしてきたパブマスター兼ファッションデザイナーの阿部訓諭(あべさとし)さんにお話しを伺ってきました。
ドアを開ければそこは夜間限定 向島のリトルロンドン
都営浅草線「本所吾妻橋」駅を出て北へ向かうと、右側の夜空にはスカイツリーがドーンと、下町情緒のある路地の真ん中にそびえ立っています。それに見とれている間に、静かな住宅地の中に大きなウィンドウと「Ipcress Lounge」の看板発見。
ここは、夜7時から始まる向島のリトルロンドン。もっと正確に言えば、1960年代のミニ・スウィンギングロンドン。小さなスペースの天井、壁紙、カウンター、テーブル、椅子すべてが、これでもかというくらい当時のロンドン色で染められています。
そんな「Ipcress Lounge」には、夜な夜な小学生から75歳までという幅広い年齢層の常連客(週に4-5回通いの人も)が集い、初めて会った人同士でもユニークなコラボレーションが発生するブレーンストームの場になっています。
そして何よりもこの小さなスペースを世界唯一のパブにする決定的なポイントが、1960年代ロンドンのモッズスタイルを緻密に研究し、リバティープリントなどで再現したメンズシャツや靴(既製品とオーダーメードの両方)が購入できること。お酒を飲みながら、商品を見たり、試着したり、他のお客さんから褒めてもらったりもするのです。
――ここまで徹底的に1960年代ロンドンにこだわる理由とは?
阿部さん “SWINGING LONDON 66-67″っていうドキュメンタリー映画を観て以来、特に1966-68年のロンドンのすべてのことに魅了されました。高校生のころから当時の古着シャツを研究しているので数多くのディテールが頭に入っています。シャツは気に入った生地が手に入った時のみに製作して20年。ですので、好きな生地がないときには新作も作りません。
阿部さん 僕はスウィンギンロンドンの時代のファッションに魅了されているので今の時代の流行を追いかけるようなもの作りはしていません。ネットショッピングとは全く真逆のアナログなやり方でシャツの販売を行っています。”この襟・ボタンは、あのバンドがあの時着ていたシャツと同じ”などといった付加価値やストーリー性を提供し、買い物をとことん楽しんでもらうことを念頭に置いています。
また、すべてが1点ものなので決して安くはありませんが、基本同じシャツはありません。同じ柄でシャツを2点以上作る際にはその旨をお客様に伝え、販売先をロンドン東京という風に切り離しパーティー会場でシャツが被るのを避けるような心づかいも忘れません。すごく重要な事と考えています。
ここのテーブルも椅子もイギリスのアンテーィクで100年くらい前のものです。壁紙はウィリアムモリスをイメージ。ビールはロンドンプライド、フードはフィッシュ&チップスやローストビーフが人気ですよ。
おしゃれなイメージの恵比寿からここ向島へ
――以前は恵比寿でモッズシャツ専門店を6年間経営していたそうですね。ここ向島でのお店開店までの経緯を教えてください。
阿部さん 2005年から6年間の恵比寿のお店では、看板もない完全会員予約制で、シャツを買ってくれたお客さんにお礼としてコーヒーやカクテルなどの飲み物を出していました。おしゃれタウンにあるというステータスだったんですが、次第にマンネリを感じるようになりました。実際にシャツを買いに来てくれるお客さんは必ずしも都内からだけではなく名古屋や大阪、九州や時にはヨーロッパからもこの看板の無いオーダーシャツ屋にお客様がいらっしゃいました。
阿部さん そこで家賃更新をきっかけに、”もっといろんな人に知ってもらえる場所は?可能性のある町は?”と、新拠点を探し始めました。縫製職人が隣町の京島にあったことでしばしばこの辺りには通うようになっていました。また、当時2011年というとスカイツリーがまだ建設途中でしたが、この辺りが変る・にぎわう予感も感じていました。探し求めていた裏路地にひっそりと存在し、角地でショーウィンドーの大きさや家賃などを考慮し即決しました。
あとから契約書を見て気が付いたのですが、2011年1月11日、向島1-11-11の住所で契約成立したんですが、他にも電話番号の下2桁、直後に契約した駐車場も11番と運命的なものを感じました。
――すごい”1”続きですね!そこからすべて自分で改装したんですか?
阿部さん はい。中は本当にめちゃくちゃな状況でした。正直何から手を付けたら良いかわからず、入居1週間位は何もせず、床に足を抱えて座って”何するか?”と考え続けました。大家さんにはここは閑静な住宅地で飲食店の営業には向かないとも聞いていました。入居された飲食店はことごとくダメだったようです。でも、僕いつも根拠のない自信に満ち溢れているんです。入居しては撤退を繰り返し幽霊物件とまでもささやかれた上階に住む大家さんの名誉のためにも毎晩ここにあかりを灯し、ここで成功したいと強く思いました。
「Ipcress Lounge」で生まれたコラボレーション第1号
阿部さん 契約後に”さて、シャツだけで食べていけるのか?”という不安があり、ここにある水回りを利用したカフェかバーなどのサイドビジネスの可能性を考えていました。このときキーパーソン、また今となってはなんでも相談しあえる映画監督・プロデューサーの小林君がひょっこりドアをノックしたんです。
※ ※ ※
さあ、このキーパーソン小林君がどういう役割を果たしたのか気になるところですが、この続きは後編で。こんな人との出会いってあるんだ!という展開になっておりますので、お見逃しなく。
4月特集:新歓(SHINKAN)─新人さんもそうでない人も!東東京の参加したいコミュニティ
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<Vol.4前編>自然と会話が生まれるコーヒースタンド@江東区
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詳細情報
名称 | Ipcress Lounge |
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住所 | 〒131-0033 東京都墨田区向島1-11-11 |
URL | |
その他 | facebook: Ipcress Mod File Ipcress Lounge/イプクレス・ラウンジ |