2013.11.12 (Tue)
“書く”ことは楽しい。ひと味違う文具店 ──カキモリ@蔵前【後編】

先週、ご紹介した蔵前の文具店「カキモリ」ができたいきさつ。今週は、なぜこの地を選んだのか? 店主の広瀬さんに伺いました。
(写真:愛情たっぷりのPOP)
蔵前という町に集うクリエイティブに惹かれて
そもそも、ヒガシ東京には縁もゆかりもなかったと笑う広瀬さん。ではなぜ、蔵前へ?
「出店を考えていた2008年頃、蔵前に工房を構える「m+(エムピウ)」の村上雄一郎さんや、蔵前にほど近い鳥越でアトリエ兼ショップを開いている「SyuRo(シュロ)」の宇南山加子さんの記事を雑誌で読んで、ワクワクしたんです。そもそも僕のやろうとしている店のスタイルが普通ではないし、普通なことをこの町でやってもつまらない。ニッチだからこそ、愉快な人たちが集まる場所でやりたいなと考えたんです」
物件を見つけ、店舗設計と施行は浅草橋の一級建築事務所へオーダー。看板を始め、店舗やwebサイトのデザインは、店のすぐ裏手に事務所を構えるアートディレクターの関宙明さんへお願いしました。
……あれ? やっぱり、ご縁があったんじゃないですか!?
「いえいえ(苦笑)。地元の方々にお願いできたのは、ホント偶然なんです。店をどうしようかと思案している最中に、御徒町にある家具工房「WOODWORK」の雰囲気が気に入って。どこの設計ですか? と飛び込みで聞いたのがきっかけです。「WOODWORK」の設計をしていたのが浅草橋で一級建築事務所を開く河田省吾さん。河田さんに紹介していただいたのが関さんでした」
(写真:店内の密かなこだわり。床板と壁板にところどころ混じったカラフルな板は色鉛筆をイメージ)
さらに偶然は続きます。なんと関さんは「m+」のカタログや「SyuRo」のコンセプトブックも手がけている方だったのだとか。「ありがたい偶然のおかげで蔵前近辺で店を構える皆さんと交流をもつ機会も増えました」。
(写真:看板も関さんからの提案。温かみある手描き文字でお出迎え)
近隣住民ももの作りに携わる職人さんや商店が多く、ほどよい距離感で町づきあいができていると広瀬さん。近すぎず、遠すぎず。あたたかな人間関係もヒガシ東京のよさです。
「うちの店では関さんが手がける蔵前近辺マップもお配りしています。ここ数年、このエリアが注目を集めているということもあって、少しずつアップデートされているんですよ。ただ、話題性だけでなく、本当に魅力のある店や人が集まる町になっていけるように、僕自身も「カキモリ」も頑張らなきゃなと思っています」
(写真:こちらが地図。「カキモリ」のwebサイトからもダウンロードできます)
いい! と感じる心を大切に、丁寧な文具選びをされている「カキモリ」。取材に伺ったのは平日の昼間にも関わらず、ビジネスマンや学生さん、ご年配の方など幅広いお客さまがひっきりなしに訪れていました。
看板には「たのしく書く人。」。その言葉通り、書くことを愛する人たちが集う、ぬくもりに満ちたお店です。