2017.07.12 (Wed)
小ロットから文化財まで鋳物製作の老舗、東日本金属
1918年創業という長い歴史を誇る、東日本金属株式会社。高温で熱して液体にした真鍮(しんちゅう)を、型に流して冷やし固めてできる鋳物を製作する会社です。
建築金物などの鋳物製作からスタートし、鋳造から製品化まで一貫して対応しています。現在は、主にドアや窓回りに取り付く取手などの建築金具を製造し、防音扉用のハンドルは、業界シェア約8割。金属の収縮率など、細かな変化を考慮して鋳造できる技術力・知識力が持ち味です。
同社の大きな特徴は、粒子の細かい天然の山砂を使用した「砂型鋳物」を手がけていること。金型と比べて安価な砂型を使うことで、試作品に代表される、小ロット多品種のニーズに対応できます。また、近年、重要文化財建造物の建築金物を復元するなど、文化の伝承においても重要な役割を果たしています。
──これまで、クリエイターや他社からモノづくりに関する相談を受けたことがありますか。
クリエイターや、デザイナーの方から問い合わせをいただくこともありますし、最近は、ホームページや知人の紹介、工場見学を通じ、エンドユーザーさんからの相談も増えてきています。
最近は、歴史的建造物に使われている金物の復元という業務も増えてきていて、宮内庁や旧岩崎邸の建築金物の復元も手掛けました。小さな金具に込められた手間に驚かされながら、当時の製法を研究して復元しています。
──これまで、モノづくりに関してどんな相談を受けましたか?
デザイナーとのコラボレーションで、一番多くの方の目に触れている仕事は、東京スカイツリーの展望デッキ(第一展望台)へ向かうエレベーター内の装飾でしょう。
四季をイメージした4基のうち「冬のエレベーター」の、空に舞う都鳥を鋳物で製作しました。また、東京ソラマチの5階にある「産業観光プラザ すみだまち処」の床に、猫が歩いた足跡のように埋めこまれている「猫の足音」という鋳造品も弊社で製作しました。
他にも、フルーツを包む発泡スチロールの網状の緩衝材をそのまま真鍮鋳物にした「Fruits Gap(フルーツギャップ)」という作品の製作も記憶に残っています。クリエイターとのコラボレーションは多岐にわたり、ドアハンドルやテーブルの脚など、様々な製品の製造実績があります。
──デザイナーとコラボレーションした際のストーリー、印象的だったことをお聞かせください。
デザイナーとのコラボレーションで一番苦労したのは、前述した「Fruits Gap」という作品でした。リンゴや桃などを包む網状の発泡スチロール(フルーツキャップ)を砂に埋め込み、そこに溶かした真鍮を流し込みます。熱で気化した発泡スチロールが消失したところに真鍮が回り、フルーツキャップの形をした鋳物ができると予測したのですが、最初は気化して出たガスと真鍮がぶつかりあって、真鍮が回りきらず、全く形になりませんでした。
諦めようかとも思いましたが、できないことを何とかしてやろうという職人気質のようなものがあって……試行錯誤の甲斐もあり、1カ月程かけてようやく成功しました。最終的には成功率も8割を超え、無事に予定個数を納品できました。
この時の試行錯誤は、今でも弊社の糧として役に立っています。ひとつの鋳物をつくるために1点のサンプルを使う消失型の鋳造は、小ロットの鋳造に向いていて、鋳物の可能性は格段に上がったと思いました。
また、前述の東京スカイツリーのエレベーターに使われた作品は、長く残り、人目に触れやすいので、社員全員で喜びを共有できた仕事になりました。デザイナー、クリエイターと共につくり上げていく仕事をすると、我々にはない発想やアイデアが次々と出てくるので、非常に勉強になります。
──御社では、どのようなモノづくりがお得意でしょうか。
弊社は、真鍮鋳物から加工、組み立てまでを手掛ける建築金物を多く製造しています。多くの協力工場にも恵まれ、建築金物全般の相談をいただけるようになってきました。真鍮鋳物はもちろんですが、金属加工も得意としています。真鍮以外の鋳物にも対応いたします。
──クリエイターが御社に相談できる機会はありますか?
相談は、ホームページなどで随時受け付けています。また工場見学ツアー「スミファ」に毎年参加しています!
東日本金属株式会社
住所:〒131-0043 東京都墨田区立花2-6-4
TEL:03-3618-2477
FAX:03-3616-2409
代表者名:代表取締役 小林 謙一
従業員数:17名(2017年4月現在)
創立年:1918年
業態:非鉄金属の鋳造及び加工
http://higashinihonkinzoku.com/