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2013.12.17 (Tue)

ふたつとない傘との出会い──日傘屋「Coci la elle(コシラエル)」@清澄白河【前編】

東京都現代美術館を始め、数々のギャラリーやショップのあるアートな街として、賑わいをみせる清澄白河。都営大江戸線と東京メトロ半蔵門線が乗り入れ、その利便性の高さからヒガシ東京に移り住む人たちにも人気のスポットです。と同時に、一歩路地に入れば一軒家がずらり。顔馴染み同士あいさつを交わす、昔ながらのご近所付き合いが見られるあたたかなムードも漂います。

そんな清澄白河駅から、歩いて5分ほど。真っ白な壁に大きなガラス扉が設けられた建物が、日傘屋Coci la elle(コシラエル)のアトリエストアです。

(写真:2013年12月6日から、アトリエ兼ショップに)

(写真:2013年12月6日から、アトリエ兼お店に)

母としての自分と、表現したい自分

日傘作家・デザイナーのひがし ちかさんは、1981年生まれの32歳。小学1年生の娘さんをもつ母親として、子育てともの作りに日々向き合います。今では好きなもの作りに思い切り打ち込んでいるひがしさん。しかし、彼女が日傘を作り始めるまでには紆余曲折の日々がありました。

(写真:東ちかさん)

(写真:小柄でとってもキュートなひがし ちかさん)

長崎で生まれ育ち、18歳で上京。ファッションデザイナーなりたいと文化服装学院卒業後、シアタープロダクツに入社。デザイナーのアシスタントから生産管理、はたまた雑用まで、2年間働き多くのことを学んだそう。やがて自分でものを生み出したくなり、シアタープロダクツを退社します。

「ちょうどその頃、娘を妊娠。未婚の母として、出産・子育てをすることになったんです。絵を描くことが好きだったので好きな絵を活かしたものを作りたいという気持ちはありつつも、まずは目の前にいる小さな命を守り、育てなければならない。そのためには収入が必要。事務職の就職試験を受けたんですけど……全滅でした」。コロコロと明るく振り返るひがしさん。その後、派遣アルバイトの仕事をいくつか続けるものの叱られてばかりだった、と続けます。

「朝の9時から夕方5時まで座って仕事をするんですけど、デスクでこっそり絵を描いていたら、叱られました。当然ですよね。でも、わたしにとっては空白の時間のようだったその時間を埋めるように絵を描きながら、未来のことを妄想したりしていたんです」

何かできないだろうかと考え続けているひがしさんの目に入ったのは、以前制作した日傘でした。日傘なら、好きな絵を描ける。何よりほかに、日傘を作っている人は多くない! そう思い立つとすぐ、制作に取りかかります。2010年のことでした。

日傘屋「Coci la elle」の始まり

(写真:Coci la elle webサイトより。2010年に発表した日傘)

(写真:Coci la elle webサイトより。2010年に発表した日傘)

「作り方は独学です。傘をばらして仕組みを観察して、生地に刺繍をしたり直接絵を描いたり。骨を仕入れなきゃいけないんだけど、10本とか20本で売ってくれるような業者さんはなかなかなくって。電話帳でしらみつぶしにあたって、谷中の小さな店のおじさんに『売ってあげる』と言ってもらえた時はうれしかったですね。おじさんに初めて作った傘を見せた時は、叱られましたけどね(笑)。『こんなんじゃ売りものにならない!』って。でもおじさんは、傘の作り方を親身になって教えてくれたんです」

(写真:Coci la elle webサイトより。こちらも2010年に発表した日傘。ひと針ひと針、手刺繍を施している)

(写真:Coci la elle webサイトより。こちらも2010年に発表した日傘。ひと針ひと針、手刺繍を施している)

10本できたところで、代々木上原のNo.12 GALLERYを借りて展示会を開きました。1本2万円以上する傘は、全部売り切れたそう。そればかりか、展示を見たSOUVENIR FROM TOKYOの担当者から、展示会の提案も受けます。

(写真:Coci la elle webサイトより。初めての展示会、「はじめまして日傘やです」の様子)

(写真:Coci la elle webサイトより。初めての展示会、「はじめまして日傘やです」の様子)

「少し高価でも、お客様に『ずっと使い続けたい』と思っていただけるもの作りをしたかった。だから1本1本に込める想いがとっても重いんです。でもさいわい、その重みを受け取ってくださるお客様とのご縁もあり、周りで助けてくれる皆さんのおかげもあり、3年目を迎えることができました」

2010年に1点ものの日傘と手描きの絵をプリントした生地の雨傘でスタートしたCoci la elle。2011年からは、手描きの絵や自分で撮った写真のコラージュをプリントしたシルクスカーフも発表し始めました。そして2012年には伊勢丹、クイーポとの共同企画でお財布やポーチのブランドI Eye’s(アイ・アイズ)もスタート。少しずつ、デザイナーとしての幅が広がりつつあります。

(写真:1枚2万8350円のシルクスカーフは、密かな人気アイテム)

(写真:1枚2万8350円のシルクスカーフは、密かな人気アイテム)

(写真:I Eye'sのお財布は8400円?)

(写真:I Eye’sのお財布は8400円?)

さて、ここまではひがしさんが始めたCoci la elleのことについて伺いました。次回はなぜ、ひがしさんがヒガシ東京にアトリエを構えたのか? その歩みとアトリエショップの様子をお伝えします!

詳細情報

■Coci la elleアトリエストア
住所:東京都江東区三好2-3-2 1階
電話:03-6325-4667
営業時間:11:00〜19:00
定休日:年末年始・夏期休暇
http://www.cocilaelle.com/

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Yuka Niimi

フリーランスのライター、時々編集者。2008年の夏に、浅草3代目へ嫁ぎました。日課はヨガとランニング。好きなものは寺社仏閣と和菓子。浅草から自転車圏内で楽しめる情報を発信できればと思っています。

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