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2014.10.04 (Sat)

放浪書房「旅を続けるための“小商い”としての本屋さん」<ブック・イーストVol.3後編>

本にまつわる事柄で先進的な事例の多い東東京。9月の特集『ブック・イースト〜日本中を刺激する東東京の「本」文化〜』では、本屋さん、出版社、本イベントの仕掛人、本を生活の一部にした人たちなど、4組にお話を伺います。特集を通じ、東東京にある本にまつわる活動が多くあることを知っていただけたらと思います。

Vol.3では旅をしながら本を販売するという「放浪書房」の富永浩通(とみながひろゆき)さんにお話を伺っています。とても印象的だったのは、書房という名前であるにも関わらず、本を売ることを価値観の中心に置いていないことでした。また、お金をたくさん稼ぐのではなくて、やりたいことをやり生活を楽しむ、そんな姿勢を富永さんはとても大切にされています。

この特集を読んでいただくと、2011年の震災のときに多くの人が感じた「生活を大切にしたい」「好きなことに時間を使いたい」そんな気持ちをもう一度思い直す機会になるかもしれません。前半では放浪書房の活動について聞きました。後半は、放浪書房の活動から広がった「小商い」に関するお話を伺っています。 それでは、ブック・イーストVol.3後編もお楽しみください♪

エンドレスに旅を続けるために、旅先で本を売り稼ぐ活動「放浪書房」をはじめた富永浩通(とみながひろゆき)さん。経験や実験を重ねるうちに、旅から帰らずにエンドレスに旅する方法を見つけることができたというのに、今は旅を控える状況とのこと。しかもそれは、仕方なくではなく、とても楽しい理由からなのだそう。
後半は放浪書房 富永さんが旅を控えてでも、進めたい「小商い」(こあきない)について伺いました!

他の人の小商いを応援する小商い専用屋台「コアキーナ」

ーー旅をライフスタイルにしている富永さんが旅を控えるというのは相当ですね。では、その「小商い」について教えていただけますか?

小商いは辞書で調べると、少額の商い全てというように書かれていますが、私が考えている“小商い”は、お金をたくさん稼ごうと考えるのではなく、“自分の本当に好きなことを飽きずに楽しく続けていく為の小さな商い”のことを指しています。最近はこの小商いをする人達を応援する幾つかのことをしていて、例えばこちら。小商い用専用の屋台をオーダーメイドで製作しています。

koakinai2

他にもこういったものがあります。これは私が放浪書房をやるときに使う屋台の小型版。車輪で引いて移動できるタイプです。

koakinai3

これらは小型のものですが、この他にも屋外や店舗の中にも使えるものもつくっています。ikkAの店舗にあるこちらも実は私がつくった屋台なんです。
yatai_tenpo
(ikkAさんの店内で使われている屋台。お店に溶け込む良いデザイン。)

2013年の秋頃から、お店やイベント出店をしている方など小商いをしている方向けに“アンティーク屋台”のオーダーを受け製作・販売をしています。名前は「コアキーナ」と付けました。今までの屋台というとたこ焼き屋さんとかお祭り用しかなくて、マルシェとか実店舗に合うような屋台ってなかったんです。コアキーナはアンティーク調で可愛いデザインで、折り畳めて軽自動車で運べるようにしています。こだわりは私が放浪書房をやっているので、全ての屋台は本の荷重に耐えられるようにしてあります。この活動を「放浪工房」といい、放浪書房のほかに私が取り組んでいる活動のひとつです。
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(屋外で使われている様子はこんな感じ!)

ーー可愛いですね!確かにこんな屋台は売っているのを見たことありません。また折り畳めて車で運べるのも富永さんの放浪書房での実体験から機能が生まれている感じで良いですね。

「情報をシェアする場“小商いサミット”を通じて、何かをやるハードルをどんどん下げていきたい」

ーー小商いサミットという活動もしていると伺ったのですが、そちらについても教えていただけますか?

“小商いサミット”は、小商いをはじめたい人や興味がある人たちで集まり、小商いについての情報をシェアしようという場です。既に4回開催していて、2回はikkAさん、1回は新潟、もう1回は雑誌ソトコトのFACEBOOKさんと一緒にやりました。

他にも小商いラボラトリーというfacebookページもやっています。こちらはインターネットで小商い情報をシェアするためのものです。

ーーこの小商いサミットなどを始めるキッカケって何かあったんですか?

実はある時期を契機に放浪書房の売上が5倍になりました。それが2011年の震災後という時期なんです。
私が告知なしで旅先に行って本を売っていたら、多くの人が本を買い、さらにfacebookやtwitterで放浪書房の情報を広げてくれるというようになりました。感じていたのは、本を買うというより放浪書房という活動を応援したいという人たちが活動を支えてくれているということでした。

もしかしたら、震災をキッカケに働き方を考える人が増えたり、好きな事を仕事にしたいと思う人が増えていることに関係しているのではないかと思っています。
それくらいから、自分でも何か小商いを始めたいという人達から相談を受けるようになりました。それで、今まで小商いについて情報交換や話しをする場がなかったから、自分たちでつくろうということになり、始まったのが小商いサミットです。
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(第2回小商いサミットの様子。)

ーー放浪書房の活動からつながっているのですね!

今まで放浪書房で応援してもらってきたので、今度は自分が小商いをする人達を応援したいと思っています。屋台や小商いサミットなどを通じて、何かをやるハードルをどんどん下げていきたいと思っています。本屋修業もなく書店をやったり、大工の経験がないのに屋台をつくっている私ですが、面白いことをやっていれば「いいね!」と言ってくれる人は必ずいて、小商いを応援してくれる環境は整っていると思っています。

ーー私もすごく共感するところがあります。東東京マガジンも何か新しいチャレンジをしていく人達を応援していきたいと思っていて、挑戦もしやすい時代にもなってきていると思います。

ーーそれでは最後に今後について教えてください。

放浪工房の方については、「マルシェット」といい、アンティーク屋台5台と照明、看板、ガーランド、ikkAのような素敵な場所を利用いただける“マルシェのセット”を提供していこうと思っています。マルシェをやりたくてもその場所を確保するのが大変なので、屋台などとセットで使ってもらう企画です。

あと、「行商隊」というものです。移動がラクチンなコアキーナを持って皆でお客さんのところへ行っちゃう、そしてショップカード渡したり実際に商品を見てもらう“行商”をしようと思っています。イベントの事前PRにも使えます。
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(行商隊を雑司ヶ谷で実践したお三方。小型のコアキーナを皆さん持っておられます)

放浪書房の方は、「お店を持たないのですか?」とよく聞かれるのですが、お店は全然持ちたくないです。今のまま、旅をしながら続けていけたらと思っています。

ーー富永さん、ありがとうございました!

旅を続けるために本屋をはじめたというユニークな経緯を持つ放浪書房の富永さん。印象的なのは、“旅”を中心に物事を考えるというハッキリとしたスタンスでした。取材を通じ、何を生活の中心におき、日々を過ごそうか?と自分を問い直す機会となりました。

また、富永さんにとっての小商いである放浪書房から活動が広がり、小商いをする人達を後押しする様々な活動、例えば放浪工房や小商いサミットが始まっていることもとても楽しみなお話でした。富永さんの視点や屋台により、思い思いの小商いの活動が増えていったら街はもっと楽しくなりますね。そんなお店はきっと個性的だし買い物も店主とのお話しも楽しいこと間違いなしですから。

9月特集【ブックイースト】記事アーカイブ

Vol.0:9月特集を始める前に。本のことなら、東東京をみよう
Vol.1前編:タナカホンヤ「本を通じて人と繋がる」@根津
Vol.1後編:タナカホンヤ「本を通じて人と繋がる」@根津
Vol.2前編:アノニマ・スタジオ「本の世界を体感できる」@蔵前
Vol.2後編:アノニマ・スタジオ「本の世界を体感できる」@蔵前
Vol.3前編:放浪書房「旅を続けるための“小商い”としての本屋さん」

詳細情報

名称ikkA
住所東京都墨田区向島3-6-5
URL

http://ameblo.jp/cafe-ikka/

その他
【放浪書房】

店主
富永浩通(通称 とみー)

店長
永遠の旅人「スナフキン」

店舗形態
人力移動型の露天古書籍商

営業時間
基本、日没まで。但し、天候等で早仕舞いあり。

営業場所
街角、公園、シャッターの下りた商店の前等。旅のトークイベントやフリーマーケット、古書イベント等への出張販売も行っています。

取り扱い商品
・「旅」をテーマにした小説、自伝、紀行文、エッセイ、雑誌、マンガ、絵本。単行本、文庫、雑誌、マンガ、絵本等 ・[オリジナルグッズ]「旅する栞」「旅する絵ハガキ」・「旅豆」(旅する豆絵本)

URL
http://horoshobo.com/

この記事を書いた人/提供メディア

Hiroyuki Imamura

東東京マガジン編集長。毎日を旅のような日々を送りたいと思っていたが、たくさんの人と出会い、たくさんの場所へ行く日々はいつの間にか旅のような日常になりつつある。東東京のトピックスで特に関心が強いのは、主宰者の人となりや独自の工夫が反映されたプロジェクト。まちづくり会社ドラマチックの代表社員。

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